七十二候 地始凍 2026 ─ 11月12日〜16日、立冬次候 大地が凍りはじめる5日

この記事でわかること
立冬次候『地始凍(ちはじめてこおる)』は2026年11月12日〜16日。冷えが地中にまで及び、霜柱が立ち、水たまりに初氷が張る頃を読み解きます。中国の宣明暦をそのまま受け継いだ日中共有の候、霜柱が地表へ伸びる毛細管現象の科学、シモバシラの氷の華、そして11月15日の七五三と千歳飴に込めた長寿の願いにも触れ、凍てつく朝の静けさへ歩を進めます。
目次
山茶花(さざんか)が冬のさきがけに咲きはじめた立冬(55候・山茶始開)を承け、暦は冷えがいよいよ地の底へと届く次候へと進みます。**2026年11月12日(木)から11月16日(月)までの5日間が、七十二候の第五十六候「地始凍(ちはじめてこおる)」**です。「地(ち)始(はじ)めて凍(こお)る」――夜ごとの冷えこみが地中にまで及び、土が凍て、朝の野に霜柱が立ち、水たまりに薄い初氷が張る頃を指しています。
私(野分蓮)は福カレンダー編集部で二十四節気・七十二候を担当しています。地始凍は、立冬の三候のなかでも、ひときわ来歴の古い候です。立冬の三候のうち、初候「山茶始開」と末候「金盞香(きんせんかさく)」は日本が独自に編んだ候ですが、この「地始凍」だけは、中国の宣明暦の候をそのまま受け継いでいます。大陸でも、立冬の頃には「水始めて氷る」「地始めて凍る」と、冬の到来を水と土の凍結に見てとっていました。日中が一語をともにするこの候には、北半球の同じ緯度で同じ冬を迎えてきた人々の、共通のまなざしが宿っています。空から降りる霜(霜降)でも、枝に咲く花(山茶)でもなく、足もとの大地そのものが凍るという――もっとも地に近い変化を、暦はここで静かに書きとめたのです。
2026年の地始凍は、夕空に細い四日月がかかり、やがて上弦へと満ちてゆく5日間。昼の陽はなお淡くあたたかいものの、夜半から明け方にかけての放射冷却で気温は一気に下がり、土はこわばり、草の根もとには白い霜柱が育ちます。期間のなかばには、子らの成長を祝う七五三が巡ってきます。
地始凍とは ─ 大地が凍りはじめる、立冬の次候
地始凍は、太陽黄経が230度前後に達した立冬の半ば、暦が冬へと本格的に踏みこんでゆく候です。「凍る」のは水たまりや池ばかりではありません。この候の眼目は、土そのものが凍るという点にあります。日が落ちて地表の熱が空へ逃げる放射冷却が進むと、地中の温度はゆっくりと下がり、土に含まれた水分が凍りはじめます。よく晴れて風のない夜ほど熱は逃げやすく、明け方の地表は氷点を下回って、白くこわばった景色を現します。
この頃に各地から届く便りが「初氷(はつごおり)」です。庭先のバケツや田の水たまりに、その冬はじめて張る薄い氷――指でつつけば、かさりと割れるほどのはかなさですが、それは確かに冬の到来を告げる一枚です。気象台でも、その地でその年に初めて観測された氷を「初氷」として記録します。北国や山あいでは立冬の前から張ることもありますが、平野部ではちょうどこの地始凍の頃から、朝の手水鉢や草の露が凍りはじめます。大地が凍り、水が氷り、吐く息が白く立ちのぼる――地始凍は、五感のすべてで冬を確かめる候なのです。
2026年の暦配置 ─ 四日月から上弦へ、七五三を迎える5日
2026年の地始凍(11月12日〜16日)は、夕空に若い四日月が育ち、上弦へと近づいてゆく5日間です。期間のなかばには、子らの成長を祝う七五三が巡ってきます。
| 日付 | 六曜 | 月相 | 暦注・行事 |
|---|---|---|---|
| 11月12日(木) | 先勝 | 四日月 | 寅の日 |
| 11月13日(金) | 友引 | 五日月 | ─ |
| 11月14日(土) | 先負 | 六日月 | ─ |
| 11月15日(日) | 仏滅 | 上弦近し | 七五三・巳の日 |
| 11月16日(月) | 大安 | 上弦近し | 大安 |
初日11月12日(木)の夕空には、若く細い四日月がかかります。月は朔(11月9日16時02分/旧暦十月一日)を過ぎて四日目、日ごとにふくらみを増し、期間の終わりには弓を張ったような上弦の月へと近づいてゆきます。月が西の空に沈むのも宵から夜半へとしだいに遅くなり、月のない明け方の冷えこんだ刻に、霜柱はもっとも深く育ちます。そして15日(日)には、晴れ着の子らが家族とともに神社へ向かう七五三――冬のはじまりの、いちばんあたたかな日。期間中には縁起のよい吉日も含まれますが、日ごとの六曜・吉日は、上の表をご覧ください。
霜柱の科学 ─ 土がせり上げる氷の柱
足もとで「さくり」と崩れる霜柱。あの不思議な氷の柱は、どのようにして生まれるのでしょうか。
