易経(えききょう)とは?六十四卦の基本と占い方をわかりやすく解説

この記事でわかること
3000年以上の歴史を持つ易経(周易)。陰と陽の組み合わせで成る六十四卦の基本、筮竹や擲銭法による占い方、そして易経を人生の決断に活かす方法を初心者向けに解説します。
目次
易経(えききょう)とは?六十四卦の基本と占い方をわかりやすく解説
易経は、中国で3000年以上前に成立したとされる世界最古の占術書であり、同時に深遠な哲学書でもあります。 「変化の書(Book of Changes)」とも呼ばれ、万物の変化の法則を陰と陽の組み合わせで表現します。 本記事では、易経の基本的な仕組みから実際の占い方まで、初心者にもわかりやすく解説します。
易経の歴史
3000年の伝統
易経は、中国の古典「五経(ごきょう)」の一つに数えられる最高位の経典です。その成立には数千年の歴史が関わっています。
| 時代 | 出来事 |
|---|---|
| 伝説時代(約5000年前) | 伏羲(ふくぎ)が八卦を創始したと伝えられる |
| 殷(商)代(紀元前1600〜1046年) | 亀甲占い(亀卜)から卦の体系が発展 |
| 周代(紀元前1046年頃) | 周の文王が六十四卦に卦辞を付す。周公旦が爻辞を作成 |
| 春秋戦国時代(紀元前770〜221年) | 孔子とその弟子たちが「十翼」と呼ばれる注釈を加える |
| 漢代(紀元前206〜220年) | 「周易」として五経に列せられ、学問の最高権威となる |
| 17世紀以降 | ライプニッツが二進法との類似に注目。西洋にも影響を与える |
| 現代 | 経営判断、自己啓発、心理学的手法として世界中で活用される |
「易」の三つの意味 ─ 三易
「易」という字には三つの意味が込められています。これを**三易(さんえき)**と呼び、易経の本質を端的に表しています。
| 概念 | 読み | 意味 | 解説 |
|---|---|---|---|
| 変易 | へんえき | 万物は常に変化する | 宇宙に不変のものはなく、すべては移り変わる |
| 不易 | ふえき | 変化の法則そのものは不変 | 変化には一定の法則(道理)があり、それは永遠に変わらない |
| 簡易 | かんえき | 法則は本来シンプルである | 複雑に見える万象も、根本原理はシンプルに理解できる |
この三つの概念は、「世界は常に変化するが、変化の原理自体は普遍的であり、しかもそれはシンプルに理解できる」ということを意味しています。易経が3000年以上にわたって読み継がれている理由は、この普遍的な世界観にあります。
陰と陽 ─ 易経の根本原理
陰陽の基本
易経の全体系は、**陰(いん)と陽(よう)**という二つの原理から成り立ちます。
| 要素 | 陽(よう) | 陰(いん) |
|---|---|---|
| 記号 | ⚊(一本線) | ⚋(二本の短線) |
| 象徴 | 光、動、剛、男、奇数 | 闇、静、柔、女、偶数 |
| 性質 | 積極的、能動的、外向的 | 受容的、受動的、内向的 |
| 自然 | 太陽、夏、昼、火 | 月、冬、夜、水 |
重要な点は、陰と陽に善悪の区別はないということです。 両者は対立するものではなく、互いに補い合い、循環しながら万物を生み出す根源的な力です。陽が極まれば陰に転じ、陰が極まれば陽が生じる ─ この循環こそが易経の説く「変化の法則」です。
爻(こう)─ 陰陽の記号
易経では、陰と陽をそれぞれ一本の線(爻 / こう)で表します。
- 陽爻(ようこう): ━━━(途切れない一本線)
- 陰爻(いんこう): ━ ━(中央が途切れた線)
この爻を3本重ねると**卦(か)**が生まれます。
八卦(はっけ・はっか)─ 基本の8つの象
八卦の構成
陰爻と陽爻を3本重ねた組み合わせは全部で8通りあり、これを**八卦(はっけ)**と呼びます。伝説では伏羲(ふくぎ)がこれを天・地・自然現象に見立てて創ったとされています。
| 卦名 | 記号 | 読み | 自然象 | 象徴 | 家族 | 方位 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 乾 | ☰ | けん | 天 | 創造、剛健 | 父 | 南(後天図) |
| 坤 | ☷ | こん | 地 | 受容、柔順 | 母 | 北 |
| 震 | ☳ | しん | 雷 | 動き、発奮 | 長男 | 東北 |
| 巽 | ☴ | そん | 風 | 従順、浸透 | 長女 | 西南 |
| 坎 | ☵ | かん | 水 | 険難、知恵 | 次男 | 西 |
