七十二候 山茶始開 2026 ─ 11月7日〜11日、立冬初候 山茶花がはじめて咲く冬の始まり5日

この記事でわかること
立冬初候『山茶始開(つばきはじめてひらく)』は2026年11月7日〜11日。暦のうえで冬がはじまり、冬の花の先駆け・山茶花(さざんか)が咲き出す頃を読み解きます。読みは『つばき』でも指すのは椿ではなく山茶花であること、椿との見分け、中国の宣明暦『水始冰』を略本暦が書き換えた候の系譜、炉開きなど冬支度の習わしにも触れます。
目次
楓と蔦が紅に燃えあがった霜降のさいごの候(54候・楓蔦黄)を承け、暦はいよいよ秋を送り、冬の最初の節気――立冬(りっとう)へと入ります。**2026年11月7日(土)から11月11日(水)までの5日間が、七十二候の第五十五候「山茶始開(つばきはじめてひらく)」**です。「山茶(つばき)始(はじ)めて開(ひら)く」――冬の花の先駆けである山茶花(さざんか)が、はじめてその花をひらく頃を指しています。
私(野分蓮)は福カレンダー編集部で二十四節気・七十二候を担当しています。山茶始開は、立冬という節気の幕開けを告げる初候です。ここで暦のうえでの冬がはじまります。中国の宣明暦では、立冬の初候に「水始冰(みずはじめてこおる)」――水がはじめて凍る候が据えられていました。冬の入りを、水が凍るという冷たさのきわみで言い表した、いかにも大陸の暦らしい候です。けれども日本の略本暦は、この候を「山茶始開」へと書き換えています。凍てつく冷たさよりも、冬を先がけて咲く一輪の花を、日本の暦は季節のしるしに選び取りました。冬の入り口を、花の便りで告げる――この選びとりかたに、四季の移ろいを花鳥でとらえてきた、この国の暦の感性がにじんでいます。
ひとつ、大切な読み解きがあります。候名の「山茶」は「つばき」と読ませますが、ここで実際に咲くのは椿(つばき)ではなく、山茶花(さざんか)です。山茶花も椿も、植物としては同じツバキ科ツバキ属の近い仲間で、漢字でも入りまじって用いられてきました。けれども花の咲く時季も、散りぎわのふるまいも、はっきりと異なります。この候が告げているのは、晩秋から初冬にかけて咲く山茶花のほうです。
山茶始開とは ─ 山茶花がはじめて咲く、立冬の初候
山茶始開は、太陽黄経が225度に達して立冬に入った最初の候です。「立冬」とは、暦のうえで冬が立つ――冬がはじまる節気のこと。とはいえ、立冬の頃はまだ秋の名残が色濃く、紅葉も盛りを過ぎたばかりで、肌で感じる寒さはこれからが本番です。暦が告げる冬と、体で感じる冬とのあいだには、ひと月あまりのずれがあります。それでも、日脚はめっきり短くなり、朝夕の冷えこみは日ごとに深まって、自然は確かに冬へと舵を切りはじめています。
その立冬の入りに、冬の花の先駆けとして咲き出すのが山茶花です。多くの花が咲き終え、虫の音も絶えたこの時季に、つややかな緑の葉のあいだから、紅や白の五弁の花をひらいてゆく――まだ咲く花の少ない初冬の庭に、山茶花のあかるい色はひときわ際立ちます。
ここで、山茶花と椿の見分けを記しておきます。第一に咲く時季が違います。山茶花は晩秋から初冬――まさにこの山茶始開の頃に咲きはじめ、椿は冬の深まりから春にかけて咲きます。第二に、散りぎわのふるまいがまるで違います。山茶花は花びらが一枚ずつ、はらはらと散ってゆき、花の下に色とりどりの花びらを敷きつめます。いっぽう椿は、花が丸ごと、ぽとりと音を立てるように落ちます。第三に葉のかたちです。山茶花の葉は小さめで、ふちに細かなギザギザ(鋸歯)があり、椿の葉はそれより大ぶりでつやが強く、ふちのギザギザもおだやかです。咲く時季と散りかた――この二つを知っておけば、生垣の花が山茶花か椿か、見分けるのはたやすくなります。
2026年の暦配置 ─ 立冬の入りと、朔から生まれる新しい月
