六十干支(ろくじっかんし)ガイド ─ 甲子から癸亥まで、十干×十二支で巡る60周期の象意と暦への組み込み方

この記事でわかること
六十干支(ろくじっかんし)は十干10種と十二支12種を組み合わせた60の周期で、年・月・日・刻のすべてを記す暦の骨格である。殷代の甲骨文から日本暦まで継承された60の象意、還暦・四柱推命への展開、2026年丙午年に6回めぐる甲子の暦データを研究家視点で読み解く。
目次
「干支(えと)」と問われたとき、思い浮かべるのは十二支の動物列だろう。しかし暦の本体は、十干と十二支を組み合わせた**六十干支(ろくじっかんし)**である。甲子(きのえね)にはじまり癸亥(みずのとい)に終わる60の組み合わせは、年・月・日・刻のすべてに重ねられて、4つの干支が同時に走る四重の暦を編み上げる。
福カレンダーの暦データを 2026 年の枠で並べると、6 回の甲子日が等間隔で現れる――2 月 19 日、4 月 20 日、6 月 19 日、8 月 18 日、10 月 17 日、12 月 16 日。これは六十干支が 60 日でひと巡りする宇宙のリズムが、私たちの日々のすぐ隣で淡々と進んでいることを示している。本記事では、その 60 周期の正体と五行の分布、丙午(ひのえうま)の年に巡る甲子の暦、そして 60 年で一周する還暦の意味までを、研究家の視点で順に解きほぐす。
天は十干をもって幹とし、地は十二支をもって枝とす。幹枝あいまじわりて、六十の名を成す。 ──『五行大義』巻五(隋・蕭吉撰、6世紀末)の趣旨を要約
幹と枝が組む六十周期 ─ なぜ 120 ではなく 60 か
六十干支は十干(甲・乙・丙・丁・戊・己・庚・辛・壬・癸の 10 種)と十二支(子・丑・寅・卯・辰・巳・午・未・申・酉・戌・亥の 12 種)の組み合わせから成る。単純に掛け算をすれば 10×12 = 120 通りとなりそうだが、実際には60 通りしか存在しない。
理由は十干と十二支の陰陽の整合にある。十干は順に陽・陰・陽・陰…と並び、十二支もまた子(陽)・丑(陰)・寅(陽)・卯(陰)…と陰陽が交互する。両者を順に重ねていくと、陽の十干は必ず陽の十二支と、陰の十干は必ず陰の十二支と結ばれる。たとえば「甲(陽の木)」が組むのは「子・寅・辰・午・申・戌」という 6 種の陽の十二支に限られ、「甲丑」「甲卯」といった陽陰混在の組み合わせは存在しない。
その結果、(10×12)÷2 = 60 通りに収斂する。10 と 12 の最小公倍数 60 が周期となり、61 日目には再び甲子に戻る。これが六十干支のからくりであり、後述する還暦(数え 61 歳の祝い)の根拠でもある。
殷代(紀元前 14 世紀頃)の甲骨文には、すでに六十干支による日付の刻みが現れている。中国最古級の記録体系として、日付・時刻・年代を表す座標軸の役割を担い、6 世紀の暦法伝来とともに日本へ渡って和暦の核となった(参考: Wikipedia「干支」 /国立国会図書館デジタルコレクション で『暦法新書』『暦の百科事典』ほか暦法資料が閲覧できる)。
60 通りの組み合わせ表 ─ 甲子から癸亥までの配列
六十干支は順に並べると次のような周期になる。十干が 10 個、十二支が 12 個なので、10 日経つごとに十干だけが先に一周し、十二支が 2 個ずれていく構造になる。下表は 60 干支を 10 干ごとの 6 区分でまとめたものである。
| 区分 | 番号 | 六十干支 |
|---|---|---|
| 第 1 旬 | 01–10 | 甲子・乙丑・丙寅・丁卯・戊辰・己巳・庚午・辛未・壬申・癸酉 |
| 第 2 旬 | 11–20 | 甲戌・乙亥・丙子・丁丑・戊寅・己卯・庚辰・辛巳・壬午・癸未 |
| 第 3 旬 | 21–30 | 甲申・乙酉・丙戌・丁亥・戊子・己丑・庚寅・辛卯・壬辰・癸巳 |
| 第 4 旬 | 31–40 | 甲午・乙未・丙申・丁酉・戊戌・己亥・庚子・辛丑・壬寅・癸卯 |
