七十二候 鶺鴒鳴 2026 ─ 9月12日〜16日、白露次候 「恋教え鳥」セキレイが鳴く5日

この記事でわかること
白露次候『鶺鴒鳴(せきれいなく)』は2026年9月12日〜16日。長い尾を上下に振るセキレイが鳴き始める頃を読み解きます。イザナギ・イザナミに男女の道を教えたという神話から『恋教え鳥』と呼ばれた由来、中秋の名月へ向かい澄んでいく秋の夜空、新月から満ちゆく月の暦配置にも触れます。
目次
朝露(43候)が白く光った白露も、次候へと移ります。**2026年9月12日(土)から9月16日(水)までの5日間が、七十二候の第四十四候「鶺鴒鳴(せきれいなく)」**です。「鶺鴒(せきれい)鳴(な)く」――水辺で長い尾を上下にぴょこぴょこと振りながら、チチンと澄んだ声で鳴くセキレイの季節を指しています。
私(野分蓮)は福カレンダー編集部で二十四節気・七十二候を担当しています。セキレイは、川辺や水辺を好む、すらりとした美しい小鳥。歩きながら長い尾を絶えず上下に振る独特のしぐさから、「石たたき」「庭たたき」とも呼ばれてきました。この鳥もまた一年を通じて見られますが、空気が澄んで水辺の音がよく響く秋に、その鳴き声がいっそう涼やかに聞こえることから、白露の次候に置かれたのでしょう。草露白と同じく、これも日本独自に編まれた候です。
2026年の鶺鴒鳴は、新月を過ぎた月がふたたび細く現れ、満ちはじめる5日間。旧暦では八月に入り、暦は秋のもっとも美しい夜――中秋の名月へと近づいていきます。
鶺鴒鳴とは ─ 尾を振る水辺の鳥が鳴く、白露の次候
鶺鴒鳴は、太陽黄経が白露の範囲(170〜175度)にある次候です。セキレイの仲間(ハクセキレイ・セグロセキレイ・キセキレイなど)は、いずれも水辺を好み、尾を上下に振りながら地面の虫をついばみます。その軽やかな身のこなしと、澄んだ鳴き声は、涼やかさを増した秋の水辺によく似合います。
夏のあいだ蝉の声に満ちていた野山が、虫の音とセキレイの声に入れ替わっていく――鶺鴒鳴の候は、聞こえてくる「音」の移ろいによって、季節の深まりを教えてくれます。暑さがやわらぎ、空気が乾いて澄むことで、遠くの水音や鳥の声がくっきりと耳に届くようになる。そんな秋の聴覚の鋭さも、この候の味わいのひとつです。
2026年の暦配置 ─ 新月から満ちゆく月、中秋へ向かって
2026年の鶺鴒鳴(9月12日〜16日)は、新月の翌日にあたる二日月から六日月へと、月が日ごとに太っていく5日間です。
| 日付 | 六曜 | 月相 | 暦注・行事 |
|---|---|---|---|
| 9月12日(土) | 先負 | 二日月 | 旧暦八月二日 |
| 9月13日(日) | 仏滅 | 三日月 | 寅の日 |
| 9月14日(月) | 大安 | 四日月 | 一粒万倍日・大安 |
| 9月15日(火) | 赤口 | 五日月 | ─ |
| 9月16日(水) | 先勝 | 六日月 | ─ |
月は新月を過ぎ、夕空に細く姿を現して、二日月から六日月へと日に日に太っていきます。旧暦では八月の上旬にあたり、暦は秋でもっとも月の美しい夜――**旧暦八月十五日の中秋の名月(2026年は9月25日)**へと、静かに歩みを進めていきます。期間中には始め事に縁起のよい吉日も巡ります(日ごとの六曜・吉日は上の表をご覧ください)。
恋教え鳥 ─ イザナギ・イザナミに道を教えた鳥
セキレイには、神話にまでさかのぼる雅やかな別名があります。「恋教え鳥(こいおしえどり)」「嫁ぎ鳥(とつぎどり)」――これは、日本の国生み神話に由来します。
『日本書紀』の一書には、こんな話が伝えられています。国生みの神イザナギとイザナミが、夫婦としてどう結ばれればよいか分からず戸惑っていたとき、一羽のセキレイが飛んできて、長い尾を上下にしきりに振ってみせた。その様子を見た二神は、男女の交わりの道を悟った――というのです。尾を振るセキレイのしぐさが、夫婦和合と子孫繁栄を教えた、というこの伝承から、セキレイは「恋教え鳥」と呼ばれ、縁結びや夫婦円満の象徴として親しまれてきました。
