七十二候 蓮始開 2026 ─ 7月12日〜16日、小暑次候 新月とお盆に開く「泥中の蓮」の5日

この記事でわかること
小暑次候『蓮始開(はすはじめてひらく)』は2026年7月12日〜16日。夜明けに花を開き昼にはつぼむ蓮を、7/13〜14の新月(朔)と旧暦六月の始まり、新暦のお盆が重なる暦配置とともに読み解きます。中国の『蟋蟀居壁』を渋川春海が蓮へ書き換えた日本独自の候の物語、泥中より出でて泥に染まらぬ仏教の花の意味にも触れます。
目次
温風(31候)が梅雨を払い、白南風が空を白く輝かせた小暑も、いよいよ次候へと移ります。**2026年7月12日(日)から7月16日(木)までの5日間が、七十二候の第三十二候「蓮始開(はすはじめてひらく)」**です。夜明けとともに水面に花をほどき、昼にはふたたびつぼむ蓮(はす)。その清らかな開花を、暦は夏の盛りの真ん中に置きました。
私(野分蓮)は福カレンダー編集部で二十四節気・七十二候を担当しています。じつは私の名「蓮」もこの花にちなんでいて、蓮始開はとりわけ思い入れの深い候です。そしてこの候には、語るべき物語があります。**蓮始開は、中国伝来の暦をそのまま受け継いだのではなく、日本の暦学者・渋川春海が書き換えた「日本オリジナルの候」**なのです。前回の温風至(小暑初候)が唐の宣明暦からほぼ形を変えずに受け継がれた候だったのに対し、この次候は大きく姿を変えました。受け継がれた候のすぐ隣に、編み直された候が置かれている──小暑の三候は、その対照そのものが見どころです。
2026年の蓮始開は、暦のうえでも静かな節目が重なります。7月13日(月)から14日(火)にかけて月は新月(朔)を迎え、14日は旧暦六月の朔日(ついたち)。さらに7月15日(水)は新暦のお盆の中日にあたります。泥の池から清らかな花が立ち上がるこの候が、月の闇(新月)とご先祖を迎えるお盆に重なる──蓮が「仏の花」と呼ばれてきた由縁を、今年の暦はそのまま映し出しています。
蓮始開とは ─ 中国の「蟋蟀居壁」を蓮へ書き換えた、日本の小暑次候
蓮始開は、太陽黄経105度の小暑に入ってから二番目、105度から110度のあいだに置かれた候です。「蓮(はす)始(はじ)めて開(ひら)く」と読み、池や沼に蓮の花が咲き始める頃を指します。
この候名は、日本独自のものです。中国の宣明暦では、小暑の次候は 「蟋蟀居壁(こおろぎかべにおる)」──コオロギが壁のあたりに移り住む頃、とされていました。渋川春海は貞享改暦(1684年公布)にあたり、この虫の候を、日本の夏を象徴する蓮の開花へと差し替えたと伝わります。コオロギの声に秋の近づきを聴く中国の感性に対し、日本は盛夏の水辺に咲く蓮の清らかさを選んだ──同じ小暑次候でも、暦が見つめる先はこれほど違うのです。
蓮の花には、知れば知るほど惹かれる性質があります。蓮は夜明け前につぼみをほどき始め、朝のうちに大きく開き、昼を過ぎるとふたたび花を閉じます。これを三日ほど繰り返し、四日目には花弁を散らす――わずか数日の、しかも午前だけの命です。だからこそ古来、蓮を愛でるには夜明けに池へ赴く「観蓮(かんれん)」が好まれました。早起きをしなければ出会えない花、という点でも、蓮始開はこの季節の早朝の特別さを教えてくれます。
2026年の暦配置 ─ 新月とともに迎える旧暦六月、そしてお盆の入り
2026年の蓮始開(7月12日〜16日)は、月が細く欠けて闇に沈み、また生まれ変わる「朔(さく)」をはさむ5日間です。
| 日付 | 六曜 | 月相 | 暦注・行事 |
|---|---|---|---|
| 7月12日(日) | 友引 | 有明月 | ─ |
| 7月13日(月) | 先負 | 新月 | お盆の入り(新暦) |
| 7月14日(火) | 赤口 | 新月 | 旧暦六月一日(朔日) |
| 7月15日(水) | 先勝 | 新月 | お盆(中日)・寅の日 |
| 7月16日(木) | 友引 | 新月 | お盆の送り |
月は12日の有明月(明け方に残る細い月)から、13〜14日にかけて新月(朔)へと沈み、空から姿を消します。14日は旧暦六月の朔日にあたり、暦のうえでは新しい月(つき)の始まり。闇がもっとも深まるこの数日に、池では蓮が白い花をほどく――泥と闇のなかから清らかな光が立ち上がる、という蓮の本質を、今年の月相がそのまま絵にしてくれています。
そして7月13日から16日は、東京をはじめ新暦でお盆を営む地域の盂蘭盆(うらぼん)。13日に迎え火で祖霊を迎え、16日に送り火で送る四日間です。蓮はこのお盆と切り離せない花でもあります。
六曜では15日が先勝で午前の行動が吉、また寅の日(金運・旅立ちに縁起がよいとされる十二支日)でもあります。お盆の中日にあたるこの日は、午前のうちに墓参や供養を済ませると、暦の流れに沿った一日になります。
