七十二候 雷乃収声 2026 ─ 9月23日〜27日、秋分初候 雷が声をおさめ中秋の名月を迎える5日

この記事でわかること
秋分初候『雷乃収声(かみなりすなわちこえをおさむ)』は2026年9月23日〜27日。夏に轟いた雷が声をおさめ、鳴りやむ頃を読み解きます。春分次候『雷乃発声』と対をなす由来、昼夜が等しくなる秋分の日と彼岸の締めくくり、9月25日の中秋の名月と天文上の満月(27日未明)が2日ずれる暦の妙にも触れます。
目次
燕(45候)が南の空へと去った白露を承け、暦はいよいよ秋の中心の節気――秋分(しゅうぶん)へと入ります。**2026年9月23日(水)から9月27日(日)までの5日間が、七十二候の第四十六候「雷乃収声(かみなりすなわちこえをおさむ)」**です。「雷(かみなり)乃(すなわち)声(こえ)を収(おさ)む」――夏のあいだ空を轟かせた雷が、ようやくその声をおさめ、鳴りやんでいく頃を指しています。
私(野分蓮)は福カレンダー編集部で二十四節気・七十二候を担当しています。雷乃収声は、暦のなかでも特に対の美しさを持つ候です。半年前、春分の次候には「雷乃発声(かみなりすなわちこえをはっす)」――春の訪れとともに雷が鳴り始める候が置かれていました。春に生まれた雷が、夏に最も激しく轟き、そして秋分とともに声をおさめる。発声と収声、鳴り始めと鳴りやみ――暦は、空の音の一年の物語を、半年をへだてた二つの候で静かに語り合わせているのです。この候は、日本独自に編まれた多くの秋の候とは異なり、中国の宣明暦から受け継いだ古い候。それだけに、天と地の気の移ろいを音でとらえる、大陸の自然観のおもむきが色濃く残っています。
2026年の雷乃収声は、昼と夜の長さがほぼ等しくなる秋分から始まり、秋彼岸を締めくくる5日間。そして期間の半ば、9月25日(金)には一年でもっとも名高い月――中秋の名月が空に昇ります。
雷乃収声とは ─ 夏の雷が声をおさめる、秋分の初候
雷乃収声は、太陽黄経が180度に達して秋分に入った最初の候です。太陽黄経180度――これは、天の赤道と黄道が交わる点のひとつ「秋分点」を太陽が通過することを意味し、この日、太陽はほぼ真東から昇って真西へと沈み、昼と夜の長さがほぼ等しくなります。一年の折り返しにあたる、天文学的にも大きな節目です。
なぜこの候に雷が鳴りやむのでしょうか。夏の雷の多くは、強い日差しで地表が熱せられ、上昇気流が積乱雲(入道雲)を発達させることで生まれます。ところが秋分の頃になると、夏の暖かく湿った空気が、北からの乾いた涼しい空気に入れ替わり、雷を育てる積乱雲が立ちにくくなる。空はからりと高く澄んでいき、夏を象徴した雷鳴は遠ざかっていくのです。古人は、これを「陽の気が衰え、陰の気が満ちはじめる」しるしと読み取りました。雷の沈黙は、季節が確かに秋の本番へと傾いた、空からの便りなのです。
2026年の暦配置 ─ 秋分の日から中秋の名月、そして満ちきる夜へ
2026年の雷乃収声(9月23日〜27日)は、秋分の日に始まり、十三夜の月が満ちて満月へと至る5日間です。
| 日付 | 六曜 | 月相 | 暦注・行事 |
|---|---|---|---|
| 9月23日(水) | 友引 | 十三夜月 | 秋分・秋分の日(祝日)・秋彼岸中日 |
| 9月24日(木) | 先負 | 小望月 | ─ |
| 9月25日(金) | 仏滅 | 十五夜月 | 中秋の名月(旧暦十五夜)・寅の日 |
| 9月26日(土) | 大安 | 十六夜 | 一粒万倍日・大安 |
| 9月27日(日) | 赤口 | 立待月 | ─ |
初日9月23日(水)が秋分の節入りであり、国民の祝日「秋分の日」、そして秋彼岸の中日(ちゅうにち)が重なる、暦のうえで特別な一日です。月は十三夜から日に日に丸みを増し、25日(金)には旧暦八月十五日の中秋の名月――暦のうえの満月を迎えます。ただし天文上の満月(望)の瞬間は二日後、27日(日)の午前1時49分。名月の夜の月は、じつはまだわずかに欠けています。期間中には始め事に縁起のよい吉日も含まれますが、日ごとの六曜・吉日は、上の表をご覧ください。