霜柱は、地表に張る氷とは生まれ方がまったく異なります。冷えこんだ夜、地表近くの土がまず凍りつくと、その凍った層のすぐ下では、地中の少し温かい水分が、細い土の隙間を伝って上へ上へと吸い上げられていきます。これは、細い管のなかを水が自然にのぼっていく「毛細管現象」のはたらきです。吸い上げられた水分は凍った層の底に達したところで次々と凍りつき、新たな氷を下から継ぎ足してゆく。こうして氷は土の粒を頭にのせたまま、地面を持ちあげながら柱状にぐんぐんと伸びていくのです。一晩のうちに数センチも立ちあがることがあるのは、地中から水がたえず供給されつづけるからにほかなりません。霜柱がよくできるのは、水分をほどよく含み、隙間の細かい関東ローム層のような土。同じ冷えこみでも、砂地や乾いた土ではあの見事な柱はなかなか立ちません。
シモバシラの「氷の華」
霜柱と名を分かちあう、もうひとつの氷の造形があります。シソ科の多年草「シモバシラ」は、晩秋に地上部が枯れたあとも、根がなお地中の水を吸いあげつづけます。その水が枯れた茎の裂け目からにじみ出て、外の冷気にふれたそばから凍り、薄い氷の花びらのような造形を茎のまわりに咲かせるのです。これを「氷の華(はな)」「霜花(しもばな)」と呼びます。仕組みは地中の霜柱とよく似て、土ではなく枯れた茎を舞台に、水がしみ出ては凍ることをくり返して育ちます。よく晴れて冷えこんだ初冬の早朝、高尾山などの登山道で、枯れ草のあいだに白く透きとおる氷の花が点々と咲くさまは、この季節ならではの幽玄な光景。日が高くのぼればたちまち溶けて消える、夜明けだけの一瞬の花です。地が凍るこの候は、かくもさまざまな氷のかたちを、私たちの足もとに用意してくれています。
地始凍5日間の歩き方
- 11月12日(木)寅の日:金運に縁のある吉日。冷えこんだ朝、庭や道ばたに立った霜柱を探し、そっと踏んでその「さくり」という感触と音を確かめてみてください。
- 11月13日(金)友引:友を引くとされる日。早朝の水たまりや手水鉢に、その冬はじめての薄い初氷が張っていないか、出かけぎわにのぞいてみては。
- 11月14日(土)先負:午後が吉とされる日。よく晴れて冷えた朝は、放射冷却で日中も澄みわたります。低くなった陽ざしのなか、落ち葉を踏んで歩く散歩を楽しんで。
- 11月15日(日)七五三:晴れ着の子らが神社へ参る祝いの日。境内のにぎわいと千歳飴の白と紅に、冬のはじまりのあたたかさを感じてみてください。
- 11月16日(月)大安:何事にも吉とされる日。上弦へと満ちる月を宵の空に見上げ、深まる冷えに合わせて、暮らしの冬支度をひとつずつ整えていきましょう。
福カレンダー編集部の地始凍ノート ─ 三つのおすすめ
- 足もとの氷を探す:地が凍るこの候は、霜柱・初氷・氷の華と、足もとに小さな氷の造形が次々と生まれます。冷えこんだ朝こそ外へ出て、夜のあいだに育った一瞬の氷を見つけてみてください。
- 七五三を祝う:11月15日は子の成長を祝う日。千歳飴の長くのびる紅白の飴には、子がすこやかに長く生きるようにとの願いが込められています。家族の節目をあたたかく迎えて。
- 冬支度をひとつ進める:大地が凍りはじめれば、冬はもう目の前。暖をとる支度、衣がえ、暮らしまわりの備えを、暦の合図に合わせてひとつずつ整えておきましょう。
大地が凍りはじめ、足もとに氷の華が咲き、子らの祝いの声がひびく5日間。次の候は、香り高い水仙の花がほころぶ「金盞香(きんせんかさく)」。霜の野に凜と咲く金盞(きんせん=水仙)とともに、立冬はその末候へと、冬はいっそう深まる頃へと続いてゆきます。
参考
- 国立天文台 暦計算室「暦象年表」(立冬=太陽黄経225度の定義および2026年の節気日・朔/上弦の時刻・旧暦)
- 略本暦(明治7年改暦)における立冬次候「地始凍」、中国・宣明暦からそのまま受け継いだ日中共有の候としての来歴
- 霜柱が生じる毛細管現象の仕組みと初氷の観測、シソ科「シモバシラ」の氷の華(霜花)、七五三の由来(江戸期・徳川綱吉の子の祝いの説)と千歳飴に込めた長寿の願い
- 福カレンダー暦マスターデータ(2026年11月の六曜・月相・寅の日・巳の日・旧暦)
参考文献・出典
- 暦計算室— 国立天文台 暦計算室(参照: 2026-06-03)
- 七十二候 (Wikipedia 日本語版)— Wikipedia(参照: 2026-06-03)
- 日本の暦 -国立国会図書館-— 国立国会図書館(参照: 2026-06-03)
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野分 蓮干支と暦の研究家
- 十干十二支
- 二十四節気
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十干十二支・二十四節気・自然と暦の関わりを、歴史と科学の両面から掘り下げる研究家肌の編集者。古文書の記述と現代の気象データを突き合わせるような、知的好奇心を刺激する考察記事を得意とする。
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