立秋の食べ物・旬の食材ガイド
立秋(りっしゅう)
暦の上では秋、初秋の味覚が登場

立秋は二十四節気のひとつ。暦としての意味や過ごし方は立秋の意味と過ごし方 →をご覧ください。
立秋の旬の食材
梨(梨)
幸水・豊水など早生品種が出回る。みずみずしくシャリシャリとした食感。
いちじく(無花果)
夏から秋にかけてが旬。「不老長寿の果物」とも呼ばれる。
枝豆(枝豆)
まだまだ旬が続く。特に「だだちゃ豆」は立秋の頃が最高。
すだち(酢橘)
徳島の特産。秋刀魚や焼き魚に欠かせない。初秋の香りの代表。
縁起の良い食べ物・行事食
残暑見舞いの手土産
立秋以降は「暑中見舞い」から「残暑見舞い」に変わる。季節の果物を贈る習慣。
暦の秋と真夏の狭間で
立秋は、二十四節気の第13番目にあたる節気です。暦の上ではこの日から「秋」が始まりますが、実際には一年で最も暑い時期の真っただ中。気温35度を超える猛暑日も珍しくなく、「秋」という言葉との乖離に戸惑う方も多いでしょう。
しかし日本人は古来、この「暦と実感のずれ」を楽しむ感性を持っていました。まだ汗ばむ季節に、ふと秋の食材を見つけて季節の先取りを味わう ── それが立秋の食卓の醍醐味です。

残暑見舞いと食の贈答文化
立秋を境に、「暑中見舞い」は「残暑見舞い」へと切り替わります。この慣習は単なるマナーではなく、食文化とも深く結びついています。
江戸時代から続く「お中元」の風習では、立秋前後が贈答のピーク。夏の疲れを癒やす果物や涼味のある食品が好まれました。現代でも、この時期に旬を迎える梨やぶどうの詰め合わせは、残暑見舞いの定番です。
「暑さの中に秋の気配を届ける」という心遣いは、日本ならではの季節感覚と言えるでしょう。
梨 ── 「百果の宗」が語る歴史
梨は中国では「百果の宗(ひゃっかのそう)」、すなわち果物の長と称えられてきました。日本でも弥生時代の遺跡から種が出土しており、日本人と梨の付き合いは二千年以上に及びます。
「梨」の字は「利(り)」に通じるため、古くから縁起の良い果物とされてきました。一方で「無し」に通じるという語呂合わせから、お見舞いの場では避けるという風習も。この相反する捉え方自体が、日本の言霊文化の豊かさを表しています。
立秋の頃に出回り始める「幸水」は、みずみずしい甘さとシャリシャリとした食感が特徴。残暑の疲れた体を潤してくれる、まさに季節の恵みです。
だだちゃ豆 ── 庄内平野が育んだブランド
山形県鶴岡市特産の「だだちゃ豆」は、立秋前後のわずか数週間だけ楽しめる夏の宝石です。「だだちゃ」とは庄内弁で「お父さん」の意味。かつて殿様が「この枝豆はどこのだだちゃが作ったのか」と尋ねたという逸話が名前の由来とされています。
一般的な枝豆と比べて小粒で茶色がかった見た目ですが、茹でたときに立ちのぼる独特の香ばしい香りと、噛むほどに広がる濃厚な甘みは別格。この味わいは庄内平野の砂質土壌と、日本海から吹く湿った風、そして地元農家が代々守り継いできた在来種の力によるものです。
地元では「だだちゃ豆が届いたら夏本番」と言われ、ビールのお供としてだけでなく、家族団らんの食卓の主役にもなります。
すだち ── 徳島が誇る香酸柑橘
立秋の頃から出回るすだちは、徳島県の特産品。全国生産量の実に98%が徳島県産です。
すだちの「す」は「酢」、「だち」は「橘(たちばな)」に由来し、酢の代わりに使われる柑橘という意味を持ちます。徳島では冷奴にも味噌汁にも、何にでもすだちを搾る文化が根付いており、「すだちがなければ食事が始まらない」とまで言われます。
特に秋刀魚や松茸との相性は絶品。これからの秋の食卓で、すだちは脇役でありながら主役級の存在感を発揮します。爽やかな香りが、残暑の重い空気を一瞬で秋色に変えてくれるのです。
立秋の食卓がつなぐもの
立秋の食材には「夏の名残」と「秋の走り」が共存しています。いちじくの蜜のような甘さ、冬瓜(とうがん)のさっぱりとした清涼感、そしてすだちの鮮烈な香り。暑さの中に秋を先取りする食卓は、日本人が四季と向き合ってきた知恵の結晶です。
暦は体感より少し先を歩いています。その「少し先」を食で味わうことが、季節を丁寧に暮らすということなのかもしれません。
この記事に関連するおすすめ広告

旬野 椿旬と食の歳時記
旬の食材と暦の関わりを、五感に訴える文章で届ける食の歳時記編集者。二十四節気に寄り添った食卓の提案から、旬の素材の選び方・保存法まで、暦を「食べる」楽しさを伝えている。
この編集者の記事を見る →この記事について
本記事は一般的な暦の知識や伝統的な解釈に基づいています。 占いの結果を保証するものではありません。最終的な判断はご自身でお願いします。
免責事項を読む →福カレンダーでは、暦に関するコンテンツを正確かつ分かりやすくお届けするよう努めています。
編集方針について →参考情報:暦注・民俗資料、公的機関の暦情報を参考に編集部が整理しています。
他カテゴリの関連記事
旬の食材の関連記事
あわせて読みたい
他のカテゴリの知識も学んでみませんか?






