京都「馬ゆかり」3社めぐり2026 ─ 貴船・藤森・下鴨がSNSで再注目される理由
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旅の空を読み替える年がある。2026 年は丙午(ひのえうま)、60 年に一度めぐる午年だ。SNS 上では年明けから「#2026 開運神社」のタグが伸び続け、そのなかで京都の三社 ─ 貴船・藤森・下鴨 ─ の動画投稿が突出して回り始めた。出版側も静かではない。ことりっぷ・るるぶ・オレンジページといった旅メディアが前後して「午年に参る馬ゆかりの神社」特集を組み、いずれも主役にこの三社をそろえている。
神社を旅のテーマにして十数年、福カレンダー編集部の旅河楓として言えるのは、このブームが単なるバズではない、ということだ。三社はいずれも「馬」と「暦」を千年以上祀り継いできた土地で、午年の 2026 年 5 〜 6 月には、それぞれの本祭がきれいに並ぶ。順に訪ねれば、水・勝運・流鏑という京の信仰の三相を、暦に沿って体感できる構成になっている。
三社の個性 ─ 「水の貴船」「勝の藤森」「射の下鴨」
はじめに、三社がなぜ並び立つのかを短く整理しておきたい。表層的には「馬」という共通項だけれど、土地と祭神と神事が重ならないのが面白い。
| 社名 | 場所 | 祭神・信仰 | 馬との関わり | 2026 年の例祭日 |
|---|---|---|---|---|
| 貴船神社 | 京都市左京区鞍馬貴船町 | 高龗神(水の神) | 絵馬の発祥、献馬神事の原点 | 6 月 1 日 貴船祭 |
| 藤森神社 | 京都市伏見区深草 | 素盞嗚命ほか(勝運・馬) | 駈馬神事(1200 年超) | 5 月 5 日 駈馬神事 |
| 下鴨神社 | 京都市左京区下鴨泉川町 | 賀茂建角身命・玉依媛命 | 流鏑馬神事(葵祭前儀) | 5 月 3 日 流鏑馬神事 |
北の鞍馬の谷に水の神、伏見の丘陵に勝運と軍馬の神、糺(ただす)の森に王権と射術の神。京都の北・南・東をゆるやかに囲みながら、それぞれの社頭では違う馬が走り、違う祈りが立ちのぼる。
SNS で数字が動いているのは、動画映えするからだけではない。福カレンダーの暦計算で 5 月 3 日・5 月 5 日・6 月 1 日を並べてみると、5 月 3 日は先勝・大明日・満月、5 月 5 日は先負・一粒万倍日・立夏、6 月 1 日は先勝・大明日・満月 ─ そしてこの 6 月 1 日は日の干支が丙午、つまり午年と同じ「丙午」の日取りに重なる。60 年ぶりの午年本体で、日干支まで丙午に一致する本祭は、さらに 60 年後にしか巡ってこない。旅と暦の歯車が噛みあった年だと考えれば、この集中の仕方にも納得がいく。
下鴨神社 騎射流鏑馬神事 ─ 5 月 3 日、糺の森に立つ陰陽の声
世界遺産「古都京都の文化財」に含まれる下鴨神社は、正式には賀茂御祖(かもみおや)神社と呼ぶ。境内に先立って広がる糺の森は、東京ドーム三個分に相当するとされる原生林で、京都市街にこれだけの森がそのまま残っていること自体が奇跡に近い(参考: 糺の森財団公式サイト)。
流鏑馬(やぶさめ)神事は、この糺の森を貫く約 500 メートルの馬場に三つの的をかけ、公家・武家の装束をまとった射手が疾走する馬上から「インヨー(陰陽)」の掛声とともに鏑矢を放つ、葵祭の前儀である。明治期に一度途絶え、1973 年に復興された(京都新聞デジタル「葵祭の前儀」)。
藤森神社 駈馬神事 ─ 5 月 5 日、1200 年続く「勝運」のアクロバット
地下鉄烏丸線から京阪本線に乗り換え、墨染駅で降りる。住宅街を抜けた先にあるのが藤森(ふじのもり)神社。伏見区深草の鎮守で、祭神は素盞嗚命(すさのおのみこと)を中心に十三柱。
