上賀茂神社(京都) 2026 ─ 5月5日賀茂競馬と平安末期から続く日本最古の神馬神事、世界遺産で読み解く午年GWの参拝

目次
京都の北、賀茂川のほとりに、五月になると馬の蹄が芝を打つ音が響く社がある。一の鳥居から二の鳥居のあいだ、芝生の馬場に「らち」と呼ばれる細い垣が張られ、紅白の幔幕が張られると、境内の空気はふっと平安の都に戻る。上賀茂神社(正式には 賀茂別雷神社〈かもわけいかづちじんじゃ〉)。二〇二六年、六十年に一度の 丙午(ひのえうま)の年 を迎えたこの社で、五月五日に行われるのが、寛治七年(1093年)から九百三十年以上絶えることなく続いてきた 賀茂競馬(かもくらべうま) だ。
下鴨神社を訪ねた方は多い。貴船神社で水無月の夏越祓を受けた方もいる。けれど、京都の馬ゆかりの社の本丸 ─ 賀茂氏の神話で言えば「子」にあたる別雷大神を祀り、世界遺産の広大な境内に古式の競馬場をいまも抱えている上賀茂神社は、意外なほど午年の特集記事で触れられる機会が少ない。福カレンダー編集部では、この二〇二六年こそ上賀茂神社に足を運ぶべき年だと考えている。本稿では、賀茂競馬の歴史と見どころ、そして二〇二六年五月五日の暦を手がかりに、GW 後半の参拝を組み立てるヒントをお届けする。
上賀茂神社とは ─ 別雷大神と世界遺産二十三万坪の境内
上賀茂神社の正式名は 賀茂別雷神社、祭神は 賀茂別雷大神(かもわけいかづちのおおかみ)。「別雷」とは「雷を別けるほどの強い力を持つ神」の意で、古来、厄除・災難除・必勝の神として、そしてあらゆる「前に進む力」の神として信仰されてきた(京都府公式「世界遺産 賀茂別雷神社」)。
社伝によれば、祭神は本殿の北北西にそびえる 神山(こうやま) に降臨し、その後、第四十代 天武天皇六年(677年) に現在地に社殿が造営された。下鴨神社の祭神 玉依媛命 の御子神にあたり、下鴨と上賀茂の二社は、賀茂氏の神話のなかで「母 ─ 子」の関係で結ばれている。平安遷都ののち、王城鎮護の社として朝廷から厚く遇され、五月十五日の葵祭(賀茂祭)は天皇の勅使を迎える勅祭として千年以上続いてきた(上賀茂神社公式「上賀茂神社について」)。
境内の広さは 二十三万坪。本殿と権殿は 国宝、そのほか四十一棟の社殿が重要文化財に指定され、一九九四(平成六)年、境内全域が「古都京都の文化財」の構成資産として ユネスコ世界文化遺産 に登録された。二の鳥居内、細殿前に盛られた二対の円錐 立砂(たてずな) は、祭神が降り立った神山を模した依代(よりしろ)。京都を訪れる方が一度はカメラを向ける、上賀茂神社の象徴だ。
賀茂競馬 ─ 平安末期1093年から続く、日本最古の競馬神事
賀茂競馬は、第七十三代 堀河天皇の寛治七年(1093年) に始まった神事。もともとは平安京大内裏の 武徳殿 で行われていた宮中の競馬会の儀を、天下太平と五穀豊穣を祈るために上賀茂神社に移したもので、二〇二六年で 933年目 を迎える(上賀茂神社公式「賀茂競馬・足汰式」)。吉田兼好の『徒然草』四十一段にも賀茂競馬見物の逸話が記されており、少なくとも鎌倉末期の段階で、京の都の初夏を代表する神事として広く知られていたことがわかる。
