衣替え2026 ─ 6月1日(月)先勝大明日に始まる「更衣」の暦と平安からの夏支度作法

目次
6月の朝の空気は、5月の若葉の青さから一段深い緑へと色を変えていく時季です。窓を開けて押入れの襖を開く瞬間、冬を越した袷(あわせ)の着物の香りと、新たに用意する単衣(ひとえ)の生地の触感が交錯する──この衣替えのひと日は、日本人の暮らしに1,200年以上にわたって繰り返されてきた、季節と心の節目です。
2026年の衣替えは6月1日(月)、月初の月曜日にあたります。福カレンダーの暦マスター(国立天文台の公式値を参照)でこの日を読み解くと、先勝×大明日×戊辰(つちのえ・たつ)。先勝は「午前が吉」とされる六曜、大明日は「広く動く行為を後押しする」と古くから言われる暦注下段の吉日。朝のうちに夏服を取り出して整える作法に、暦的な追い風が吹いている日です。暦師見習いの日和(ひなた)がご一緒に、衣替えの来歴と作法、そして令和の暮らしへのつなぎ方をたどっていきますね。
「更衣」という語の来歴 ─ 平安宮中儀礼から
「衣替え」の語源は、**平安朝の宮中儀礼「更衣(こうい)」**にあります。旧暦4月1日と10月1日の年2回、宮中では公家の装束を冬服から夏服へ、夏服から冬服へと一斉に切り替える儀式が執り行われました。これは中国・唐の宮廷儀礼を取り入れた日本独自の制度で、平安遷都(794年)以降、貴族社会の年中行事として定着していきます。
『枕草子』(清少納言、1000年頃)や『源氏物語』(紫式部、1008年頃)にも、更衣の場面が随所に描かれています。例えば『源氏物語』の主人公・光源氏の母君は「桐壺更衣(きりつぼのこうい)」と呼ばれ、「更衣」は宮中で天皇の身の回りの装束を司る女官の官職名としても使われました。衣を更える儀礼が、人の役職名にまで昇華したほど、平安貴族社会において衣の入れ替えは重要な営みだったのです。
衣替えの暦は単なる衣類の入れ替えではなく、**「四季の襲ね色目(かさねのいろめ)」**という日本独自の色彩美学とも結びついていました。襲ね色目とは、表生地と裏生地の色の重なり方によって季節感を表現する貴族文化。例えば「若草の襲ね」は表が萌葱(もえぎ)・裏が淡黄、4月から立夏頃に着る配色。「橘の襲ね」は表が朽葉色・裏が黄、初夏から仲夏の配色。衣替えは、こうした襲ね色目を一斉に切り替える美的な節目でもありました。
江戸期の四季更衣 ─ 年4回への発展
鎌倉・室町期を経て、衣替えの作法は徐々に庶民にも広がっていきます。江戸期に入ると、幕府が武士の衣替え暦を四季更衣(しきこうい)として定めるようになり、年2回から年4回へと精緻化されました。
| 旧暦の日付 | 切り替え内容 | 季節 |
|---|---|---|
| 4月1日 | 袷(あわせ) → 単衣(ひとえ)・裏なし | 初夏 |
| 5月5日 (端午) | 単衣 → 帷子(かたびら)・薄絽(うすろ) | 盛夏 |
| 9月1日 | 帷子・絽 → 単衣 | 初秋 |
明治改暦と現代の衣替え ─ 6月1日・10月1日へ
明治5年(1872年)、日本は太陽暦への改暦を実施しました。これに伴い官公庁・学校・企業の衣替えは新暦の6月1日と10月1日に統一されます。明治政府が制定した文官制服の規程(国立公文書館アジア歴史資料センター所蔵の明治期文書による)で「夏服は6月1日より、冬服は10月1日より着用すべし」と明文化されたのが、現代の衣替え暦の直接の祖型です。
戦後は学校制服の衣替えが最も社会的に可視化された衣替えの場面として継承され、6月1日に学生が一斉に夏服に切り替わる朝の光景は、日本の風物詩の一つに数えられるようになりました。近年は地球温暖化による気候の前倒しや、クールビズ推進による衣替え柔軟化が進み、6月1日固定の衣替えは形骸化しつつあるとも言われます。
しかしそれでも、「6月1日に夏服を出す」という暦の節目を意識する日本人の感覚は、いまも生活の底に残っています。クールビズで5月から半袖シャツを着始めても、6月1日に押入れを開けて単衣を取り出す瞬間の気持ちの切り替えは、平安朝から続く更衣の儀礼が現代の暮らしに姿を変えて息づいている証左ともいえそうです。
暦データと2026年衣替えの一日 ─ 先勝大明日の月曜朝に
ここで、福カレンダーの暦マスターから2026年6月1日の暦データを開いてみますね。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 六曜 | 先勝(午前吉、午後凶) |
| 暦注下段 | 大明日(広く動く吉日) |
| 二十四節気 | 小満(5/21〜)期間中、芒種(6/6)前 |
| 旧暦 | 4月17日 |
| 日干支 | 戊辰(つちのえ・たつ) |
| 月干支 | 甲午(きのえ・うま) |
先勝×大明日の組み合わせは、衣替えにふさわしい暦の配置です。先勝は「午前のうちに事を始めると吉」、大明日は「広く動く行為を祝福する」吉日。朝のうちに押入れを開け、冬服を仕舞い、夏服を取り出すという衣替えの一連の動作が、午前の吉時間帯に完了する設計と見事に呼応します。
そして6月1日が月曜日にあたるのも、現代の生活リズムには好都合。週末に衣替えの準備(クリーニング・防虫剤の入れ替え・収納場所の掃除)を済ませ、月曜朝に夏服で新しい一週間を始める──このリズムが暦の流れと自然に重なります。
実用的なヒントを少しだけ、お伝えしますね。
- クリーニング・防虫:冬物は5月中にクリーニングを済ませ、防虫剤(ピレスロイド系・ナフタリン系のいずれか単独で混在禁止)を新調して収納
2026年の暦カレンダー

野分 蓮干支と暦の研究家
- 十干十二支
- 二十四節気
- 自然暦
十干十二支・二十四節気・自然と暦の関わりを、歴史と科学の両面から掘り下げる研究家肌の編集者。古文書の記述と現代の気象データを突き合わせるような、知的好奇心を刺激する考察記事を得意とする。
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本記事は一般的な暦の知識や伝統的な解釈に基づいています。 占いの結果を保証するものではありません。最終的な判断はご自身でお願いします。
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