寒川神社(神奈川)2026 ─ 全国唯一の八方除総本宮、午年GWに整える方位除参拝完全ガイド

神奈川県高座郡寒川町宮山。相模川が大きく蛇行して流れる扇状地の縁に、深い杉の杜に守られて鎮座する社がある。寒川神社(さむかわじんじゃ)──全国でただ一社、「八方除(はっぽうよけ)」の御神徳を司る相模國一之宮である。創建は雄略天皇の御代(西暦456〜479年頃)と伝えられ、少なくとも1500年以上の歴史を刻んできた。福カレンダー編集部の旅河 楓が、午年の今年に訪れたい関東の方位除総本宮を、暦と祭礼の両側から案内していく。
八方除とは何か ─ 関八州を守ってきた1500年の御神徳
寒川神社の御祭神は、寒川比古命(さむかわひこのみこと)と寒川比女命(さむかわひめのみこと)。二柱を併せて「寒川大明神(さむかわだいみょうじん)」と奉称する。社伝によれば雄略天皇の御代に幣帛が奉納されたとされ、平安時代の927年に編纂された『延喜式神名帳』では、相模國で唯一の「名神大社」に列せられている。社格制度のもとでは最も格式高い「一之宮」に位置づけられ、相模・武蔵・安房・上総・下総・常陸・上野・下野の関八州すべての守護神として崇敬を集めてきた。
「八方除」とは、地相・家相・方位・日柄・厄年などに起因するすべての悪事災難を取り除き、福徳円満をもたらす御神徳である。同社の公式案内によれば、八方除は単に方位の凶を祓うだけではなく、住まい・土地・年回り・日々の行いまでを含めて整えるという、生活全般に及ぶ御加護を指す。江戸時代には、寒川神社が江戸城から見て裏鬼門(南西)の方角にあたるため、徳川幕府が成立して以降、江戸の裏鬼門を守る重要な社として歴代将軍からも厚い崇敬を受けた。日本全国に方位除を授ける神社は数多くあるが、八方除を専一の御神徳として掲げる社は寒川神社をおいて他にない。「八方除総本宮」と呼ばれるゆえんである。
ご祈祷を受けた参拝者だけが立ち入りを許される「神嶽山神苑(かんたけやましんえん)」という、本殿裏手の禁足地が公開されているのも寒川神社の大きな特徴だ。回遊式日本庭園の中に、平安時代の暦学・天文学を象徴する「渾天儀(こんてんぎ)」が設置されており、四神(青龍・白虎・朱雀・玄武)と二十八宿が周囲に配されている。八方除という御神徳が、単なる祈祷の作法ではなく、星辰の運行と方位の学問の上に成り立っていることを、静かに伝える空間である。
2026年5月5日 ─ 千年の祭礼「國府祭」と立夏・こどもの日が重なる日
5月の寒川神社を語るとき、外せない祭礼がある。**5月5日の「國府祭(こうのまち/こくふさい)」**である。神奈川県の無形民俗文化財に指定されたこの祭礼は、平安時代から千年以上続くと伝わる相模國の伝統儀式で、寒川神社(一之宮)・川勾神社(二之宮)・比々多神社(三之宮)・前鳥神社(四之宮)・平塚八幡宮(五之宮格)・六所神社(総社)の六社が、大磯町国府本郷の神揃山と大矢場に参集して執り行われる。
特に有名なのが、神揃山で正午頃に行われる「座問答(ざもんどう)」と呼ばれる神事である。寒川神社と川勾神社のそれぞれの神官が、虎の皮を一枚ずつ前に進めて「我こそが一之宮なり」と席次を主張し合うが、最終的に六所神社の神官が「いずれ明年まで」と引き取り、結論を翌年に持ち越す──という、千年以上前の国造同士の席次争いを今に伝える儀式である。寒川神社の公式案内によれば、当日のスケジュールは午前8時の出立祭、10時30分の神揃山祭、正午の座問答、午後3時40分の逢親祭(大矢場)、午後7時30分の還幸祭という流れで、夕方まで丸一日続く。
福カレンダーの暦データで2026年5月5日を確認すると、六曜は先負、二十四節気の立夏、祝日はこどもの日、さらに一粒万倍日が重なる。先負は午後が吉とされる六曜だが、國府祭の核心である座問答が正午、逢親祭が午後3時40分という時間配置は、まさに先負の吉時間帯と重なっている。立夏は二十四節気の上で夏の始まりを告げる節目で、一粒万倍日は「一粒の籾が万倍にも実る」とされる吉日。種をまくべき日に、相模國の六社が一年の安寧を祈るために集う──暦と祭礼が、これほど美しく重なる日も多くはない。
