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七十二候 温風至 2026 ─ 7月7日〜11日、小暑初候 七夕と一粒万倍日が重なる「白南風」の5日

野分 蓮干支と暦の研究家·2026.06.03 更新·約9分
七十二候 温風至 2026 ─ 7月7日〜11日、小暑初候 七夕と一粒万倍日が重なる「白南風」の5日

この記事でわかること

小暑初候『温風至(あつかぜいたる)』は2026年7月7日〜11日。梅雨明けを告げる温かい南風『白南風(しらはえ)』が吹き始める頃を、小暑入りと七夕が同じ日に重なる暦、そして暑中見舞い・風鈴・打ち水という江戸から続く夏の手仕事から読み解きます。中国の宣明暦をそのまま受け継いだ候の系譜にも触れます。

目次
  1. 1.温風至とは ─ 梅雨明けに吹く「白南風」を告げる、中国由来の小暑初候
  2. 2.2026年の暦配置 ─ 七夕と小暑が同日、一粒万倍日2日と大安が並ぶ吉日続き
  3. 3.白南風と七夕 ─ 「温風」が運ぶ夏の言葉と、五色の短冊の物語
  4. 4.温風至5日間の歩き方 ─ 七夕の手仕事と、一粒万倍日の活かし方
  5. 5.福カレンダー編集部の温風至ノート ─ 三つのおすすめ
  6. 6.参考

紅花(23候)が染料の盛りを越え、麦(24候)が刈り入れを終えた小満から、夏至の三候を経て、暦はいよいよ夏の本番──小暑へと入ります。**2026年7月7日(火)から7月11日(土)までの5日間が、七十二候の第三十一候「温風至(あつかぜいたる)」**です。「温(あたた)かい風が至(いた)る」と書くこの候は、梅雨の終わりに南から吹き込む湿った熱気、すなわち本格的な夏の到来を告げています。

私(野分蓮)は福カレンダー編集部で二十四節気・七十二候を担当しています。温風至を読むうえでまず押さえておきたいのは、この候名が中国伝来の暦からほとんど形を変えずに受け継がれた候だということです。小満末候の「麦秋至」が、江戸時代の暦学者・渋川春海によって中国の「小暑至」から日本の麦の収穫期へと書き換えられたのに対し、小暑初候の「温風至」は、唐の宣明暦から略本暦(明治7年改暦)まで、ほぼそのままの三文字で日本の暦に居続けてきました。書き換えられた候と、書き換えられなかった候──その対比そのものが、七十二候という暦の奥行きを物語ります。

そして2026年の温風至は、暦の節目が幾重にも重なる5日間になります。初日7月7日(火)は小暑の節入りであると同時に七夕、しかも一粒万倍日。さらに7月9日(木)が大安、7月10日(金)が再び一粒万倍日と、夏の始まりにふさわしい吉日が続きます。今回は温風至の由来と「白南風(しらはえ)」という美しい夏の言葉、2026年の暦配置、そして暑中見舞い・風鈴・打ち水という温風をしのぐ手仕事を、5日間の歩き方とともにたどっていきます。

温風至とは ─ 梅雨明けに吹く「白南風」を告げる、中国由来の小暑初候

温風至は、太陽黄経が105度に達して小暑(しょうしょ)に入った最初の5日間に置かれた候です。「温風」とは、梅雨の雲が切れて南から吹き込む、湿気をはらんだ生ぬるい風のこと。気象でいえば、梅雨末期から梅雨明けにかけて吹く南風がこれにあたります。

この南風を、日本では古くから 「白南風(しらはえ/しろはえ)」 と呼んできました。梅雨のさなかに吹く重い南風を「黒南風(くろはえ)」と呼ぶのに対し、梅雨が明けて空が白く輝き始める頃の明るい南風が「白南風」です。黒から白へ──風の色が移ろうその境目に、温風至は置かれています。「温風至る」という素っ気ないほど短い三文字は、じつのところ、列島が梅雨を抜けて夏の光のなかへ歩み出す、その一瞬を切り取った言葉なのです。