水辺で健気に尾を振る小さな鳥に、いのちの根源にかかわる物語を見いだす――鶺鴒鳴という候名の背後には、そんな日本人の豊かな想像力と、自然への親しみが息づいています。
秋の夜長と虫の音
鶺鴒鳴の頃は、日が短くなり、夜がぐんと長くなる「秋の夜長」の入り口でもあります。日が落ちると、草むらからは鈴虫やこおろぎの澄んだ音色が響き始めます。昼はセキレイの声、夜は虫の音――一日を通して、秋の音に包まれる頃です。澄んだ夜空を見上げれば、満ちていく月。読書や手仕事に、あるいは月を眺めて物思いにふけるのに、これほどふさわしい季節もありません。
身近な秋の鳥 ─ セキレイを探す
セキレイは、決して珍しい鳥ではありません。ハクセキレイ・セグロセキレイ・キセキレイなど数種が日本で見られ、なかでもハクセキレイは、近年すっかり都市部にも進出しています。川辺はもちろん、駅前の広場やスーパーの駐車場、公園の芝生など、思いがけない場所で、尾を振りながらちょこちょこと歩く姿を見かけます。
見分けの手がかりは、やはりあの尾の動き。歩きながら、止まりながら、絶えず長い尾を上下にぴょこぴょこと振る――この特徴的なしぐさは、ほかの小鳥にはあまり見られません。波打つように飛び、飛びながら「チチン、チチン」と鳴くのも特徴です。鶺鴒鳴の候は、特別な場所へ出かけずとも、身近な水辺や街角で「秋の鳥」に出会える候。神話に登場する恋教え鳥が、案外すぐそばにいることに気づくと、いつもの道のりも少し楽しくなります。
鶺鴒鳴5日間の歩き方
- 9月12日(土)先負:午後の行動が吉。週末、水辺を散歩してセキレイの姿を探すのも一興です。
- 9月13日(日)仏滅・寅の日:派手な事は控えめに。寅の日は旅立ちや金運に縁起がよいとされます。
- 9月14日(月)大安:5日間で最も吉日らしい一日。改まった事や始め事に好適です。
- 9月15日(火)赤口:火に注意する日。穏やかに、秋の夜長を楽しむ支度を。
- 9月16日(水)先勝:午前の行動が吉。澄んだ夜には、満ちていく月と虫の音を味わって。
福カレンダー編集部の鶺鴒鳴ノート ─ 三つのおすすめ
- 水辺で鳥を探す:川辺や池のほとりで、尾を上下に振るセキレイを見つけてみてください。縁結びの「恋教え鳥」に出会えるかもしれません。
- 秋の音に耳を澄ます:蝉から虫へ、季節の音は移ろいます。昼のセキレイ、夜の虫の音――秋の聴覚を楽しむ候です。
- 夜長を味わう:中秋の名月へ向けて、月は夜ごと豊かになります。澄んだ夜空を見上げる時間を、暮らしにそっと取り入れて。
セキレイが尾を振り、秋の夜が深まる5日間。次の候は、春に来た燕が南へ帰る「玄鳥去(つばめさる)」。渡り鳥の旅立ちとともに、白露を締めくくる候へと続きます。
参考
参考文献・出典
- 暦計算室— 国立天文台 暦計算室(参照: 2026-06-03)
- 七十二候 (Wikipedia 日本語版)— Wikipedia(参照: 2026-06-03)
- 日本の暦 -国立国会図書館-— 国立国会図書館(参照: 2026-06-03)
2026年の暦カレンダー
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野分 蓮干支と暦の研究家
- 十干十二支
- 二十四節気
- 自然暦
十干十二支・二十四節気・自然と暦の関わりを、歴史と科学の両面から掘り下げる研究家肌の編集者。古文書の記述と現代の気象データを突き合わせるような、知的好奇心を刺激する考察記事を得意とする。
この編集者の記事を見る →この記事について
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