京都・夏越の祓 2026 ─ 北野天満宮の京都最大級から城南宮の愛車の茅の輪まで7社めぐり、満月×友引の6/30を歩く

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水無月の最終日、京都の鳥居をくぐると、朱と藁の匂いが入り混じる。直径数メートルの円に編まれた葦──「茅(ちがや)」を、人々が静かに八の字に巡っていく光景は、京の梅雨明けを告げる、ある種の合図だ。
夏越の祓(なごしのはらえ)は、一年の半分にあたる6月30日に半年の穢れを清める神事。福カレンダーで2026年6月30日(火)を引くと、六曜は友引、月相は満月、日干支は乙亥、月干支は甲午──そして暦注の上では「不成就日」が重なる。穢れを祓い、満月の光が満ちる夜に半年を区切る。一見矛盾する暦のサインが、京都の七つの社では別々の解釈で受け止められている。
ガイドブックには載らない、それぞれの茅の輪の流儀を、北から順に歩く。
6月30日の暦が読み解くもの
夏越の祓は、神道で最も古い祓い神事のひとつとされる。半年に一度、六月晦日と十二月晦日に行われる「大祓」が現代に残ったかたちで、京都ではほぼすべての神社が独自の作法で茅の輪を設える。
福カレンダーの暦データで2026年6月30日を見ると、興味深い重なりが浮かび上がる。
| 暦項目 | 2026年6月30日(火) |
|---|---|
| 六曜 | 友引 |
| 月相 | 満月(月齢15) |
| 日干支 | 乙亥 |
| 月干支 | 甲午 |
| 旧暦 | 五月十六日 |
| 暦注 | 不成就日 |
満月との重なりは大きな意味を持つ。月の満ち欠けは古来、浄化と再生のリズムの象徴。半年の穢れを満月の光のもとで祓うという構図は、この日にしか成立しない。月干支が「甲午」、年干支が「丙午」というのも今年ならではで、午の力が二重に重なる丙午の年に、月もまた午の月で迎える夏越は、五十年に一度の巡り合わせだ。
不成就日は「事を始めるには向かない日」とされる暦注で、古い陰陽道の流れを汲む。だが夏越の祓は「始める」のではなく「祓い清める」儀式──不成就日に祓えを行うのは、むしろ凶を断ち切る意味で理にかなう、と京都の神職は静かに語る。福カレンダーの読み筋は、「半年区切りの満月夜、不成就日の上に新しい半年の節目を置き直す日」というもの。
北野天満宮 ─ 御誕辰祭、楼門に掲がる京都最大級5mの大茅の輪
学問の神様・菅原道真公を祀る北野天満宮は、夏越天神とも呼ばれる。6月25日が道真公の御誕生日で、福カレンダーの暦では2026年6月25日(木)は先負・一粒万倍日・庚午──年が午年なら日干支も「午」、種を蒔けば万倍に実る一粒万倍日が重なる、午年最大級の御縁日となる。
午前9時の御誕辰祭。本殿前で祭儀が行われたのち、24日の夕方には楼門に直径5メートルの大茅の輪が掲げられる。京都最大級と称されるこの輪をくぐれば、夏の暑さに負けず無病息災で過ごせる──と古くから語り継がれてきた。
茅の輪自体は6月1日から30日までの一か月間、御本殿前にも設けられる。御誕辰祭の25日は天神市が立ち、参道は早朝から露店と人で賑わう。月末の30日(火)は午前中の人出が落ち着き、楼門の大茅の輪を仰ぐにはむしろ良い時間帯。北野白梅町からの徒歩圏なので、参道の和菓子屋で水無月(みなづき)を一個買い、楼門前のベンチで食べてから境内に入る、という小さな儀式を編集部はおすすめしたい。
城南宮と上賀茂神社 ─ 王朝の流儀が今も生きる二つの大社
伏見区の城南宮は、平安遷都の際に都の南を守るために創建された方除の大社。源氏物語に何度も登場する曲水の宴の舞台でもある。
城南宮の夏越は二段構え。まず6月25日から30日までの六日間、本殿と拝殿の間に大きな茅の輪が設けられ、人形流しと併せて行われる。30日(火)15時の夏越の祓本祭で半年を区切ったあと、翌7月1日(水・先負・大明日)から7日(火・先負・一粒万倍日・小暑)までの一週間、第一駐車場に直径5メートルの「愛車の茅の輪」が出現する。
