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干支

十干(じっかん)完全ガイド ─ 甲乙丙丁戊己庚辛壬癸の象意と陰陽五行で読み解く干支の本体

野分 蓮干支と暦の研究家·2026.05.11 更新·約10分
十干(じっかん)完全ガイド ─ 甲乙丙丁戊己庚辛壬癸の象意と陰陽五行で読み解く干支の本体

この記事でわかること

「干支」と聞いて思い浮かべるのは十二支だが、本体は十干(じっかん)である。甲乙丙丁戊己庚辛壬癸の10種は陰陽五行と結びつき、十二支と組み合わさって60日・60年を巡る。十干の象意と読み方、2026年丙午年への接続まで研究家視点で解説する。

目次
  1. 1.十干とは何か ─ 干支の「幹」と「枝」
  2. 2.陰陽五行と十干 ─ 木火土金水を二つに分ける思想
  3. 3.十干と十二支が結ぶ「六十干支」 ─ なぜ 60 で巡るのか
  4. 4.2026 年丙午の暦で見る十干 ─ 5 月の日柱を読む
  5. 5.十干を生活に活かす ─ 自分の生まれ年の十干を知る
  6. 6.結 ─ 十干は暦の幹、十二支は暦の枝

「干支(えと)」と問われたとき、わたしたちはまず十二支――子(ね)、丑(うし)、寅(とら)……と数え上げてしまう。しかし本来、干支とは**「十干」と「十二支」を組み合わせた六十干支(ろくじっかんし)の総称であり、十二支は半分でしかない。残るもう半分、しかも先に登場する「十干(じっかん)」**こそ、暦の幹をなす本体である。

福カレンダーの暦データを眺めていると、たとえば 2026 年 5 月 16 日は「庚寅(かのえとら)」、5 月 17 日は「辛卯(かのとう)」と、毎日異なる十干十二支の組み合わせが割り当てられていることに気づく。十干は十二支と肩を並べる――いや、本来は十干が先に立ち、十二支がそれに従う。十干を知らずして干支を語ることはできない。

本記事では干支研究の入り口として、十干 10 種の象意、陰陽五行との対応、そして 2026 年丙午(ひのえうま)の暦に十干がどう現れているかまで、研究家視点で順を追って解説する。

五行は天地のあいだに行(めぐ)り、十干はその気を分ける軸である。 ──『五行大義』巻一(隋・蕭吉撰、6 世紀末)の趣旨を要約

十干とは何か ─ 干支の「幹」と「枝」

「干支」は漢字で書くと「幹枝」に通じる。古代中国では、天の気を 10 に分けたものを「天干(てんかん)」、地の気を 12 に分けたものを「地支(ちし)」と呼んだ。天干 10 種が幹で、地支 12 種が枝。幹と枝が組み合わさって六十干支となり、日、月、年、刻のすべてが干支で記される。

殷代の甲骨文(紀元前 14 世紀頃)にはすでに六十干支の表記が現れており、これは中国最古級の記録体系である。日本へは 6 世紀頃に伝来し、暦法の中核として千数百年にわたり用いられてきた(参考: Wikipedia「十干」)。

十干の 10 種は次の通り、順序が決まっている。

#十干読み(音)訓読み陰陽五行
1甲こうきのえ陽木
2乙おつきのと陰木
3丙へいひのえ陽火
4丁ていひのと陰火
5戊ぼつちのえ陽土
6己きつちのと陰土
7庚こうかのえ陽金
8辛しんかのと陰金
9壬じんみずのえ陽水
10癸きみずのと陰水

訓読みは「○の兄(え)/○の弟(と)」が縮まったもので、たとえば「きのえ」は「木の兄」、「きのと」は「木の弟」を意味する。「兄弟」のメタファーで陽と陰を表しており、ここに陰陽思想がはっきりと刻まれている。

陰陽五行と十干 ─ 木火土金水を二つに分ける思想

十干が 10 種に整理された背景には、陰陽五行説がある。五行――木・火・土・金・水――は古代中国で世界を構成する 5 つの要素とされ、相生(じょうしょう)と相剋(そうこく)の関係で循環する(文化庁『日本人と五行思想』参考資料 で公開された一般解説に基づく)。

