羽黒山 午歳御縁年2026 ─ 12年に一度の出羽三山参拝、丙午が重なる東北最強の御縁年

山形県鶴岡市、庄内平野に突き出すように立つ羽黒山(はぐろさん、414m)。月山(がっさん、1,984m)、湯殿山(ゆどのさん、1,504m)と合わせて「出羽三山」と呼ばれる山岳信仰の聖地である。約1400年前、崇峻天皇の御子・蜂子皇子(はちこのおうじ)が開山したと伝えられ、修験道の修行地として、今日まで「生まれかわりの旅」の地として参拝者を迎えてきた。
その羽黒山にとって、令和8年(2026年)は12年に一度の特別な「午歳御縁年(うまどしごえんねん)」にあたる。さらに今年は60年に一度しか巡ってこない丙午(ひのえうま)の年でもあり、両者が重なるのは120年に一度しかない希有な一年──ここまで条件が揃うのは、おそらく現在の参拝者にとって生涯に一度の機会である。福カレンダー編集部の暦河 楓が、現地の伝承と暦の両側から、この御縁年を読み解いていく。
12年に一度、丙午と重なった令和8年 ─ 出羽三山が「現世の山」に変わるとき
御縁年(ごえんねん)とは、その神社仏閣の「開山・縁起の年」と十二支が重なる特別な年のことで、その年に参拝すると12年分のご利益を授かれるとされる古い信仰である。出羽三山にはそれぞれに御縁年があり、出羽三山神社の公式説明では羽黒山が午歳、月山が卯歳、湯殿山が丑歳とされている。三山合わせての開山は丑歳とされるため、丑年・卯年・午年と巡ってくる御縁年は、東北の修験信仰の暦そのものでもある。
なかでも羽黒山は、出羽三山のうち「現世(今生きるこの世)」を表す山と位置づけられている。月山が「過去・死後」、湯殿山が「未来・再生」を司り、三山を順に巡ることで「死と再生」を経て新しい自分に生まれ変わるという、いわゆる「生まれかわりの旅」の出発点が羽黒山である。御縁年に参拝することは、この現世のご加護を12年分まとめて願う行為だ。
そして令和8年は、その羽黒山の御縁年(午歳)と、60年に一度の丙午(ひのえうま)が完全に重なっている。福カレンダーの暦データで確認しても、2026年は元日(2026年1月1日/木曜・大安・一粒万倍日)の時点ですでに年干支「丙午」、月干支「辛丑」、日干支「乙亥」と、午のエネルギーが年柱に立っている。山形県観光物産協会、つるおか観光ナビ、DEGAM鶴岡ツーリズムビューロー(一般社団法人)の公式案内も、この御縁年を「12年分のご利益を得られる特別な一年」として揃って打ち出しており、出羽三山神社からも『令和8年丙午「羽黒山午歳御縁年」ご参拝案内』が公開されている。
蜂子皇子の伝説と593年の開山 ─ 八咫烏が導いた阿久谷
羽黒山の開山伝承は、593年(推古天皇元年)にさかのぼる。蜂子皇子は崇峻天皇の御子でありながら、政争を逃れ出羽国に下り、由良(現在の鶴岡市由良)の浜で神楽を舞う8人の乙女に出会う。乙女に促され、3本足の霊烏──八咫烏(やたがらす)に導かれて羽黒山中の阿久谷(あこや)にたどり着き、そこで修行を重ねたのち、羽黒山頂に羽黒権現を感得して祠を創建した、と伝えられる。続いて月山権現、湯殿山権現を感得し、出羽三山の開祖となった。
歴史を文献から見ていくと、現存する初期の文書には開山者の名として「能除(のうじょ)」と記されており、18世紀になってから「蜂子皇子」と記す文献が現れたとされる。明治の神仏分離を経て羽黒山が神道化された段階で、開山祖は蜂子皇子に定着した。──開山伝承の系譜そのものが、修験の山がたどってきた数奇な歴史を映している。
山頂に建つ「三神合祭殿(さんじんごうさいでん)」は、月山・羽黒山・湯殿山の三神を一棟に合祀する出羽三山神社の中心社殿である。月山と湯殿山は積雪のため冬期間の参拝が困難になるため、合祭殿は実質的な里宮の役割を担い、年中通じて三山の神々に参拝できるよう配慮されている。御縁年に羽黒山を訪れれば、ここで三山すべてに祈りを捧げられるという仕組みだ。
2,446段の石段と国宝五重塔 ─ 杉並木が守る千年の参道
羽黒山の参道は、随神門(ずいしんもん)から山頂までの全2,446段。羽黒町観光協会の案内によれば、神社の参道としては日本一の石段数とされる。石段の両側には樹齢350年を超える杉並木が立ち並び、夏は涼を運び、秋は紅葉をまとう。参道の途中には、樹齢1,000年・幹周りおよそ10mと伝わる「爺杉(じじすぎ)」が立ち、出羽三山の時間を一身に引き受けたような威厳がある。
随神門をくぐって少し下ると、視界がひらけて朱塗りの五重塔が現れる。「国宝・羽黒山五重塔」である。文化遺産オンラインや山形県観光物産協会の公式情報によれば、平将門が創建したと伝えられ、現在の塔は約600年前に再建されたもの。三間五層柿葺(こけらぶき)素木造、高さ29.0m、東北地方最古の塔として、昭和41年(1966年)に国宝指定を受けた。
五重塔から先、参道は「一の坂」「二の坂」「三の坂」と呼ばれる急な石段の連なりに変わる。一の坂は祓川を渡って始まり、最大の難所とされる二の坂を登りきると、開けた場所に「二の坂茶屋」が見えてくる。地元では「ここまで登れば山頂は近い」と言われる、参拝者の小さな目印である。三の坂を登り切った先に、三神合祭殿と蜂子神社が待っている。
暦が選ぶ2026年の参拝吉日 ─ 御縁年×吉日の重なり
御縁年は通年がご縁の年だが、暦と祭礼が重なる日に参拝すれば、ご利益はさらに重層的になる。福カレンダーの暦データから、2026年に出羽三山神社の主要祭礼と暦の吉日が重なる日をいくつか挙げる。
2026年5月8日(金) 御田植祭 ─ 日干支「壬午(みずのえうま)」、つまり年干支の丙午と五行で響き合う「午の日」に当たる。六曜は赤口、月相は満月過ぎの下弦に向かう日。御縁年の干支と祭礼日の干支が同じ「午」で重なるのは偶然ではあるが、参拝者の心理としては、この一致は強く意識される日になるだろう。
2026年7月1日(水) 月山神社本宮開山祭 ─ 先負・満月。例年、この日に月山の参拝路が正式に開かれる。三山参りを志すのであれば、月山開山祭の前後に羽黒山を参拝し、満月の力を背負って月山に向かう、という巡り方が暦的にも整う。

旅河 楓旅と祈りの編集者
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全国の神社仏閣・パワースポットを自分の足で歩き、土地の歴史と信仰を紐解く旅する編集者。地元の方への取材を大切にし、ガイドブックには載らない「祈りの風景」を伝える記事が読者に支持されている。
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