GW週間の暦が並べる方位除参拝のベストデー
2026年のゴールデンウィークは、寒川神社で方位除・八方除の御祈祷を受けるには、ほとんど奇跡的な暦の並びになっている。福カレンダーの2026年5月の暦データから、参拝候補日を整理する。
2026年5月4日(月) みどりの日 ─ 福カレンダーの2026年の天赦日一覧(3月5日・5月4日・5月20日・7月19日・10月1日・12月16日の年6回)の二回目にあたる、年内屈指の最強開運日。日干支は**戊寅(つちのえとら)**で、寅の日も同時に立つ。さらに大明日と友引が加わり、午前と午後がともに吉とされる。GWの中日にあたるこの日に2026年5月4日の天赦日×寅の日×友引の組み合わせで参拝計画を組めば、年に一度の方位除を、年に六度の天赦日に重ねることができる。
2026年5月5日(火) 立夏・こどもの日 ─ 國府祭当日。先負・一粒万倍日。実際の祭礼は神揃山と大矢場で行われるため、寒川神社の境内自体は神官が出立した後の静けさが残る。ただし社頭では國府祭限定の御朱印・授与品の頒布が行われる年が多く、午後の還幸祭の戻りに合わせて参拝するという楽しみ方もある。同じ5月5日には、京都・上賀茂神社で平安末期から続く賀茂競馬(かもくらべうま)が執り行われるが、相模と山城で同日に競馬と國府祭が立つのは、午年丙午の暦の妙でもある。
2026年5月6日(水) 振替休日 ─ 仏滅・一粒万倍日・大明日。仏滅は一般に避けられる六曜だが、八方除は「凶を除く」御神徳であり、むしろ仏滅に祓いを受けるという考え方も古くから存在する。GW最終日に整えてから日常に戻る、という旅程で組みやすい日である。
2026年5月18日(月) 大安・新月・一粒万倍日 ─ 三吉日が重なる、5月の白眉。新月は始まりの象徴で、八方除の祈祷を受けて「リセット」を願うには最も理にかなった月相である。前日の5月17日も新月・一粒万倍日にあたり、福カレンダーでは5月17-18日の連続48時間を「種まきの48時間」として案内している。
2026年5月20日(水) 天赦日・大明日 ─ 5月二度目の天赦日。先勝で午前が吉。GW明けの平日になるため境内も比較的静かで、ご祈祷の予約が取りやすいのもこの日の魅力である。
神嶽山神苑と渾天儀 ─ ご祈祷者だけに開かれる方位の庭
寒川神社の境内で、参拝の作法以上に味わってほしい場所がある。「神嶽山神苑(かんたけやましんえん)」だ。御祈祷を受けた参拝者にのみ拝観が許される回遊式の日本庭園で、本殿裏手の禁足地として長らく公開されていなかった一帯が、平成21年(2009年)に整備・開苑された。ここには、八方除の信仰と表裏一体の象徴物が静かに据えられている。
園内の中心部に置かれているのが「渾天儀(こんてんぎ)」である。古代中国で編まれ、奈良〜平安期に日本へ伝わった天文観測機器で、天球の模型に経緯線を入れた精密な構造をしている。寒川神社の渾天儀は、平安時代の宮中天文を再現したジオラマの上に据えられ、四方には四神──東に青龍、西に白虎、南に朱雀、北に玄武──が配置され、天井には二十八宿の星々が描かれている。八方除という御神徳が、星と方位の学問にどれほど深く根を下ろしているかを、視覚的に体験できる空間である。
神苑には茶室「和楽亭」もあり、抹茶の接待を受けながら静かに庭を眺めることができる。御祈祷を受けたあと、神苑で半時ほど呼吸を整えて社頭に戻る──というのが、寒川神社の参拝で最も整う時間の使い方だと、私自身は思う。
馬と寒川神社 ─ 9月の流鏑馬と神馬の伝統