十干は五行のそれぞれを「兄=陽」「弟=陰」の二つに分けて 10 種としている。一覧で示すと次の通りである。

  1. 木の兄弟: 甲(きのえ・大樹のような剛直)/乙(きのと・草のようなしなやかさ)
  2. 火の兄弟: 丙(ひのえ・太陽の烈火)/丁(ひのと・灯火の繊細)
  3. 土の兄弟: 戊(つちのえ・山岳の重厚)/己(つちのと・畑土の柔らか)
  4. 金の兄弟: 庚(かのえ・刀剣の鋭利)/辛(かのと・宝玉の輝き)
  5. 水の兄弟: 壬(みずのえ・大河の奔流)/癸(みずのと・雨露の潤い)

陽の十干は外向き・能動・剛、陰の十干は内向き・受動・柔と読まれる。たとえば同じ「火」でも、丙日は積極的な行動と表現に向く一方、丁日は内省・学び・繊細な仕事に向くと伝統的に解釈されてきた。

このペアリングは現代の四柱推命や九星気学にも継承されている。当サイトの干支と九星気学の違いでも触れているが、十干は四柱推命の柱の上段を担う最も重要な要素である。

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十干と十二支が結ぶ「六十干支」 ─ なぜ 60 で巡るのか

十干(10)と十二支(12)の最小公倍数は 60。両者を組み合わせると、ちょうど 60 通りの干支ができあがり、61 日目には再び「甲子(きのえね)」に戻る。これが六十干支――還暦(数え 61 歳)の由来でもある。

組み合わせの規則は単純で、十干と十二支の双方を 1 つずつ進めていく。両者を順に並べると次のような配列になる。

01 甲子(きのえね)   02 乙丑(きのとうし)  03 丙寅(ひのえとら)
04 丁卯(ひのとう)   05 戊辰(つちのえたつ)06 己巳(つちのとみ)
07 庚午(かのえうま)08 辛未(かのとひつじ)09 壬申(みずのえさる)
10 癸酉(みずのととり) ...                  60 癸亥(みずのとい)

ここで重要なのは、十干が偶数番(陽)と奇数番(陰)に分かれるため、十二支との組み合わせも陽は陽、陰は陰でしか結ばれないことである。たとえば「甲(陽の木)」は「子・寅・辰・午・申・戌」という陽の十二支としか組まないため、「甲丑」「甲卯」などの組み合わせは存在しない。

この性質ゆえに、六十干支のなかで意味の濃い「特定の組み合わせ」が現れる。代表例を挙げる。

  • 甲子(きのえね): 60 日サイクルの起点。新しい始まりの吉日とされ、大黒天の縁日でもある
  • 庚申(かのえさる): 庚と申がともに金の気を帯び、三尸の虫が天に昇るとされる夜。庚申待の風習を生んだ。庚申待とはで詳述
  • 己巳(つちのとみ): 弁財天の縁日。60 日に 1 度の金運デーとして信仰される
  • 庚午(かのえうま): 金気と火気が出会う日。武家社会では緊張の日と見なされた

福カレンダーが 2026 年 干支重なる日カレンダー でまとめているように、年・月・日の三柱がそろう「同柱日」も六十干支の組み合わせから自然に導かれる暦のリズムである。

2026 年丙午の暦で見る十干 ─ 5 月の日柱を読む

2026 年は**丙午(ひのえうま)**の年。「丙」は陽の火、「午」は陽の火の十二支――両者ともに火の気を帯びるため、五行の力が極端に偏る「重火(じゅうか)」の年とされる。詳しくは丙午の女や丙午の夏で歴史的経緯と現代の読み方を扱った。

ここでは福カレンダーの暦データから 2026 年 5 月の日干支を抜き出し、十干の流れを見てみよう。

日付日干支十干(陰陽五行)特記
5/4戊寅戊・陽の土天赦日・寅の日
5/16庚寅庚・陽の金寅の日(金気が虎に乗る)
5/17辛卯辛・陰の金新月・一粒万倍日
5/19癸巳癸・陰の水巳の日(水が蛇に流れる)
5/20甲午甲・陽の木天赦日
5/31乙巳乙・陰の木巳の日・ブルームーン