2026年の山茶始開(11月7日〜11日)は、初日が立冬の節入りにあたり、期間の半ばに新月(朔)を迎えて、月がふたたび細くよみがえってゆく5日間です。
| 日付 | 六曜 | 月相 | 暦注・行事 |
|---|---|---|---|
| 11月7日(土) | 赤口 | 暁の月 | 立冬・一粒万倍日 |
| 11月8日(日) | 先勝 | 晦 | 一粒万倍日 |
| 11月9日(月) | 仏滅 | 新月 | 旧暦十月一日 |
| 11月10日(火) | 大安 | 二日月 | 大安 |
| 11月11日(水) | 赤口 | 三日月 | ─ |
初日11月7日(土)が立冬の節入りであり、この日から暦のうえの冬がはじまります。月は、明け方の空にうっすらと残る有明月から、いよいよ細りきって、11月9日(月)には新月を迎えます。新月――旧暦でいう朔(さく)は、月が太陽と同じ方角に重なって、夜空からその姿を消す瞬間です。この朔の日が旧暦十月一日、すなわち旧暦の神無月(かんなづき)の朔日にあたり、暦のうえで新しい月が始まります。姿を消した月は、翌日からふたたび西の夕空に、糸のように細い二日月、三日月となって生まれかわってゆきます。冬の入りに、月もまた新たに生まれなおす――暦のめぐりが静かに重なるこの5日間です。期間中には、ものごとを始めるのに縁起のよい吉日や、暦のうえでめでたい日も含まれていますが、日ごとの六曜・吉日は、上の表をご覧ください。立冬の澄んだ空気のなかで、細りゆき、また生まれる月のかたちを、一日ずつ目で追ってみてください。
冬を先がける花 ─ 山茶花と、暦の上の冬の始まり
山茶始開の魅力は、ほかの花が眠りにつく季節に、ただ一輪、冬を先がけて咲く山茶花のけなげさにあります。
山茶花は、晩秋から初冬という、一年でもっとも花の少ない時季に咲きます。秋の花が散り、虫の音も絶え、庭がさびしくなってゆくその頃に、つややかな葉のあいだから紅や白の花をひらいて、初冬の景色にあたたかな彩りを添える――まだ寒さの本番を前にして真っ先に咲くその姿は、冬のおとずれを告げる先触れのようでもあります。生垣に好んで植えられてきたのも、葉が密でじょうぶなうえに、花の少ない季節を長く彩ってくれるからでした。垣根越しにのぞく山茶花の花は、冬の初めの町並みに欠かせない、なじみ深い景色です。
この花のあかるさは、童謡のなかにも生きています。「かきねの かきねの まがりかど、たきびだ たきびだ おちばたき」――誰もが口ずさんだことのある「たきび」の歌は、二番でこう続きます。「さざんか さざんか さいたみち、たきびだ たきびだ おちばたき」。落ち葉を焚く煙のむこうに、生垣の山茶花が咲いている――この歌の情景は、まさに山茶始開の頃の初冬の町を描いたものです。寒さに首をすくめながら、それでも垣根の花や焚き火のぬくもりに心なごむ――そんな冬の入りのあたたかな記憶を、この一節は今に伝えています。
立冬と、炉開き・こたつ開きの冬支度
立冬は、暦のうえで冬を迎える節目であることから、古くからこの頃に冬支度をととのえる習わしがありました。なかでもよく知られるのが「炉開き(ろびらき)」です。茶の湯では、夏のあいだ使っていた風炉(ふろ)をしまい、畳を切ってしつらえた炉(ろ)をひらいて、釜を炉にかけはじめます。炉開きは茶人にとって一年の節目とされ、その年に摘んで寝かせておいた新茶の壺の口を切る「口切り(くちきり)」とあわせて、「茶人の正月」とも呼ばれる、あらたまった祝いの日です。
家々の暮らしのなかでは、「こたつ開き」の習わしもありました。かつては立冬の頃、とりわけ旧暦十月の「亥の日(いのひ)」に火を入れると火事をまぬがれるとして、この日にこたつや火鉢に火を入れはじめる風がありました。猪は陰陽五行で水の気をもち、火を制すると考えられたためです。冬の入りに火を扱いはじめる節目として、暦と暮らしが結びついた習わしでした。山茶花が咲き出すこの頃、暖をとり、火を迎える冬支度がそろそろと始まります。