| 離 | ☲ | り | 火 | 明晰、美 | 次女 | 東 |
| 艮 | ☶ | ごん | 山 | 静止、安定 | 三男 | 西北 |
| 兌 | ☱ | だ | 沢 | 喜悦、和楽 | 三女 | 東南 |
八卦の覚え方
古来より伝わる暗記法があります。
乾は三連、坤は六断、震は仰盂、艮は覆碗、離は中虚、坎は中満、兌は上欠、巽は下断
- 乾☰:三本とも陽(三連)
- 坤☷:三本とも陰(六つに断つ)
- 震☳:下だけ陽(仰向けの碗)
- 艮☶:上だけ陽(伏せた碗)
- 離☲:真ん中だけ陰(中が虚ろ)
- 坎☵:真ん中だけ陽(中が満ちる)
- 兌☱:上だけ陰(上が欠ける)
- 巽☴:下だけ陰(下が断たれる)
六十四卦(ろくじゅうしけ)─ 万象を表す体系
六十四卦の仕組み
八卦を上下に2つ重ねると、8×8=64通りの組み合わせが生まれます。これが六十四卦です。下の三爻を内卦(ないか)、上の三爻を**外卦(がいか)**と呼びます。
| 構造 | 名称 | 意味 |
|---|---|---|
| 上の三爻 | 外卦(がいか)/ 上卦(じょうか) | 外的状況、他者、社会 |
| 下の三爻 | 内卦(ないか)/ 下卦(かか) | 内的状況、自分、本質 |
| 六爻全体 | 本卦(ほんか) | 現在の全体的な状況 |
六十四卦の代表例
| 番号 | 卦名 | 構成(上/下) | 意味 |
|---|---|---|---|
| 1 | 乾為天(けんいてん) | 乾☰ / 乾☰ | 天の純粋な創造力。大いに通じる |
| 2 | 坤為地(こんいち) | 坤☷ / 坤☷ | 地の受容力。従順に受け入れることで大成する |
| 11 | 地天泰(ちてんたい) | 坤☷ / 乾☰ | 天地が交わり万物が通じる。太平の象 |
| 12 | 天地否(てんちひ) | 乾☰ / 坤☷ | 天地が交わらない。閉塞の象 |
| 29 | 坎為水(かんいすい) | 坎☵ / 坎☵ | 険難が重なる。慎重に対処すべき時 |
| 30 | 離為火(りいか) | 離☲ / 離☲ | 明晰さが重なる。知恵で道を照らす時 |
| 63 | 水火既済(すいかきせい) | 坎☵ / 離☲ | すべてが整った状態。完成するが油断は禁物 |
| 64 | 火水未済(かすいびせい) | 離☲ / 坎☵ | まだ完成していない。可能性を秘めた始まりの時 |
六十四卦の最後が「未済(まだ済んでいない)」で終わるのは、易経が「終わりは新たな始まり」という循環の思想を体現しているからです。
卦を読むための基本的な視点
六十四卦を読む際には、以下の視点が役立ちます。
| 視点 | 内容 | 例 |
|---|---|---|
| 卦象(かしょう) | 上卦と下卦の自然象の関係から全体像を掴む | 水が火の上にある(水火既済)→ 調和が取れている |
| 爻位(こうい) | 6つの爻のうちどの位置が重要かを見る | 五爻は君位(最高位)で、最も力を発揮する場所 |
| 応比(おうひ) | 上下の対応する爻の関係を読む | 初爻と四爻、二爻と五爻、三爻と上爻が応じ合う |
| 中正(ちゅうせい) | 二爻・五爻が正しい位置にあるかを見る | 陰爻が偶数位に、陽爻が奇数位にあれば「正」 |
易経の占い方
筮竹(ぜいちく)を使う方法
最も伝統的な方法は、50本の筮竹を使う筮法(ぜいほう)です。
- 50本の筮竹から1本を取り分けて使用しない(太極を表す)
- 残り49本を左右に分ける
- 右手の山から1本取り、左手の小指に挟む
- 左手の山を4本ずつ数え、余りを指に挟む
- 右手の山も同様に4本ずつ数え、余りを指に挟む
- この操作を3回繰り返して1つの爻を決める
- 上記を6回繰り返して六十四卦の1つを得る
全行程には約20〜30分かかります。この時間をかけること自体が心を落ち着かせ、問いに集中する効果があると言われています。
擲銭法(てきせんほう)─ コインで占う
筮竹を持たなくても、3枚のコインで手軽に易を立てることができます。
| 手順 | 操作 |
|---|---|
| 1 | 3枚のコインを同時に投げる |
| 2 | 表=陽(3)、裏=陰(2)として合計を計算 |
| 3 | 合計6=老陰(変爻)、7=少陽、8=少陰、9=老陽(変爻) |
| 4 | これを6回繰り返し、下から順に爻を積み上げて卦を得る |
| コインの合計 | 爻の種類 | 記号 | 性質 |
|---|---|---|---|
| 6 | 老陰 | ━ ━ → ━━━ | 陰が極まり陽に変わる(変爻) |
| 7 | 少陽 | ━━━ | 安定した陽(変化しない) |