冒頭で触れたとおり、温風至は中国の七十二候をそのまま受け継いだ候です。唐の宣明暦における小暑初候も「温風至」であり、渋川春海は貞享改暦(1684年公布)の際にも、この候には手を入れませんでした。日本の気候でも、梅雨明け前後に温かい南風が吹くという実感は中国華北のそれと違わなかったのでしょう。一方で、同じ小暑でも次候は中国の「蟋蟀居壁(こおろぎかべにおる)」から日本独自の「蓮始開(はすはじめてひらく)」へと書き換えられています。受け継いだ候と、暮らしに合わせて編み直した候──小暑の三候は、その両方を並べて見せてくれる格好の例です。

2026年の暦配置 ─ 七夕と小暑が同日、一粒万倍日2日と大安が並ぶ吉日続き

2026年の温風至(7月7日〜11日)は、暦注の重なりが印象的な5日間です。

日付六曜月相暦注・行事
7月7日(火)先負下弦の月小暑・七夕・一粒万倍日
7月8日(水)仏滅下弦の月─
7月9日(木)大安下弦の月大安
7月10日(金)赤口有明月一粒万倍日
7月11日(土)先勝有明月─

まず目を引くのが、初日7月7日に「小暑の節入り」「七夕」「一粒万倍日」が三つ重なることです。一粒万倍日は「一粒の籾が万倍の稲穂になる」ことから、新しく始めた物事が大きく実るとされる吉日。種まき・開業・財布の新調・習い事の開始などに選ばれます。七夕の短冊に願いを書くこの日が一粒万倍日でもあるというのは、「始めの一歩」を踏み出すにはこの上ない巡り合わせといえます。

ただし六曜では7月7日は先負で、急いで動くよりは午後がよいとされる日。さらに7月9日(木)が大安、7月10日(金)がもう一度一粒万倍日と続くため、改まった事は9日に、新しい習慣や買い物の「始め事」は7日・10日に──と、性質によって日を選び分けると、この5日間を無理なく活かせます。

月の方は、5日間を通じて下弦の月から有明月(ありあけづき)へと移っていきます。半月(下弦)からさらに細くなり、夜明けの空に白く残る月が有明月。七夕の夜(7日)は月が夜半過ぎに昇る暗めの宵で、かえって天の川と織女星(ベガ)・牽牛星(アルタイル)の「星合(ほしあい)」を眺めるには都合のよい空模様です。願いを書いて空を見上げる──温風至の初日は、暦のうえでも星を仰ぐにふさわしい夜になっています。

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白南風と七夕 ─ 「温風」が運ぶ夏の言葉と、五色の短冊の物語

温風至は、夏の季語の宝庫でもあります。先に挙げた「白南風」のほか、梅雨明けを意味する「梅雨明(つゆあけ)」、夏の盛りを指す「盛夏(せいか)」、土が乾いて熱を帯びる「土用(どよう)」前の蒸し暑さ──いずれもこの候のあたりに重なります。俳句では「白南風や」と詠めば、それだけで梅雨を抜けた明るい解放感が立ち上がります。

そして同じ初日に重なる七夕もまた、温風至の物語を豊かにします。七夕飾りに欠かせない五色(ごしき)の短冊は、青(緑)・赤・黄・白・黒(紫)の五色。これは中国の陰陽五行説に由来し、木・火・土・金・水の五行と、それぞれに対応する徳(仁・礼・信・義・智)を表すとされます。願い事を色で選ぶ──たとえば学業向上なら青、感謝なら赤、というように──のも、五行の知恵を踏まえた楽しみ方です。

笹に願いを託すのは、笹竹がまっすぐ高く伸び、風にそよいで音を立てることから、神霊が宿る依代(よりしろ)と考えられたためといわれます。温風至の「温かい風」が笹の葉を鳴らすとき、その音はそのまま、星へ願いを運ぶ音でもあったのでしょう。

風鈴と打ち水 ─ 温風をしのぐ、江戸から続く涼の知恵

温かい風が「至る」ということは、裏を返せば暑さとの長い付き合いが始まるということ。日本の夏は、この温風をいかにしのいで涼を得るかという工夫の歴史でもありました。

その代表が風鈴です。軒先に吊るしたガラスや鉄の風鈴が、温風に揺れてチリンと鳴る──その音を聞くと涼しく感じるのは、単なる気のせいではありません。風鈴の音は「風が吹いている」という情報を耳から伝え、私たちの体感温度をわずかに下げるとされます。福カレンダーの日めくり(今日の福)でも、小暑初候のこの時期は軒の風鈴を季節のしるしとして掲げています。音で涼を呼ぶという発想は、温風至という候名そのものへの、粋な応答といえるでしょう。

