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京都五山送り火2026年8月16日 ─ お盆の終わりに大文字・妙法・船形・左大文字・鳥居形が灯る精霊送りの夜

旅河 楓旅と祈りの編集者·2026.07.12 更新·約13分
京都五山送り火2026年8月16日 ─ お盆の終わりに大文字・妙法・船形・左大文字・鳥居形が灯る精霊送りの夜

この記事でわかること

京都五山送り火2026は8月16日(日)20時00分の大文字を皮切りに、妙法・船形・左大文字・鳥居形まで5分間隔で点火される。新月直後の繊月で空が暗く沈むこの夜、福カレンダー編集部が暦と五山の継承を並べ、お盆を閉じる火の道を歩く。

目次
  1. 1.五山送り火とは ─ 「精霊送り」の火が山に留まった夜
  2. 2.2026年の暦で読む8月16日 ─ 仏滅・繊月の夜
  3. 3.五山と点火順 ─ 20時00分から20時20分までの五分刻み
  4. 4.鑑賞スポットと夜の歩き方
  5. 5.福カレンダー編集部の歩き方 ─ お盆を閉じる火と暦のしおり

東山如意ヶ嶽の中腹、午後8時直前。鴨川堤に立ち並んだ人波が、ふいに一斉に北東を仰ぐ。山肌で点々と松明が動き、合図とともに火床に火が回り、闇の中から「大」の一画が、横画から縦画へ、左払いから右払いへと、ひとつずつ立ち上がってくる。火は風で揺れ、字は呼吸し、やがて山に「大」と一文字、夜空に向かって書かれる。

京都市公式 京都観光Navi「京都五山送り火」が定める2026年の点火日は、8月16日(日)20時00分。如意ヶ嶽の大文字から、5分おきに妙法・船形万灯籠・左大文字・鳥居形松明と、京都を取り囲む五つの山に火が次々と灯る。お盆の三日間(8月13–15日)に迎えた精霊を、ふたたび冥府へ送り返す祈りの夜である。福カレンダー編集部は、この一夜を暦と五山の継承の双方から読み解いてみたい。

五山送り火とは ─ 「精霊送り」の火が山に留まった夜

京都新聞デジタル「五山送り火 送り火とは」は、送り火を「お盆に迎えた先祖の霊(精霊)を、再びあの世へ送り返すための仏教行事」と定義する。盆の入りに焚く火を「迎え火」、明けに焚く火を「送り火」と呼び、いずれも灯火を道しるべとして死者と生者の往還を結ぶ。家庭の門口で焚かれる小さな麻幹(おがら)の火も、五山の山肌で字を描く巨大な火床も、根は同じ精霊送りの作法である。

異なるのは、その規模と継承のかたちだ。京都では、この精霊送りの火が町の門口を離れ、山へと留まった。京都市公式「京都五山送り火 深く知る」によれば、起源は諸説あって一つに定まらない。

「平安初期に弘法大師が始めたとも、室町中期に足利義政が始めたとも、江戸初期に近衛信尹が始めたとも諸説あり、定かではない」
─ 京都市公式 京都観光Navi「京都五山送り火 深く知る」

Wikipedia「五山送り火」では、これらの起源伝承に加えて「松明の火を空に投げ上げて虚空を行く霊を見送る風習が、山に点火されてそこに留まったもの」という民俗学的解釈も紹介されている。確実なのは、室町期以降に仏教が庶民に深く浸透し、盆の翌日に山で火を焚く形が定着していった、という大筋である。

そして1983年(昭和58年)6月1日、五山送り火は京都市登録無形民俗文化財に登録された。国指定の重要無形民俗文化財ではなく、京都市独自の登録制度で守られている点に、この行事の特異な性格が見える。中央の指定を仰ぐより、地元五つの保存会が黙々と継承する道を選んできた、と読むこともできるだろう。

2026年の暦で読む8月16日 ─ 仏滅・繊月の夜

国立天文台暦計算室の暦要項が定める2026年の節気と、福カレンダーの暦マスターを照らし合わせると、お盆と送り火の四日間は次のように整理できる。

月日曜日行事六曜吉日月相日干支
8月13日木盆の入り(迎え火)先勝一粒万倍日新月己未
8月14日金盆中日友引大明日新月(月齢1.4)庚申
8月15日土盆明け先負大明日繊月(月齢2.4)辛酉
8月16日日五山送り火仏滅─繊月(月齢3.4)壬戌
8月17日月─大安─繊月癸亥

この一覧から読み取れる暦の見どころは三点ある。

ひとつ、8月13日の一粒万倍日。先祖を迎える盆の入りが、一粒の籾が万倍に実るとされる選日と重なる。盆飾りや精進料理の準備、墓参りといった「行いの始まり」に縁起良い日が、新月(月齢0.4)と並んでいる。お盆を「家の中の小宇宙が初期化される三日間」と捉えるなら、その始点は星も見えない真っ暗な新月の夜から始まる。

