寒露の食べ物・旬の食材ガイド
寒露(かんろ)
冷たい露が降りる頃、秋の味覚が深まる

寒露は二十四節気のひとつ。暦としての意味や過ごし方は寒露の意味と過ごし方 →をご覧ください。
寒露の旬の食材
柿(柿)
甘柿の最盛期。富有柿・次郎柿が出回る。
きのこ類
しいたけ、まいたけ、しめじなど秋のきのこが最盛期。
鮭(鮭)
別名:秋鮭産卵のため川を遡上する秋鮭。身が引き締まった赤い身が美しい。
れんこん(蓮根)
秋から冬が旬。穴が開いた形から「先が見通せる」縁起物。
縁起の良い食べ物・行事食
秋祭りの食
各地で収穫祭が行われる季節。神様に新米や秋の実りを奉納し、豊作に感謝する。
冷たい露が降りる頃、大地は実りに満ちる
寒露は「露が冷たく感じられる」季節。白露の露が凍る一歩手前まで冷え込み、秋の深まりを肌で感じる時期です。
この頃、日本各地で秋祭りや収穫祭が催されます。新嘗祭(にいなめさい)の前段として、地域の氏神様に収穫を報告し感謝する祭り。食と信仰が一体となるこの季節は、日本の農耕文化の原点が最も鮮やかに見える時期でもあります。

れんこん ── 「見通しが良い」縁起食材
寒露の頃かられんこんが旬を迎えます。穴の開いたれんこんは「先が見通せる」として、古くから縁起の良い食材とされてきました。おせち料理に欠かせないのも、新年の見通しを祈願する意味があるからです。
れんこんが日本に伝わったのは奈良時代。当初は観賞用の蓮(はす)として渡来し、食用として栽培が広まったのは鎌倉時代以降とされています。蓮の花は仏教で清浄の象徴であり、「泥中の蓮」という言葉に象徴されるように、濁った泥の中からまっすぐに伸びて美しい花を咲かせる姿は、悟りの象徴でもあります。
その根であるれんこんもまた、泥の中で育ちながら真っ白な肉質を持つ。穴を通して向こうが見える構造は、邪念のない清らかな心を表すとも解釈されます。食べるだけで縁起が良い、日本の食材の中でも屈指の「吉祥食材」です。
煮物、きんぴら、天ぷら、酢れんこん。シャキシャキとした食感は秋の食卓に小気味良いアクセントを添えます。
秋鮭 ── 命をかけた遡上の物語
寒露の頃、北海道や東北の河川に秋鮭が遡上を始めます。海で3〜5年を過ごした鮭が、生まれた川に戻り、産卵して命を終える。この壮大な生命のサイクルは、日本人の自然観に大きな影響を与えてきました。
アイヌの人々は鮭を「カムイチェプ(神の魚)」と呼び、最初に遡上してきた鮭を丁重に迎える儀式を行いました。和人社会でも、秋鮭は「年取り魚」として年末年始に欠かせない食材。特に新潟の「塩引き鮭」は、軒先に吊るされた鮭が冬の風物詩です。
秋鮭の身は、夏に遡上するトキシラズ(時鮭)に比べて脂は控えめですが、旨みが凝縮されており、ちゃんちゃん焼きや石狩鍋など、北海道の郷土料理の主役を務めます。いくら(筋子)もこの時期ならでは。醤油漬けにしたいくらを炊きたてのご飯にのせた「はらこ飯」は、宮城県亘理町の秋の味覚の代表格です。
きのこ狩り ── 山の恵みを分かち合う文化
寒露の頃は、里山のきのこが最盛期を迎えます。椎茸、舞茸、なめこ、しめじ、平茸 ── 日本のきのこ文化の豊かさは世界でも類を見ません。
「舞茸」の名前の由来は、見つけた人が嬉しさのあまり舞い踊ったから、という説が有名です。かつて松茸と並ぶ高級食材だった舞茸は、その香りと歯ごたえから「きのこの王様」と呼ばれました。現代では栽培技術の発達で身近になりましたが、天然の舞茸は今なお幻の食材です。
きのこ狩りは単なるレジャーではなく、山の恵みを地域で分かち合う営みでした。「山の神様からの授かりもの」という感覚は、里山と共生してきた日本人の自然観の表れです。
もみじ鍋 ── 紅葉と食の粋な関係
寒露を過ぎると、山々が紅葉に染まり始めます。この紅葉と食を結びつけた粋な文化が「もみじ鍋」です。
もみじ鍋とは鹿肉の鍋のこと。鹿肉を直接「鹿」と呼ぶのを避け、「紅葉(もみじ)」と呼ぶのは、花札の「鹿に紅葉」の絵柄に由来します。同様に、猪肉は「牡丹(ぼたん)」、馬肉は「桜(さくら)」、鶏肉は「柏(かしわ)」と、植物の名で呼ぶ習慣がありました。
仏教の影響で肉食が建前上禁じられていた時代、「これは肉ではなく植物だ」という名目で食べるための言い換え。この「見て見ぬふりの食文化」は、日本人の建前と本音の使い分けを食の世界にも映し出しています。
収穫の喜びを味わう食卓
寒露の食卓は、一年で最も豊かな時期と言えるかもしれません。山の幸、海の幸、里の幸がすべて揃い、感謝の気持ちとともにいただく。収穫祭の賑わいの中で、今年も自然の恵みに生かされていることを実感する ── それが寒露の食の本質です。
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旬野 椿旬と食の歳時記
旬の食材と暦の関わりを、五感に訴える文章で届ける食の歳時記編集者。二十四節気に寄り添った食卓の提案から、旬の素材の選び方・保存法まで、暦を「食べる」楽しさを伝えている。
この編集者の記事を見る →この記事について
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