| 第 5 旬 | 41–50 | 甲辰・乙巳・丙午・丁未・戊申・己酉・庚戌・辛亥・壬子・癸丑 |
| 第 6 旬 | 51–60 | 甲寅・乙卯・丙辰・丁巳・戊午・己未・庚申・辛酉・壬戌・癸亥 |
旬(じゅん)は 10 日のかたまりを意味し、暦学では六十干支の区切りとしてこの呼び名が使われる。各旬の頭は必ず「甲」、終わりは必ず「癸」で、十二支のほうは旬ごとに 2 個ずつずれていく。たとえば第 1 旬は子から酉、第 2 旬は戌から未、と巻き戻るように見えるが、これは十干と十二支の長さの差から生じる自然な現象である。
五行で読む六十干支の分布 ─ 木火土金水が各 12 干支
六十干支は陰陽五行の視点でも整理できる。十干は木・火・土・金・水の五行に 2 干ずつ配分されるため、六十干支も五行に均等に 12 ずつ振り分けられる。一覧で示せば次の通り。
- 木の 12 干支: 甲子・乙丑・甲戌・乙亥・甲申・乙酉・甲午・乙未・甲辰・乙巳・甲寅・乙卯(甲乙が骨格)
- 火の 12 干支: 丙寅・丁卯・丙子・丁丑・丙戌・丁亥・丙申・丁酉・丙午・丁未・丙辰・丁巳(丙丁が骨格、丙午は陽火重複)
- 土の 12 干支: 戊辰・己巳・戊寅・己卯・戊子・己丑・戊戌・己亥・戊申・己酉・戊午・己未(戊己が骨格)
- 金の 12 干支: 庚午・辛未・庚辰・辛巳・庚寅・辛卯・庚子・辛丑・庚戌・辛亥・庚申・辛酉(庚辛が骨格、庚申は金重複)
- 水の 12 干支: 壬申・癸酉・壬午・癸未・壬辰・癸巳・壬寅・癸卯・壬子・癸丑・壬戌・癸亥(壬癸が骨格)
このうち、十干と十二支の五行が二重に重なる組み合わせは特別視されてきた。代表例が丙午――陽の火(丙)と陽の火(午)が並ぶ「重火(じゅうか)」、そして庚申――陽の金(庚)と陽の金(申)が並ぶ「重金(じゅうきん)」である。前者が60 年に一度の丙午年に投影された迷信を、後者が「三尸の虫」伝承と庚申待の風習を生んだ背景には、五行が二重に作用する日に古代人が感じ取った緊張の気配がある。
五行の相生(じょうしょう)と相剋(そうこく)は六十干支の上にも乗っており、干支と九星気学の違いで扱ったように、四柱推命や算命学はこの 60 周期を縦横に読み解く道具として整備された。
2026 年丙午の暦で巡る六回の甲子
2026 年は丙午の年。年柱が陽火重複となるなか、日柱では 60 日ごとに甲子日が訪れる。福カレンダーの暦マスター(国立天文台暦象年表 に準拠)から実データを抜くと、2026 年の甲子日は 6 回である。
| 回 | 日付 | 曜日 | 六曜 | 月相 | 重なる吉日・節気 |
|---|---|---|---|---|---|
| 第 1 | 2026-02-19 | 木 | 先負 | 新月 | 雨水 |
| 第 2 | 2026-04-20 | 月 | 赤口 | 繊月 | 一粒万倍日・穀雨 |
| 第 3 | 2026-06-19 | 金 | 先負 | 繊月 | ─ |
| 第 4 | 2026-08-18 | 火 | 赤口 | 繊月 | 一粒万倍日 |
| 第 5 | 2026-10-17 | 土 | 先負 | 三日月 | ─ |
| 第 6 | 2026-12-16 | 水 | 赤口 | 三日月 | 天赦日・一粒万倍日 |
注目すべきは年末の 12 月 16 日――甲子日に天赦日と一粒万倍日が同時に重なる、2026 年で 1 度しか起きない三重吉日である。甲子は 60 日周期の起点、天赦日は年に 7 日前後しかない神祇の最大吉日、一粒万倍日は一粒の籾が万倍に実る増殖の象徴。三者が同じ一日に出会うのは、まさに 60 と 30 と 365 のリズムが綴る稀な合奏である(甲子の日 と2026 年 干支重なる日カレンダー で個別のリズムも追っている)。
干支は今日が何の日かを語る暦ではない。今日がどの「気」のなかにあるかを示す座標である。 ──野分蓮(本記事筆者・福カレンダー編集部)