もう一つが打ち水です。朝夕に道や庭へ水を撒くと、水が蒸発するときに周囲の熱を奪い(気化熱)、地表の温度が下がります。江戸の町では客を迎える前の打ち水が礼儀でもあり、涼しさと清めの両方を兼ねていました。簾(すだれ)や葦簀(よしず)で日差しを和らげ、打ち水で地を冷やし、風鈴で音の涼をとる──電気に頼らない涼の重ね技は、温風至から土用にかけての暮らしの基本装備でした。

温風至5日間の歩き方 ─ 七夕の手仕事と、一粒万倍日の活かし方

暦の配置を踏まえて、2026年の温風至5日間を一日ずつ歩いてみます。

  • 7月7日(火)小暑・七夕・一粒万倍日:一年でも指折りの「始め事」日。七夕の短冊に願いを書き、新しい習慣・貯蓄・学びを始めるのに向きます。先負なので本格的な行動は午後に。暑中見舞いを出すのも、暦のうえでは小暑(この日)からが正式です。
  • 7月8日(水)仏滅:派手な動きは控え、道具の手入れや部屋の整えに向く日。風鈴を出し、簾を掛けるなど、夏支度を静かに進めましょう。
  • 7月9日(木)大安:5日間で最も改まった事に向く日。契約・お祝い・あいさつ回りなど、人と関わる節目に。
  • 7月10日(金)一粒万倍日:この週二度目の「実りの種まき日」。財布の新調や口座開設、習い事の申し込みなど、長く育てたい事の出発点に。
  • 7月11日(土)先勝:「先んずれば勝つ」で午前の行動が吉。早朝に打ち水をして、軒に風鈴を掛け、白南風を迎える──温風至を締めくくる、夏の入り口の一日です。

福カレンダー編集部の温風至ノート ─ 三つのおすすめ

最後に、温風至を心地よく過ごすための小さな提案を三つ。

  1. 暑中見舞いは「小暑」を起点に:暑中見舞いの正式な書き始めは、二十四節気の小暑(7月7日)から。立秋の前日までが暑中、それ以降は残暑見舞いになります。温風至はその第一日。一筆したためる季節の合図として覚えておくと便利です。
  2. 七夕の願いは一粒万倍日に乗せて:2026年は七夕が一粒万倍日と重なる稀な巡り合わせ。短冊の願いを「これから始めること」として具体的に書くと、暦の後押しと気持ちの整理が同時にかないます。
  3. 音で涼をとる:エアコンの設定温度を下げる前に、まず軒に風鈴を一つ。温風に鳴る音は、温風至という候名へのいちばん素直な味わい方です。

温かい風が至り、白南風が空を白く輝かせる5日間。次の候は、水面に蓮の花がほどける「蓮始開(はすはじめてひらく)」です。中国の暦を日本の夏へと編み直した、その書き換えの物語へと続きます。

参考

  • 国立天文台 暦計算室「暦象年表」(小暑=太陽黄経105度の定義および2026年の節気日)
  • 渋川春海『貞享暦』と略本暦(明治7年改暦)における七十二候の系譜
  • 各種歳時記における夏の季語「白南風」「黒南風」「梅雨明」
  • 福カレンダー暦マスターデータ(2026年7月の六曜・月相・一粒万倍日・大安)

📚参考文献・出典

  1. 暦計算室— 国立天文台 暦計算室(参照: 2026-06-03)
  2. 七十二候 (Wikipedia 日本語版)— Wikipedia(参照: 2026-06-03)
  3. 日本の暦 -国立国会図書館-— 国立国会図書館(参照: 2026-06-03)
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野分 蓮

野分 蓮干支と暦の研究家

  • 十干十二支
  • 二十四節気
  • 自然暦

十干十二支・二十四節気・自然と暦の関わりを、歴史と科学の両面から掘り下げる研究家肌の編集者。古文書の記述と現代の気象データを突き合わせるような、知的好奇心を刺激する考察記事を得意とする。

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  3. 3.白南風と七夕 ─ 「温風」が運ぶ夏の言葉と、五色の短冊の物語
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