郡上おどり ─ 徹夜で踊る盆の夜、先祖供養の輪

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郡上おどり ─ 徹夜で踊る盆の夜、先祖供養の輪
岐阜県郡上八幡で7月から9月まで30夜以上にわたって踊り続けられる郡上おどり。お盆の4夜は夜通し踊る「徹夜おどり」となり、生者と死者が一つの輪で踊ると伝えられています。大暑からお盆を経て処暑に至るまで、ユネスコ無形文化遺産にも登録されたこの盆踊りの暦と開運の知恵をご紹介します。
岐阜県のほぼ中央、長良川の支流・吉田川が流れる小さな城下町、郡上八幡(ぐじょうはちまん)。
夏の夜になると、この町のどこかの通りから、三味線と太鼓の音、そして「♪ 郡上のナー 八幡 出てゆく時は 雨も降らぬに 袖しぼる」という歌声が聞こえてきます。浴衣姿の人々が輪になり、下駄の音を響かせながら同じリズムで踊り続ける──それが郡上おどりです。
7月中旬から9月上旬まで、実に30夜以上にわたって踊り続けられるこの盆踊りは、日本一長い盆踊りとして知られています。そしてお盆の4日間(8月13日〜16日)には、**夜8時から翌朝5時まで夜通し踊る「徹夜おどり」**が行われ、全国から数十万人の踊り手が郡上八幡に集結します。
2022年、郡上おどりは「風流踊(ふりゅうおどり)」の一つとしてユネスコ無形文化遺産に登録されました。400年以上の歴史を持つこの踊りの背後には、先祖への供養、生と死の境界を越える信仰、そして暦に刻まれた日本人の時間感覚が深く息づいています。
郡上おどりの歴史 ─ 城下町の「融和」から生まれた踊り
始まりは江戸時代初期
郡上おどりの起源は**江戸時代初期(17世紀)**にさかのぼるとされています。
郡上藩主・遠藤慶隆が城下の士農工商の融和を図るため、身分の区別なく一緒に踊ることを奨励したのが始まりと伝えられています。当時の日本社会は厳格な身分制度で成り立っていましたが、盆踊りの輪の中では武士も町人も農民も等しく踊り手でした。
これは、お盆に帰ってくる先祖の霊の前では、生きている者の身分の違いなど些細なことだ──という思想の表れでもあります。
10種の踊り ─ 400年かけて完成した「型」
郡上おどりには10種類の踊り曲があります。それぞれが長い年月をかけて洗練され、現在の形に落ち着きました。
| 曲名 | 特徴 | テンポ |
|---|---|---|
| かわさき | 郡上おどりの代名詞。優雅で叙情的 | ゆったり |
| 春駒 | 馬の動きを模した軽快な踊り | 速い |
| 三百 | 古い念仏踊りの面影を残す | ゆったり |
| やっちく | 下駄を鳴らすリズミカルな踊り | 中程度 |
| 猫の子 | ユーモラスな猫の動き | 速い |
| げんげんばらばら | 変拍子の独特なリズム | 変則 |
| 甚句(じんく) | 即興の歌詞が入る | ゆったり |
| さわぎ | 最も古い曲の一つ | ゆったり |
| まつさか | 伊勢音頭の影響を受けた曲 | 中程度 |
| 古調かわさき |
暦から読み解く郡上おどりの時期
「大暑」から「処暑」まで ─ 踊りは暑さとともにある
郡上おどりは7月中旬から9月上旬まで続きます。これは二十四節気でいえば、小暑・大暑から処暑までの期間とほぼ重なります。
| 二十四節気 | 2026年の日付 | 郡上おどりとの関係 |
|---|---|---|
| 小暑 | 7月7日頃 | 踊りシーズンの始まり間近 |
| 大暑 | 7月22日頃 | 本格的な踊りシーズン。暑さのピーク |
| 立秋 | 8月7日頃 | 暦の上では秋。徹夜おどりの準備期 |
| 処暑 | 8月23日頃 | 暑さが和らぐ。踊りシーズンの後半 |
| 白露 | 9月7日頃 | 踊りシーズンの終わり |
暑さの中で踊り続けることは、「暑邪」と正面から向き合い、体を動かすことで邪気を追い出す東洋医学的な知恵でもあります。じっとしていれば暑さに負けてしまいますが、踊ることで体内の「気」が活発に循環し、夏バテを防ぎます。
旧暦のお盆と徹夜おどり
現在の徹夜おどりは新暦の8月13日〜16日に行われていますが、これは「月遅れのお盆」の日程に合わせたものです。
旧暦の七月十五日(盂蘭盆会・うらぼんえ)は、先祖の霊を迎え、供養し、送り出す仏教行事です。新暦では7月15日に行う地域と、月遅れの8月15日に行う地域がありますが、郡上おどりは月遅れの盆に従っています。
旧暦のお盆の時期は、二十四節気の立秋を過ぎた直後にあたります。暦の上ではすでに「秋」。しかし実際の気温はまだ真夏そのもの──この暦と体感のずれが、**「現実世界と異界の境がぼやける」**お盆の不思議な空気感を生み出していると言えるでしょう。
盆の「輪」と暦の「循環」
郡上おどりの踊りは**円形(輪)**です。踊り手たちは中心に向かって円を描き、時計回りに回りながら踊ります。
この「輪」は、暦の「循環」そのものです。
- 季節の循環 ── 春夏秋冬が巡り、また春が来る
- お盆の循環 ── 先祖が来て、また帰る。来年もまた来る
- 人生の循環 ── 生まれ、生き、死に、また生まれ変わる
踊りの輪に加わることは、この宇宙的な循環のリズムに自分の体を同期させる行為。一粒万倍日に踊りの輪に入れば、その同期のエネルギーが万倍に膨らみ、人生の循環がより良い方向に回り始めるとされています。
郡上八幡の町と水の文化
「日本一美しい」水の町
2026年の暦カレンダー

旅河 楓旅と祈りの編集者
全国の神社仏閣・パワースポットを自分の足で歩き、土地の歴史と信仰を紐解く旅する編集者。地元の方への取材を大切にし、ガイドブックには載らない「祈りの風景」を伝える記事が読者に支持されている。
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