秋分の食べ物・旬の食材ガイド
秋分(しゅうぶん)
昼夜が等しくなる秋の中日、実りの秋を味わう

秋分は二十四節気のひとつ。暦としての意味や過ごし方は秋分の意味と過ごし方 →をご覧ください。
秋分の旬の食材
栗(栗)
秋分の頃が収穫のピーク。日本の秋を代表する味覚。
さんま(秋刀魚)
脂のりが最高潮。秋分の食卓に欠かせない。
柿(柿)
早生品種が色づき始める。「柿が赤くなると医者が青くなる」と言われるほど栄養豊富。
新米
全国の主力品種が出揃う。新米の季節の本番。
縁起の良い食べ物・行事食
おはぎ
秋の彼岸に供える。秋に咲く萩の花にちなむ名前。つぶ餡で作るのが正式。ご先祖への感謝と供養の心。
昼と夜が等しくなる日、ご先祖と食を分かち合う
秋分は昼と夜の長さがほぼ等しくなる日。この日を中心とした前後3日間、合計7日間が「秋のお彼岸」です。
「彼岸」とは仏教用語で「あの世(彼方の岸)」を意味し、この世(此岸)との距離が最も近くなるのが春分と秋分だとされています。ご先祖様を偲び、お墓参りをし、そして供物をいただく。お彼岸の食文化は、死者との「共食」という日本独自の精神性に支えられています。

おはぎとぼた餅 ── 同じ菓子、違う名前の美学
お彼岸の供物として欠かせない「おはぎ」。春のお彼岸では「ぼた餅(牡丹餅)」と呼ばれるこの和菓子、実は基本的に同じものです。では、なぜ名前が変わるのでしょうか。
春のお彼岸に咲く「牡丹(ぼたん)」にちなんで「ぼた餅」、秋のお彼岸に咲く「萩(はぎ)」にちなんで「おはぎ」。花の名前で呼び分けるこの風習は、四季を愛でる日本人の感性そのものです。
さらに伝統的には、春のぼた餅はこし餡、秋のおはぎはつぶ餡で作るとされています。理由は小豆の収穫時期にあります。秋は新小豆が手に入るため、皮が柔らかくそのまま食べられる「つぶ餡」に。春は前年の小豆で皮が硬くなっているため、漉して「こし餡」にした、という実用的な知恵です。
小豆の赤い色には魔除けの力があるとされ、ご先祖様への供物にも、食べる人の厄除けにもなる。おはぎは信仰と実用が一体となった、日本の食文化の傑作です。
栗 ── 「勝ち栗」の縁起
秋分の頃、栗が最盛期を迎えます。栗は古くから「勝ち栗」として縁起物に数えられ、武士の出陣式では「打ち鮑(あわび)・勝ち栗・昆布(よろこぶ)」の三種が必ず供えられました。
「搗ち栗(かちぐり)」は本来、干した栗を臼で搗(つ)いて殻を取ったものを指す加工食品名でしたが、「勝ち」の字を当てて験担ぎに使うようになったのは室町時代以降とされています。
栗ご飯、栗きんとん、甘露煮。栗の調理法は多彩ですが、いずれも栗本来のほくほくとした甘みを生かすものばかり。特に秋分の頃の栗は糖度が高く、焼き栗にするだけで極上のおやつになります。
岐阜県中津川の「栗きんとん」は、この時期だけの季節限定品。栗と砂糖だけで作るシンプルな菓子ですが、秋分の頃の栗の甘みがあってこそ成り立つ味です。
柿 ── 「医者が青くなる」健康果実
「柿が赤くなると医者が青くなる」── この諺は、柿の栄養価の高さを端的に表しています。ビタミンCはみかんの約2倍、ビタミンAも豊富。秋の風邪予防に絶大な効果があるとされ、昔の人々は経験的にそのことを知っていました。
柿は奈良時代に中国から伝来し、日本全国に広まりました。「柿食へば鐘が鳴るなり法隆寺」という正岡子規の名句が示す通り、柿の風景は日本の秋の象徴です。
渋柿を干し柿にする知恵も見逃せません。渋みの原因であるタンニンを不溶化させることで甘みに変える。この技術は平安時代にはすでに確立されており、冬場の貴重な保存食でもありました。お彼岸の供物に干し柿を添える地域もあり、柿は秋の信仰と切り離せない果物です。
新米のおにぎり ── 秋の最高の贅沢
秋分の頃、全国の米どころで新米が出揃います。炊きたての新米で握ったおにぎりは、おかずなど要らない最高の贅沢。塩だけで握る「塩むすび」が、新米の甘みと香りを最も引き出す食べ方です。
「おむすび」の語源には、「結び」の神(むすびのかみ)に由来するという説があります。高御産巣日神(たかみむすびのかみ)と神産巣日神(かみむすびのかみ)は、万物を生み出す創造の神。米を握る行為に神の名を冠するあたりに、日本人の米への深い敬意が表れています。
お彼岸の食卓に込められた祈り
秋分の食卓は、感謝と祈りに満ちています。おはぎでご先祖様を偲び、栗で勝ち運を願い、柿で健康を祈り、新米で五穀豊穣に感謝する。食べることがそのまま祈りになる ── それが日本の秋の食文化の本質です。
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旬野 椿旬と食の歳時記
旬の食材と暦の関わりを、五感に訴える文章で届ける食の歳時記編集者。二十四節気に寄り添った食卓の提案から、旬の素材の選び方・保存法まで、暦を「食べる」楽しさを伝えている。
この編集者の記事を見る →この記事について
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