ふたつ、送り火当日の8月16日が仏滅。一般的に仏滅は「物滅」とも書かれ、結婚や祝い事を控える日とされてきた。しかし送り火は祝事ではなく仏教的な精霊送りであり、むしろ仏縁の深いこの日に火を焚いて霊を送り返すのは、暦の意味と行事の意味が深いところで響き合っている。盆の三日間に連なった大明日の列も8月15日で途切れ、当日は暦注下段の吉日が重ならない、仏滅だけが静かに据わる一日──祝い事から最も遠い日に、五山に火が灯る。

みっつ、新月直後の繊月(月齢3.4)。送り火の20時00分、月はすでに沈むか地平に近く、空は今年もっとも暗い夏夜のひとつになる。京都盆地を取り囲む山稜のシルエットすら見えにくい闇の中で、火床の朱だけがくっきりと浮かび上がる。月明かりのない夜は、まさに送り火を見るために誂えられた天空の舞台装置である。

なお、この記事の公開日である7月26日(日)は、土用の丑の日。夏土用の終盤、鰻を食べて夏負けに備えるこの日に、福カレンダーは送り火三週間前のしおりとして本記事を置いた。

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五山と点火順 ─ 20時00分から20時20分までの五分刻み

京都市公式 京都観光Navi「京都五山送り火」、および京都倶楽部「五山の送り火 大文字・左大文字・妙法・鳥居・船形」に基づき、点火順と各山の所在を整理する。

点火時刻字形山名所在地燃焼時間
20:00大大文字山(如意ヶ嶽)京都市左京区浄土寺七廻り町約30分
20:05妙・法松ヶ崎西山・東山京都市左京区松ヶ崎約30分
20:10船形西賀茂船山京都市北区西賀茂約30分
20:15左大文字大北山京都市北区衣笠大北山約30分
20:20鳥居形嵯峨鳥居本曼陀羅山京都市右京区嵯峨鳥居本約30分

順序は東から西へと反時計回りに京都盆地を一周するように進む。最初の大文字が銀閣寺の北東、最後の鳥居形が嵐山の北、と覚えると土地勘とつながる。

各山の見どころを、もう少し丁寧にたどってみたい。

大文字 ─ 五山の口火を切る一画

如意ヶ嶽の中腹、銀閣寺の北東の山肌に、縦約76メートル・横約160メートルの「大」の字が浮かぶ。火床は75か所、薪と松割木と藁で組まれる。火床は横一画の「一」、左払いの「ノ」、右払いの「ヽ」が交わる中心点を「金尾(かなわ)」と呼び、ここから順に点火される。

京都市公式 京都観光Navi「京都五山送り火 深く知る」に伝わる伝承の一つに、大文字山麓にあった浄土寺が火災に遭った際、本尊の阿弥陀如来が山上に飛翔して光明を放ち、その光を弘法大師空海が「大」の字に改めて再現した、という説がある。真偽はともかく、「光明を山に再現する」という根源的なモチーフは、現在の火床の配置に確かに息づいている。

保存会は浄土院の元檀家の世襲で、世代を越えた個人の手で薪が組まれ、火が灯される。

妙法 ─ 松ヶ崎の二字で組まれる題目

松ヶ崎の西山に「妙」、東山に「法」。鎌倉期、この村の住人が日蓮宗に改宗したことに始まる、と伝えられる。日蓮宗で唱える題目「南無妙法蓮華経」の中核を、二つの山に分けて灯す。

「妙」が先に点り、5秒・10秒の遅れで「法」が応える、と地元の人は語る。実際には同時刻の点火だが、火床に火が回るタイミングがわずかに前後する。それを「妙が法を呼ぶ」と読むのは、土地の人だけが持つ繊細な観察である。

船形万灯籠 ─ 精霊舟を山に描く

西賀茂船山に、船の形の火が浮かぶ。先端を西方浄土に向け、霊を乗せて送り出す精霊舟を象ったとされる。ほかの五山が漢字一文字(または題目)で構成されるのに対し、船形は具象形の火である点が特異である。

地元の慈覚大師(円仁)伝承──唐から帰国の途中、嵐に遭った船で南無阿弥陀仏を唱えたところ無事に戻れた、その船を山に描いて感謝した──とも言われるが、これも諸説の一つ。火床の数は79か所と、五山の中でも最多である。

左大文字 ─ 西の街区を照らす対の「大」

大北山の山肌に、東の大文字より一回り小さな「大」が灯る。「左」とつくのは、東の大文字に対して左(西)にあるためで、大文字山の対をなす存在として中世から認識されてきた。火床は53か所、字の大きさは縦約48メートル・横約68メートル。