藤森祭は毎年 5 月 1 日から 5 日にかけて執り行われ、5 月 5 日にクライマックスを迎える。武者行列、神幸祭、そして一日二度(13 時・15 時)の駈馬神事(かけうましんじ)。馬の背に立ち、逆立ちし、手綱さばき一つで矢を射、墨を書いてみせる ─ およそ 1200 年続いてきたとされる実戦馬術が、参道のわずか 180 メートルほどの馬場を一瞬で駆けぬける(藤森神社公式・駈馬神事)。始まりは延暦期、早良親王が陸奥の反乱鎮圧を祈願し、神前で馬を駆けさせたことに由来すると伝わる。
この日は菖蒲(しょうぶ)の節句、つまりこどもの日。藤森は勝負・菖蒲の音通から「勝運」の社として信仰を集めてきた。境内には大きな絵馬殿があり、競馬関係者、ジョッキー、馬主、騎手学校の生徒らが奉納した勝馬の絵馬がびっしりと掛けられている。藤森の授与品では「勝馬守」(1,000 円)と「うまくいく守」(1,000 円)が知られ、2026 年の午年ではとりわけ問い合わせが増えているという(ふらふら京都散歩「藤森神社 勝運と馬」)。
暦の視点でこの 5 月 5 日を見直すと、六曜は先負ながら、一粒万倍日 × 立夏 × こどもの日の三重の意味が並ぶ。立夏はこの年 2026 年の夏の入り口で、小満(しょうまん)に向けて気の向きが変わる節目。勝運を授かる日にこれ以上ふさわしい暦の並びは、年内でも数えるほどしかない。
貴船神社 貴船祭 ─ 6 月 1 日、午年×丙午が重なる本殿祭
叡山電鉄の終着駅から貴船口へ、さらに川沿いを登る。京都市街から直線距離では近いのに、谷の深さが気温を確かに下げる。貴船神社は全国およそ 2000 社ある水神社の総本宮で、祭神は水を司る高龗神(たかおかみのかみ)である。
創建は 1300 年以上前と伝わる。古くは歴代天皇が干ばつには黒馬を、長雨には白馬あるいは赤毛の馬を献じて祈り ─ やがて生きた馬のかわりに馬形を板に描いて奉ずる「板立馬(いただてうま)」が生まれた。これが後の絵馬の原形となったことから、貴船神社は「絵馬発祥の社」と呼ばれている(貴船神社公式・祭典神事 / Wikipedia「貴船神社」)。貴船祭は 6 月 1 日の例祭で、2026 年は月曜日 11 時の本殿祭から始まり、本宮・奥宮のあいだを神輿が渡御、出雲神楽の奉納、こども千度詣、還御祭までが夕方にかけて続く。
ここで福カレンダー編集部の暦データが、もう一段の差を見せる。2026 年 6 月 1 日の日干支は「丙午(ひのえうま)」。つまり、60 年に一度の丙午の年に、その年の例祭日の日干支まで丙午が来る。このような一致は、暦学的に計算すると 60 年に一度きり。次は 2086 年の 6 月 1 日、そのまた次は 2146 年だ。絵馬発祥の社・貴船で、午年×丙午の本祭に立ち会えるのは、人生で一度あるかないかの暦合わせにほかならない。詳しくは丙午(ひのえうま)の夏 2026で編集部の分析をまとめているので、あわせて読んでいただきたい。
祭の日以外であれば、青もみじのライトアップも同じく名物で、2026 年は 5 月 2 日 〜 5 日に実施される(京都観光ガイド「貴船神社 新緑ライトアップ 2026」)。絵馬の発祥という側面はに詳述したので、そちらも参考にしていただきたい。
2026年の暦カレンダー

旅河 楓旅と祈りの編集者
全国の神社仏閣・パワースポットを自分の足で歩き、土地の歴史と信仰を紐解く旅する編集者。地元の方への取材を大切にし、ガイドブックには載らない「祈りの風景」を伝える記事が読者に支持されている。
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本記事は一般的な暦の知識や伝統的な解釈に基づいています。 占いの結果を保証するものではありません。最終的な判断はご自身でお願いします。
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