泥中の蓮 ─ 仏教の花とお盆、そして「清浄」のシンボル
蓮がお盆や仏事に欠かせないのは、仏教における蓮華(れんげ)の象徴性によります。経典では、蓮は 「泥中(でいちゅう)より出でて泥に染まらず」――濁った泥水のなかから茎を伸ばし、水面で一点の汚れもない花を開くことから、煩悩の世にあって清らかさを保つ悟りの境地にたとえられてきました。仏像が蓮の台座(蓮華座)に座し、極楽浄土が蓮池として描かれるのも、この花のもつ清浄のイメージゆえです。
お盆に蓮が用いられるのも同じ理由です。精霊棚(盆棚)には蓮の葉を敷き、その上に供物を盛る風習が各地に残ります。露を受けた蓮の葉のみずみずしさは、迎えた祖霊をもてなす清らかな器でもありました。新月の闇に祖霊を迎え、泥の池から清らかな蓮が咲く――蓮始開という候は、日本人がこの花に託してきた祈りの形を、季節の言葉として結晶させたものといえるでしょう。
蓮を味わう ─ 観蓮会と、早朝にだけ開く花
蓮の楽しみは見るだけにとどまりません。各地の名園や寺院では、夜明けの蓮を愛でる**「観蓮会(かんれんかい)」**がこの時期に開かれます。早朝、花が開くときにかすかな音がする――という言い伝えもあり、静けさのなかで耳を澄ます風雅な催しです。
食卓では、地下茎の蓮根(れんこん)がおなじみですが、夏には蓮の実を甘く煮たものや、葉に米を包んで蒸す料理も各地にあります。花・葉・茎・実・根――蓮はそのすべてが暮らしに生かされてきた、ありがたい植物でもあります。
蓮始開5日間の歩き方 ─ 新月とお盆に沿う、静かな夏のはじまり
暦の配置を踏まえて、2026年の蓮始開5日間を一日ずつ歩いてみます。
- 7月12日(日)友引・有明月:明け方の細い月が見られる最後の朝。早起きして近くの蓮池をのぞくなら、この週の前半が狙い目です。
- 7月13日(月)先負・新月/お盆の入り:新暦のお盆を営む地域では迎え火の日。先負なので午後に動くのが吉。提灯や精霊棚の支度を整えましょう。
- 7月14日(火)赤口・新月/旧暦六月朔日:月が新たに生まれ、旧暦では六月の始まり。区切りの日として、夏後半の計画を静かに立てるのに向きます。
- 7月15日(水)先勝・新月/お盆中日・寅の日:午前の行動が吉。墓参や供養は午前のうちに。寅の日でもあり、改まった出立や金運にまつわる事にも縁起のよい日です。
- 7月16日(木)友引・新月/送り火:祖霊を送る日。慌ただしく動くより、家族で静かに過ごすのにふさわしい一日です。
福カレンダー編集部の蓮始開ノート ─ 三つのおすすめ
最後に、蓮始開を心地よく過ごすための小さな提案を三つ。
- 蓮は「午前の花」と心得る:蓮は昼にはつぼんでしまいます。観蓮は夜明けから午前9時頃までが勝負。早起きの値打ちがいちばん高い候です。
- お盆は暦に沿って迎え、送る:2026年は7月13日が迎え、16日が送り。新月の静けさのなか、急がず祖霊と向き合う四日間にしてみてください。
- 泥を恐れない:泥中から清らかな花を咲かせる蓮は、思いどおりにいかない日々のなかでこそ美しさが育つ、という励ましの花でもあります。うまくいかない時期にこそ思い出したい候です。
夜明けに開き、闇とお盆に寄り添う蓮の5日間。次の候は、鷹の幼鳥が大空へ飛び立つ術を学ぶ「鷹乃学習(たかわざをならう)」。2026年は一年でも指折りの最強開運日が、その候のただ中に巡ってきます。
参考
参考文献・出典
- 暦計算室— 国立天文台 暦計算室(参照: 2026-06-03)
- 七十二候 (Wikipedia 日本語版)— Wikipedia(参照: 2026-06-03)
- 日本の暦 -国立国会図書館-— 国立国会図書館(参照: 2026-06-03)
2026年の暦カレンダー
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野分 蓮干支と暦の研究家
- 十干十二支
- 二十四節気
- 自然暦
十干十二支・二十四節気・自然と暦の関わりを、歴史と科学の両面から掘り下げる研究家肌の編集者。古文書の記述と現代の気象データを突き合わせるような、知的好奇心を刺激する考察記事を得意とする。
この編集者の記事を見る →この記事について
本記事は一般的な暦の知識や伝統的な解釈に基づいています。 占いの結果を保証するものではありません。最終的な判断はご自身でお願いします。
免責事項を読む →福カレンダーでは、暦に関するコンテンツを正確かつ分かりやすくお届けするよう努めています。
編集方針について →参考情報:暦注・民俗資料、公的機関の暦情報を参考に編集部が整理しています。
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