衣笠・金閣寺界隈の街並みから見上げると、街灯越しの近距離に文字が立ち上がる。市内のもっとも生活圏に近い送り火である。

鳥居形松明 ─ 山に灯る愛宕への参道

嵯峨鳥居本の曼陀羅山に、鳥居の形の火が灯る。愛宕神社の鳥居に倣ったとも、嵐山の対岸から愛宕山を遙拝する道しるべとも言われる。火床は108か所、人骨大の松明を直接山肌に立てて燃やす独特の方式で、燃焼の音が現地でははっきり聞こえる。

Wikipedia「五山送り火」によれば、嵯峨鳥居本に住む青年を中心に構成される鳥居形松明保存会が代々継承している。最後に灯る一山として、20時20分の点火で五山の儀礼が結ばれる。

鑑賞スポットと夜の歩き方

五山すべてを一度に見渡せる場所は、実は限られている。京都市内の一般公開場所のうち、複数の山を視野に収めやすい鑑賞スポットを、市公式情報を参考に整理する。

  1. 鴨川堤(出町柳〜丸太町):東に大文字、北東に妙法(角度によって)。最もアクセスしやすく、地元と観光客が混在する。19時頃から場所取りが始まる。
  2. 賀茂川堤・西賀茂橋付近:妙法・船形の鑑賞向き。市バスで西賀茂方面へ。
  3. 船岡山公園:北区紫野の小さな丘。街明かりに紛れず、左大文字を間近に見られる。
  4. 広沢池畔:嵯峨鳥居形を、池に映る逆さの火として鑑賞できる。池に置かれる灯籠流しと組み合わさる、嵯峨独特の風景がある。
  5. 京都駅ビル屋上・梅小路公園:商業施設や眺望スポットからの遠望。条件次第で複数山が望める。

京都市「京都五山送り火点火に伴うお願い」では、鑑賞時の交通規制、火床に近づかないこと、撮影機材の持ち込み制限、ゴミの持ち帰りなど、住民と観光客の双方に向けた要望が毎年公開される。送り火は観光行事である前に地元の祈りであり、保存会は無報酬・自費で薪を運び、火床を組んでいる。鑑賞する側のふるまいが、五山の継承を支える一部であることは忘れたくない。

福カレンダー編集部の歩き方 ─ お盆を閉じる火と暦のしおり

京都のお盆は、五山送り火だけで完結するわけではない。

京都観光情報 KYOTOdesign「京都のお盆 京の七夕・大文字 五山送り火」が紹介する一連の行事を福カレンダーの視点で並べると、夏の京都は「8月7日・立秋の前後に火と水の祈りが集中する月」と読み解ける。立秋(暦解説はこちら)に始まり、お盆三日間に祖霊を迎え、送り火(本記事)でひと息つき、嵯峨の灯籠流しや化野念仏寺の千灯供養など八月下旬の追善行事へと連なっていく。

そして、送り火の翌日8月17日は大安。新月から繊月へ移ろう月の下、京都は祭の余韻から日常へと戻り始める。お盆に迎えた精霊が冥府に戻った翌朝、もっとも縁起の良い六曜が用意されている──暦の配列もまた、季節の感情と並行して呼吸している。

5つの山に火が灯り、約30分で順に消えていく。点火から消火まで、五山すべてが燃え盛る時間は、実はわずか10分ほど。短い夜である。

しかし、その10分のために、保存会の人々は一年を準備に費やし、数百年にわたって火床を継いできた。山に書かれる文字は、字義そのものよりも、それを灯し続けてきた手の連なりを意味しているのかもしれない。

2026年8月16日、新月直後の闇深い夜に、五つの火がふたたび京都を取り囲む。鴨川堤で見上げるなら、火が灯った瞬間に「ああ、夏が往く」と一度だけ呟いてみるとよい。送り火の本来の役割──夏という季節そのものを送る──が、その短い言葉に宿る。福カレンダー編集部は、京都の夜空に書かれる五つの文字を、暦の節目として今年も静かに見守りたい。


参考リンク

  • 京都市公式 京都観光Navi「京都五山送り火」
  • 京都市公式 京都観光Navi「京都五山送り火 深く知る」
  • 京都市「京都五山送り火点火に伴うお願い」
  • 京都新聞デジタル「五山送り火 送り火とは」
  • 国立天文台暦計算室 暦要項 2026年
  • Wikipedia「五山送り火」
  • 京都倶楽部「五山の送り火 大文字・左大文字・妙法・鳥居・船形」
  • 京都観光情報 KYOTOdesign「京都のお盆 京の七夕・大文字 五山送り火」

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  2. 2.2026年の暦で読む8月16日 ─ 仏滅・繊月の夜
  3. 3.五山と点火順 ─ 20時00分から20時20分までの五分刻み
  4. 4.鑑賞スポットと夜の歩き方
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