愛車の茅の輪は全国でも珍しい。神職が一台ずつお祓いをし、ハンドルを握ったまま茅の輪をくぐり抜ける。交通安全祈願の異色の神事で、軽自動車から大型トラック・バスまでが訪れる。最終日の7月7日は壬午(午日)で、午年に乗る愛車を午日に祓えるという、暦と神事の偶然の重なりも今年ならでは。城南宮の人形流しは、本殿裏の「禊の小川」に紙の人形を浮かべる古典の作法で、京の夏越のもうひとつの原型がここにある。
世界遺産・上賀茂神社(賀茂別雷神社)の夏越大祓は、京都で最も「歌枕」に近い夏越と言える。
風そよぐ ならの小川の夕暮れは みそぎぞ夏のしるしなりける
(藤原家隆/百人一首)
百人一首98番のこの一首は、まさに上賀茂神社の境内を流れる「ならの小川」での夏越大祓の情景を詠んだもの。八百年前に詠まれた光景を、今も同じ小川で見ることができる。
茅の輪は6月10日(水)から30日まで、二の鳥居内に設置される。30日当日は午前10時から茅の輪くぐりなどの神事が、夜は午後8時からならの小川で人形流しが行われる。日没後の境内は灯籠の灯りに満たされ、和歌の世界が立ち上がる時間帯。福カレンダー編集部が「上賀茂の夕方の祓えは、日本の夏越のいちばん古い姿が今でも残っている」と推す理由がここにある。上賀茂神社は午年の今年、5月5日にも賀茂競馬という神馬神事を行った──春に走った馬の年が、晩夏には水辺の祓えへと姿を変えていく。
八坂神社 ─ 6月30日の大祓と、祇園祭を締める7月31日の疫神社夏越
祇園さんの愛称で知られる八坂神社は、東山区の四条通り突き当たり。コロナ禍でいったん途絶えた茅の輪も、近年は完全に復活している。
2026年6月30日(火)は、15時に境内へ大茅の輪が設置され、夕刻にかけて祓えの神事が執り行われる。八坂神社のもう一つの特徴は、本社の夏越が終わってから一か月後、摂社・疫神社で「夏越祭」が開かれること。
その日は7月31日(金)──福カレンダーの暦データでは大安・一粒万倍日・大明日が重なり、日干支は丙午。年干支もまた丙午で、年と日が同じ「丙午」の日。六十年に一度しか巡らない、丙午年の丙午日に行われる疫神社夏越は、祇園祭一か月の締めくくりとして、知る人ぞ知る神事だ。茅の輪は本社のものとは別に、疫神社の鳥居前に設けられる。一日かけて茅を抜き取って持ち帰る古い習わしも残っており、玄関先に飾れば疫病除けになると伝わる。
平安神宮・松尾大社・藤森神社 ─ 静けさを楽しむ茅の輪三社
京都の夏越は、有名社ばかりでなく、少し人出を避けたい人向けの静かな社にも生きている。
平安神宮は朱塗りの應天門に茅の輪が掲げられる。設置期間は6月13日(土・先勝・一粒万倍日・戊午)から30日まで。13日も日干支「戊午」で午日に重なるため、午年の参拝開始日として狙い目。應天門は明治28年の創建当時の姿を残す建築で、茅の輪と朱塗りの組み合わせは京都でも独特の景観をつくる。
2026年の暦カレンダー

旅河 楓旅と祈りの編集者
全国の神社仏閣・パワースポットを自分の足で歩き、土地の歴史と信仰を紐解く旅する編集者。地元の方への取材を大切にし、ガイドブックには載らない「祈りの風景」を伝える記事が読者に支持されている。
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本記事は一般的な暦の知識や伝統的な解釈に基づいています。 占いの結果を保証するものではありません。最終的な判断はご自身でお願いします。
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編集方針について →参考情報:暦注・民俗資料、公的機関の暦情報を参考に編集部が整理しています。
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