| 8 | 少陰 | ━ ━ | 安定した陰(変化しない) |
| 9 | 老陽 | ━━━ → ━ ━ | 陽が極まり陰に変わる(変爻) |
**変爻(へんこう)**がある場合、爻が変化した後の卦(之卦 / しか)も合わせて読むことで、現在の状況からどのように変化していくかを読み解きます。
卦辞と爻辞の読み方
卦辞(かじ)
六十四卦それぞれに付された全体的な判断文です。卦の全体像と基本的な吉凶を示します。
例えば「乾為天」の卦辞は:
乾は元いに亨る。貞しきに利ろし。(乾は大いに通じる。正しい道を守るのがよい。)
爻辞(こうじ)
各卦の六つの爻それぞれに付された個別の判断文です。状況の段階的な変化を示します。
六十四卦×六爻=384の爻辞が易経には収められており、これが具体的な行動の指針となります。
易経の現代的な活用
ビジネス・意思決定への応用
易経は古来より帝王学としても学ばれてきました。現代でも経営者や起業家が意思決定の参考にしています。
| 活用場面 | 易経の視点 | 具体例 |
|---|---|---|
| 新規事業の判断 | 時機を読む | 「今は進むべきか待つべきか」を卦で判断 |
| リーダーシップ | 陰陽のバランス | 剛柔を使い分けるマネジメント |
| 変化への対応 | 変易の思想 | 変化は必然であり、柔軟に対応する |
| リスク管理 | 坎(険難)の教え | 困難は成長の機会と捉える |
| チーム運営 | 六爻の位置関係 | 上下関係と役割分担の最適化 |
自己啓発としての易経
占いとしてだけでなく、易経は人生哲学の書としても深い洞察を与えてくれます。
- 変化を恐れない: 変易の思想は、変化こそが自然の摂理であると教える
- 時を待つ: 物事には適切なタイミングがあり、焦りは禁物
- 中庸を保つ: 極端に走らず、バランスを取ることの大切さ
- 謙虚であること: 六十四卦のうち「地山謙」だけが六爻すべて吉とされる
易経が引用される名言・格言
易経に由来する言葉は、日常の日本語にも深く浸透しています。
| 出典 | 言葉 | 意味 |
|---|---|---|
| 乾為天 | 「君子終日乾乾す」 | 優れた人物は一日中、努力を怠らない |
| 坤為地 | 「地勢は坤。君子以て厚徳もて物を載す」 | 大地のように広い心で万物を受け入れる |
| 地山謙 | 「謙は亨る。君子終わりあり」 | 謙虚な人は成功を収め、最後までうまくいく |
| 天行健 | 「天行は健なり。君子以て自ら強めて息まず」 | 天のように力強く、自己研鑽を怠らない |
| 沢水困 | 「困しむも其の志を失わず」 | 困難に遭っても志を捨てない |
易経を学ぶための基礎知識
五行との関係
易経は**五行説(木・火・土・金・水)**とも深く結びついています。八卦はそれぞれ五行に対応し、相生・相克の関係から吉凶を判断する材料となります。
| 八卦 | 五行 | 相生の関係 |
|---|---|---|
| 震☳・巽☴ | 木 | 木は火を生む |
| 離☲ | 火 | 火は土を生む |
| 坤☷・艮☶ | 土 | 土は金を生む |
| 乾☰・兌☱ | 金 | 金は水を生む |
| 坎☵ | 水 | 水は木を生む |
易経を読むときの注意点
- 一つの卦だけで判断しない ─ 変爻がある場合は之卦も合わせて読むこと
- 文字通りに受け取らない ─ 卦辞・爻辞は比喩的な表現が多く、象徴として読む必要がある
- 問いの立て方が重要 ─ 曖昧な質問には曖昧な答えしか返ってこない
- 繰り返し占わない ─ 同じ問いを何度も占うことは「瀆(けが)す」として戒められている
- 記録をつける ─ 得た卦と爻辞、その後の経過を記録し、易の理解を深めていく
易経と他の占術との関係
易経の陰陽理論は、東洋の多くの占術に影響を与えています。
| 占術 | 易経との関係 |
|---|---|
| 九星気学 | 八卦の方位理論を基盤としている |
| 風水 | 八卦と五行の組み合わせで空間を読む |
| 四柱推命 | 陰陽五行説を共有する |
| 暦注(六曜等) | 陰陽道を通じて易の思想が反映されている |
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参考文献・出典
- 易経 (Wikipedia 日本語版)— Wikipedia(参照: 2026-05-16)
- 日本陰陽五行学会— 日本陰陽五行学会(参照: 2026-05-16)
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