立春の食べ物・旬の食材ガイド
立春(りっしゅん)
春の訪れを告げる旬の味覚

立春は二十四節気のひとつ。暦としての意味や過ごし方は立春の意味と過ごし方 →をご覧ください。
立春の旬の食材
ふきのとう(蕗の薹)
雪解けとともに顔を出す春一番の山菜。独特の苦みが冬の体を目覚めさせる。
菜の花(菜花)
つぼみが膨らむ立春頃が食べ頃。ほろ苦さと甘みのバランスが最高。
にしん(鰊)
別名:春告魚北海道沿岸で産卵のため回遊し、脂がのって風味豊かになる。
白魚(白魚)
春の訪れを告げる透明な小魚。関東では隅田川の白魚漁が風物詩。
縁起の良い食べ物・行事食
うぐいす餅
春告鳥(うぐいす)を模した和菓子。きなこの緑色が春の訪れを祝う。
立春大福
立春の日に作られた生菓子をその日のうちに食べる縁起物。新しい春のエネルギーを取り込む。
立春朝搾り
立春の早朝に搾った日本酒。年に一度のめでたい新酒で春の門出を祝う。
暦の新年、食の新年——立春が持つ特別な意味
立春は二十四節気の第一番目であり、旧暦における「新しい年の始まり」です。節分の翌日にあたるこの日は、単なる季節の区切りではなく、日本人の食生活においても大きな転換点として古くから意識されてきました。
冬の間にため込んだ体の「陰」の気を払い、春の「陽」の気を迎え入れる——その媒介となるのが、立春ならではの食文化です。この時期に旬を迎える食材には、自然界の目覚めを象徴する力強い生命力が宿っています。

「立春大吉豆腐」——白い食べ物で邪気を払う
立春の日に豆腐を食べると邪気が祓われるという風習は、古くから全国各地に残っています。これを「立春大吉豆腐」と呼びます。
豆腐が選ばれた理由は、その白さにあります。白は古来より「清浄」「純潔」を象徴する色であり、新しい季節を清らかな心身で迎えるために白い食べ物を口にする習慣が生まれました。節分で厄を落とした翌日に白い豆腐を食べることで、心身をリセットし、新たな一年を清い状態で始めるという意味が込められています。
この「白い食べ物」の文化は、豆腐だけにとどまりません。白い餅、白米のおにぎり、大根の漬物なども、立春に好まれてきた食材です。
「立春朝搾り」——その年最初の縁起酒
日本名門酒会が展開する「立春朝搾り」は、立春の未明に搾ったばかりの生原酒をその日のうちに届けるという、酒造りと暦が結びついた現代の風物詩です。
この慣行は、古くからの「若水(わかみず)」——元旦に汲む最初の水が神聖とされた風習——と通じるものがあります。新しい年(暦年)の最初に造られた酒には特別な力が宿ると考えられ、それを立春の朝に味わうことで一年の開運を願うのです。
全国約40の蔵元が参加するこの取り組みは、地域の神社で祈祷を受けた後に出荷されるため、「縁起酒」としての性格をさらに強めています。
節分と立春の「食の接続」
節分に豆をまき、恵方巻を食べ、翌日の立春には豆腐と新酒で祝う——この二日間は、日本の食文化における最も凝縮された季節の儀式と言えます。
節分の「豆」は大豆であり、立春の「豆腐」もまた大豆から作られます。この連続性は偶然ではありません。大豆は「畑の肉」と呼ばれるほど栄養価が高く、冬から春への体の切り替えに必要なたんぱく質を補給する生活の知恵でもあったのです。
春告魚「にしん」が食卓に並ぶ理由
にしんは「春告魚(はるつげうお)」の異名を持ちます。北海道沿岸に産卵のために大群で押し寄せる「群来(くき)」は、かつて海が白く染まるほどの壮大な光景でした。この群来が訪れると、人々は「今年も春が来た」と安堵したのです。
江戸時代から明治にかけて、にしんは北海道の重要な水産資源であり、「にしん御殿」と呼ばれる豪邸が建つほどの富をもたらしました。にしんの昆布巻きや身欠きにしんの煮物は、この時代に全国に広まった食文化の名残です。
にしんは「二親(にしん)」の語呂合わせから、子孫繁栄の縁起物としても重宝されてきました。数の子(にしんの卵巣)がおせち料理の定番である理由も、ここにつながっています。
春の訪れを舌で感じる——苦みの食文化
立春前後に旬を迎えるふきのとうや菜の花には、独特の苦みがあります。日本では古来、「春は苦味を盛れ」という言い伝えがあり、冬の間に体にたまった老廃物を苦味のある野菜で排出するという考え方がありました。
これは現代の栄養学でも一定の裏付けがあります。山菜に含まれるポリフェノールやアルカロイドは、新陳代謝を促進する働きがあるとされています。厳しい冬を越えた体が、自然と春の苦味を欲する——それは暦と体が呼応している証なのかもしれません。
地域に残る立春の食の風習
立春の食文化は、地域によって独特の表情を見せます。
京都では、立春の朝に「大福茶(おおぶくちゃ)」を飲む風習が残っています。結び昆布と小梅を入れた煎茶で、新年の福を招く縁起物です。
東北地方では、「立春搗き(りっしゅんづき)」と呼ばれる餅つきの風習が一部地域に残り、つきたての白い餅を神棚に供えた後に家族で分け合います。
九州では、菜の花の辛子和えが「立春の一品」として食卓に上る家庭が多く、黄色い花と緑の茎のコントラストが春の到来を視覚的にも伝えてくれます。
立春の食卓は、冬の名残と春の気配が交差する、一年で最も繊細な季節の味覚を楽しめる場です。暦を意識しながら旬の食材を選ぶことで、日本の四季をより深く味わうことができるでしょう。
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この記事について
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