なお 4 月 20 日の甲子は二十四節気の穀雨と同日。種まきの雨が降る節気と、60 日周期の起点が一致するのは偶然ではあるが、農事暦の感性として読み合わせるなら「新しい流れの種を蒔く日」と受け取れる。
還暦と人生暦 ─ 60 年で暦が一周する意味
六十干支は日だけではなく年にもめぐる。生まれ年の干支と同じ干支が再び訪れるのは数え 61 歳――これが還暦である。1966 年の丙午生まれが 2026 年に再び丙午を迎える、というのが今年の還暦のかたちだ。
還暦祝いに赤い頭巾と頭巾が用いられるのは、暦が一周して再び生まれた赤子に戻る、という象徴的な意味合いをもつ。生命のリズムと暦のリズムが 60 年に一度同期する瞬間として、日本文化が大切に守ってきた節目である(文化庁 の文化財・無形民俗の解説でも、還暦・古希といった算賀の風習が紹介されている)。
四柱推命や算命学では、生年・生月・生日・生時の四つの柱がそれぞれ六十干支で表され、4 つの干支から人の気質や運命のリズムを読み解く。年柱と月柱、月柱と日柱、といった柱どうしの関係も、すべて六十干支の組み合わせの中で意味が定まる。これらは干支とは何か の延長線上にある暦の応用学であり、六十干支を知ることで初めて入り口に立てる世界である。
結 ─ 60 本の幹枝が織りなす暦
ここまでで、六十干支が単なる「干支の表」ではなく、60 という数字に支えられた暦の骨格であることが見えてきたはずだ。10 種の天干が幹となり、12 種の地支が枝となって、両者が陰陽の整合を保ちながら 60 のかたちに収斂する。日に巡れば 60 日、年に巡れば 60 年。私たちの誕生日も、今日の日付も、その 60 の連なりのどこかに必ず座標を持っている。
福カレンダーでは毎日の暦に日干支を併記している。明日の干支が何になるかを覗いてみるとき、それは単なる組み合わせではなく、60 本の幹枝が織りなす長い長い暦の上に置かれた、自分の今日の位置を確かめる行為でもある。
参考文献・参考資料
- Wikipedia 日本語版「干支」(六十干支の構造、陰陽の整合、各干支の象意)
- 国立国会図書館デジタルコレクション(『暦法新書』『暦の百科事典』『五行大義』ほか暦法・干支関連の原典資料)
- 暦計算の出典: 国立天文台暦計算室『暦象年表』および福カレンダーの暦マスター(NAOJ 検証済、1960–2027 年が verified-naoj、それ以外が verified-calculated)
- 関連書籍: 岡田芳朗『日本の暦』新人物往来社(暦法と六十干支の章を参照)
参考文献・出典
- 十二支 (Wikipedia 日本語版)— Wikipedia(参照: 2026-05-16)
- 十干 (Wikipedia 日本語版)— Wikipedia(参照: 2026-05-16)
- 日本の暦 -国立国会図書館-— 国立国会図書館(参照: 2026-05-16)
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野分 蓮干支と暦の研究家
- 十干十二支
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十干十二支・二十四節気・自然と暦の関わりを、歴史と科学の両面から掘り下げる研究家肌の編集者。古文書の記述と現代の気象データを突き合わせるような、知的好奇心を刺激する考察記事を得意とする。
この編集者の記事を見る →この記事について
本記事は一般的な暦の知識や伝統的な解釈に基づいています。 占いの結果を保証するものではありません。最終的な判断はご自身でお願いします。
免責事項を読む →福カレンダーでは、暦に関するコンテンツを正確かつ分かりやすくお届けするよう努めています。
編集方針について →参考情報:暦注・民俗資料、公的機関の暦情報を参考に編集部が整理しています。
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