山茶始開5日間の歩き方
- 11月7日(土)立冬:暦のうえで冬がはじまる節入りの日。生垣の山茶花が咲き出していないか、垣根のそばを歩いて探してみてください。
- 11月8日(日)有明から細る月:明け方の空に残る月もいよいよ細く。日中は澄んだ空のもと、山茶花と椿の葉のギザギザを見くらべてみては。
- 11月9日(月)新月:月が夜空から姿を消す朔の日。旧暦十月一日、新しい月の始まりです。月のない夜には、かえって星々がくっきりと冴えわたります。
- 11月10日(火)大安:六曜でもっともよいとされる日。冬支度を始めるのにふさわしい一日。炉開きにならって、暖かい一杯のお茶で体をあたためてみてください。
- 11月11日(水)三日月:西の夕空に、よみがえった細い三日月が。山茶花の散り敷いた花びらを足もとに見つけながら、深まる初冬を味わって。
福カレンダー編集部の山茶始開ノート ─ 三つのおすすめ
- 山茶花と椿を見分ける:生垣にひらいた花を見つけたら、咲く時季と散りかたで見分けてみましょう。今ひらいて、花びらが一枚ずつ散るなら山茶花。葉のふちの細かなギザギザも、見分けのよい手がかりになります。
- 「たきび」の歌の景色を探す:「さざんか さざんか 咲いた道」――歌に描かれた山茶花の咲く道を、近くの垣根に探してみてください。落ち葉を踏む音とともに、冬の入りの町の情景がよみがえります。
- 炉開きにならって火を迎える:立冬は古来、炉開き・こたつ開きの冬支度の節目。茶の湯の炉開きにならって、温かいお茶や鍋で、冬を迎えるあたたかな一日を過ごしてみてはいかがでしょう。
山茶花が咲き出し、月が朔からふたたび生まれかわる5日間。次の候は、立冬の次候「地始凍(ちはじめてこおる)」。大地が冷えこんで、地面が凍りはじめ、霜柱が立つ頃へ――暦は秋の名残をあとに、いよいよ冬の芯へと、一歩ずつ分け入ってゆきます。
参考
- 国立天文台 暦計算室「暦象年表」(立冬=太陽黄経225度の定義および2026年11月の節気日・朔(新月)・月相の時刻)
- 略本暦(明治7年改暦)における立冬初候「山茶始開」、中国・宣明暦の初候「水始冰」との対照
- 山茶花と椿の見分け(咲く時季・散りかた・葉のかたち)、童謡「たきび」と山茶花、立冬の炉開き・口切り・こたつ開きなど冬支度の習わし
- 福カレンダー暦マスターデータ(2026年11月の六曜・月相・一粒万倍日・旧暦)
参考文献・出典
- 暦計算室— 国立天文台 暦計算室(参照: 2026-06-03)
- 七十二候 (Wikipedia 日本語版)— Wikipedia(参照: 2026-06-03)
- 日本の暦 -国立国会図書館-— 国立国会図書館(参照: 2026-06-03)
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野分 蓮干支と暦の研究家
- 十干十二支
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十干十二支・二十四節気・自然と暦の関わりを、歴史と科学の両面から掘り下げる研究家肌の編集者。古文書の記述と現代の気象データを突き合わせるような、知的好奇心を刺激する考察記事を得意とする。
この編集者の記事を見る →この記事について
本記事は一般的な暦の知識や伝統的な解釈に基づいています。 占いの結果を保証するものではありません。最終的な判断はご自身でお願いします。
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