10 日ごとに同じ十干が回る――これは十干が 10 種しかないからである。「庚寅」から 10 日経った「庚子(5/26)」はまた庚の日になる。福カレンダーの月別暦を開いて日干支の列を眺めると、十干が淡々と巡る様子が一目でわかる。

干支は今日が何の日かを語る暦ではない。今日がどの「気」のなかにあるかを示す座標である。 ──野分蓮(本記事筆者・福カレンダー編集部)

2026 年 5 月 20 日は天赦日にあたるが、日干支は「甲午」――陽の木が陽の火(午)に育てられる構図である。木は火を生む(相生)から、この日は陽気が増大しやすい日とも読める。福カレンダーの暦データと十干の象意を重ねて読むと、単なる「吉日」を超えた立体的な暦理解が可能になる。

十干を生活に活かす ─ 自分の生まれ年の十干を知る

十干の最も身近な使い方は、自分の生まれ年の十干を確認することである。生まれ年の干支は四柱推命の「年柱」となり、その人の根本的な気質を示すとされる(解釈は学派により異なる)。

調べ方は次の通り。

  1. 西暦の下 1 桁を見る
  2. 下 1 桁が 4 → 甲、5 → 乙、6 → 丙、7 → 丁、8 → 戊、9 → 己、0 → 庚、1 → 辛、2 → 壬、3 → 癸
  3. ただし旧暦・節入りの関係で、2 月 4 日(立春)前生まれは前年扱いになる流派が多い

たとえば 1986 年生まれは下 1 桁 6 → 丙(ひのえ)。1990 年生まれは下 1 桁 0 → 庚(かのえ)。立春前の生まれであれば前年に繰り上がる。

十干を知ったうえで、自分の「兄弟」が同じ五行の人とは気が合いやすい、相剋関係の五行を持つ人とは緊張しやすい――そういった見立てが古来語られてきた。あくまで参考にとどめ、絶対視はしないでほしい。詳しくは干支の相性も参照されたい。

結 ─ 十干は暦の幹、十二支は暦の枝

ここまで読み進めて、十干が単なる「もう半分の干支」ではなく、暦の幹そのものであることがお分かりいただけたと思う。十二支は親しみやすい動物に置き換えられて広まったが、十干は陰陽五行の思想を内に秘めたまま、千数百年にわたって日本の暦を支えてきた。

福カレンダーでは、日々の暦データに十干十二支を併記している。今日が何の干支の日かを知ることは、今日が宇宙のリズムのどこにあるかを知ることでもある。十二支だけでなく、その上に立つ十干にも目を向けてみてほしい。きっと暦の景色が少し変わって見える。

参考までに、十二支の覚え方や読み方は十二支の覚え方、干支全般の入門は干支とはで扱っているので、合わせて読んでいただけると幸いである。

参考文献・参考資料

  • Wikipedia 日本語版「十干」(陰陽五行と十干の対応、訓読みの語源)
  • 国立国会図書館デジタルコレクション(『五行大義』『暦の百科事典』等の原典・解説書)
  • 暦計算の出典: 国立天文台暦計算室『暦象年表』および福カレンダーの暦マスター(NAOJ 検証済)
  • 関連書籍: 岡田芳朗『日本の暦』新人物往来社(暦の歴史と干支の章を参照)

📚参考文献・出典

  1. 十二支 (Wikipedia 日本語版)— Wikipedia(参照: 2026-05-16)
  2. 十干 (Wikipedia 日本語版)— Wikipedia(参照: 2026-05-16)
  3. 日本の暦 -国立国会図書館-— 国立国会図書館(参照: 2026-05-16)

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野分 蓮干支と暦の研究家

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十干十二支・二十四節気・自然と暦の関わりを、歴史と科学の両面から掘り下げる研究家肌の編集者。古文書の記述と現代の気象データを突き合わせるような、知的好奇心を刺激する考察記事を得意とする。

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