形式は、二頭一組で走る古式の競馬。騎手は 乗尻(のじり) と呼ばれ、平安装束に身を包み、左方は緋色(赤)、右方は藍黒(黒) の袍(ほう)を着て乗る。一馬身ほど先をゆく先馬と、それを追う後馬が並んでスタートし、その差がさらに開けば先馬の勝ち、縮まれば後馬の勝ち。現代の競馬のように「先にゴールした方」ではないのがおもしろい。左方が勝った年は豊作になるという言い伝えが、いまも地元では大切にされている。京都市登録無形民俗文化財に指定され、騎手・馬・装束のすべてが古式通りに守られている。
当日の流れは、早朝の 頓宮遷御の儀(神霊を頓宮にお遷しする儀式)から始まり、午前に 菖蒲根合わせの儀、正午過ぎに 乗尻奉幣の儀、午後一時頃から 、そして午後二時頃にいよいよ ─ 芝の馬場で実際に馬が駆ける。例年、五月一日には前日行事にあたる が一の鳥居内の馬場で行われ、乗尻の馬上姿勢や馬足の優劣から当日の番立(組み合わせ)が決定される。二〇二六年も同じ進行で執り行われる見込みで、拝観席(埒東・埒西)は例年複数の料金帯で頒布される。詳細は上賀茂神社公式サイトの最新案内を確認してほしい。
2026年5月5日を暦で読む ─ 先負・一粒万倍日・立夏と菖蒲の邪気祓い
二〇二六年五月五日(火・こどもの日)の暦は、賀茂競馬にとって非常に意味のある布置になっている。福カレンダーの暦マスターで確認すると、この日は:
- 六曜:先負 ─ 午前は控えめ、午後から動くとよい日
- 吉日:一粒万倍日 ─ 一粒の籾が万倍に実る、始まりの日
- 月相:十六夜(いざよい) ─ 満月を少し過ぎた、力の満ちた月
- 日干支:己卯(つちのと・う) ─ 卯の日、柔らかな進展の気
- 節気:立夏 ─ 暦の上の夏の始まり
競馬会の儀が午後一時、競馳が午後二時に行われるという古くからの進行は、偶然とは思えないほど 先負の「午後吉」と合致 している。そして五月五日は端午の節句 ─ 乗尻も神職も腰に 菖蒲 を挿し、神馬は頭に菖蒲をまとう。菖蒲の強い香りは古来、邪気を祓うとされ、家庭で菖蒲湯に浸かる風習と同じ源流をもつ(京都観光Navi「賀茂競馬」)。しかも二〇二六年は 丙午(ひのえうま)の午年、日干支も 立夏初日 という節目が重なり、馬と暦と夏のはじまりが一つに交わる。九百年以上前の堀河天皇の時代に、なぜこの日を選んだのか ─ 境内で馬が駆ける音を聴いていると、その答えが少しずつ身体に入ってくる。
参拝前日の 五月四日(月・みどりの日) は 天赦日・寅の日・大明日 の三重吉日(友引・十六夜・戊寅)。前日の夕刻に境内を歩いて立砂に手を合わせ、翌朝から賀茂競馬に向かう流れは、暦上も理にかなっている。福カレンダーの GW最強開運日 2026年5月4日 で詳しく解説した天赦日と寅の日の重なりを、上賀茂神社の杉並木のなかで体感してほしい。
GW後半の暦で組み立てる、上賀茂神社の参拝プラン
二〇二六年のゴールデンウィーク後半は、五月三日(日・憲法記念日/先勝/満月/大明日)から五月六日(水・振替休日//一粒万倍日・大明日)まで四連休となる。賀茂競馬は五月五日のみの神事だが、前後の暦を並べるとまったく違う参拝ルートが見えてくる。
2026年の暦カレンダー

旅河 楓旅と祈りの編集者
全国の神社仏閣・パワースポットを自分の足で歩き、土地の歴史と信仰を紐解く旅する編集者。地元の方への取材を大切にし、ガイドブックには載らない「祈りの風景」を伝える記事が読者に支持されている。
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