午年の参拝として寒川神社を取り上げるからには、馬との結びつきにも触れておきたい。寒川神社では毎年、9月19日(例祭前日)に流鏑馬神事が奉納される。武田流(小笠原流ではない)の流鏑馬で、烏帽子・直垂の射手が三騎、参道の馬場を疾走しながら三つの的を射抜いていく。神事の起源は平安時代にさかのぼると伝わり、天下泰平・五穀豊穣を祈る神事として、千年以上の連続性を保ってきた。
午年の今年に限って言えば、2026年9月19日(土)の流鏑馬神事は、福カレンダーの暦データで日干支「丙申(ひのえさる)」、六曜「仏滅」、一粒万倍日、月相「上弦」の日にあたる。例祭本宮はその翌日9月20日(日)に執り行われ、こちらは大安・上弦の月。仏滅で一粒万倍日が立つ前日に流鏑馬で土地を祓い、翌日の大安で本宮を迎える──暦の上でも理にかなった二日間の構成だ。GWの國府祭で午年の春を整え、9月の流鏑馬で秋の馬の祭礼を観るという二段構えで通えば、相模國一之宮を一年通して味わうことになる。
社殿前の馬場には、明治期から飼われていた神馬の伝統を示す石柱や絵馬奉納の作法が残されており、八方除と並ぶ寒川神社の「馬の文化」を、静かに感じることができる。関東の午年参拝としては、神奈川県内では箱根神社も2026年に注目したい一社で、芦ノ湖畔の九頭龍信仰と寒川神社の八方除を組み合わせれば、神奈川県だけで午年の関東参拝が完結する。
旅と祈りの編集者・旅河楓のメモ ─ 鳥居をくぐる前に確認しておくこと
私が最初に寒川神社を訪れたのは、ある年の年初め、厄年の節目だった。八方除の御祈祷は予約制ではなく当日受付で、朝8時から境内の祈祷殿で随時執り行われる。所要時間は祝詞奏上から授与品受領まで約30〜40分。午年の今年は、特に天赦日や一粒万倍日に祈祷希望者が集中することが予想されるので、早朝の参拝を強くおすすめしたい。
御朱印は神嶽山神苑の入苑券(御祈祷を受けた方のみ)と一緒に、社頭の授与所で頂ける。國府祭の5月5日には限定御朱印・授与品が頒布される年が多いので、当日に参拝予定の方は寒川神社公式サイトで頒布開始時刻を確認しておくとよい。
寒川神社は2026年の福カレンダー吉日カレンダーで確認できる方位除の最強日と、相模國一之宮としての千年の祭礼が、最も濃く重なる神社である。八方除と聞くと身構えてしまうかもしれないが、そもそも「八方塞がり」という言葉が示すように、方位の悩みは古くから日本人の生活に近い場所にあった信仰だ。今年が八方塞がりの星回りに当たる方なら、なおさら一度足を運ぶ価値がある。福カレンダーの関東パワースポット吉日ガイドとも合わせて読み、自分にとっての方位の整え方を考えてみてほしい。鳥居をくぐるとき、少しだけ時間の流れが変わる──寒川の杉並木の中で、その感覚はきっと、八方の風が一度すべて止まる静けさとして訪れる。
主な参照先・出典:
- 八方除 寒川神社 公式サイト「御由緒」「御祭神」「八方除」 https://samukawajinjya.jp/
- 八方除 寒川神社 公式サイト「國府祭」「神嶽山神苑」「渾天儀」「流鏑馬神事」 https://samukawajinjya.jp/en/festival/
- 神奈川県神社庁「寒川神社」 https://www.kanagawa-jinja.or.jp/shrine/1206056-000/
- 六所神社(神奈川県大磯町)公式サイト「国府祭」 https://rokusho.jp/index.php/kounomachi/
- タウンニュース 茅ヶ崎・寒川版「5月5日は相模国府祭 寒川神社など6社が参集」 https://www.townnews.co.jp/0603/
- 福カレンダー 暦データ(2026年)NAOJ公式値ベース

旅河 楓旅と祈りの編集者
全国の神社仏閣・パワースポットを自分の足で歩き、土地の歴史と信仰を紐解く旅する編集者。地元の方への取材を大切にし、ガイドブックには載らない「祈りの風景」を伝える記事が読者に支持されている。
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