秋分の日と彼岸 ─ 昼夜が分かれ、ご先祖を偲ぶ
9月23日の秋分の日は、自然をたたえ、亡くなった人々を偲ぶ国民の祝日です。太陽が真東から昇り真西へ沈み、昼と夜の長さがほぼ等しくなるこの日は、古来「あの世(彼岸)とこの世(此岸)がもっとも近づく日」と考えられてきました。仏教では、西方のはるかかなたに極楽浄土があるとされ、太陽が真西に沈む秋分の日は、沈む夕日の向こうに浄土を拝む絶好の日と位置づけられたのです。
秋彼岸は、この秋分の日を中日として、前後三日ずつを合わせた七日間。墓参りをし、おはぎを供え、ご先祖に手を合わせる――日本人にとって、もっとも身近な先祖供養の習わしです。雷乃収声の候は、ちょうどこの彼岸の締めくくりにあたります。空から夏の雷の声が去り、野には涼風が満ちる頃、人々は静かに墓前に額(ぬか)づいてきました。「暑さ寒さも彼岸まで」――この言葉のとおり、秋彼岸を越えると、夏の名残の暑さもようやく和らいでいきます。
名月と望(天文上の満月)が二日ずれる夜
この候の最大の見どころは、なんといっても9月25日の中秋の名月です。旧暦八月十五日の月を「中秋の名月」「十五夜」と呼び、一年でもっとも美しい月として、すすきを飾り、月見団子を供えて愛でる風習が古くから伝えられてきました。
ところが、暦をよく見ると面白いことに気づきます。25日は旧暦八月十五日――暦の呼称のうえでは、まぎれもなく「満月」の日です。けれども天文上の満月(望)の瞬間は、そこから二日後の27日(日)午前1時49分。十五夜の月は、じつはまだ完全には満ちきっていないのです。これは決して珍しいことではありません。旧暦の一日(朔)は新月の瞬間を含む日に定められるため、そこから数えた十五日目が、必ずしも望の瞬間と一致するとはかぎらないのです。むしろ、中秋の名月と満月の日付がぴたりと重なる年のほうが少ないほど。2026年はそのずれが二日と大きい年で、月がもっとも丸く見えるのは26日(土)の夜から27日未明にかけて。名月の夜は少しだけ欠けた月の風情を、翌夜はまんまるの月を、二夜つづけて秋の空を見上げてみてください。
雷と稲妻 ─ 稲の妻という豊作の願い
声をおさめてゆく雷ですが、日本には、雷にまつわる美しい言葉が残されています。それが「稲妻(いなずま)」です。雷光のことをなぜ「稲の妻(つま)」と書くのか――そこには、古代の人々の切なる願いがこめられています。
昔の人は、雷が多く鳴り、稲妻がよく光った年は、稲がよく実ると信じていました。雷の光が稲を実らせる――この素朴な信仰から、稲光は「稲の夫(つま)」、すなわち稲を稔(みの)らせる伴侶と見なされ、「稲妻」「稲光」と呼ばれるようになったのです。「つま」は古語では夫婦のどちらをも指す言葉。雷と稲とが夫婦のように結ばれ、実りをもたらすという発想は、稲作とともに生きてきた日本人ならではの感性といえるでしょう。
現代の科学でも、雷の放電が空気中の窒素を植物の養分になりやすい形へと変えることが知られ、古人の直感はあながち的外れではなかったともいわれます。雷乃収声――雷が声をおさめるこの候は、ちょうど稲が黄金色に頭を垂れ、刈り入れを待つ頃。雷の沈黙は、豊かな実りが約束されたしるしでもあるのです。
雷乃収声5日間の歩き方
- 9月23日(水)秋分の日:昼と夜が分かれる秋彼岸の中日。墓参りをし、真西に沈む夕日に手を合わせ、自然とご先祖に感謝を。
- 9月24日(木)先負:午後の行動が吉。空を見上げ、夏の雷雲が去ったあとの澄んだ秋空を味わって。
- 9月25日(金)中秋の名月:旧暦十五夜の名月の夜。すすきを飾り、月見団子を供えて、一年でもっとも美しい月を愛でましょう。
- 9月26日(土)大安:暦のうえは十六夜。天文上の満月(望)は翌27日午前1時49分で、月がもっとも丸く見えるのはこの夜です。前夜の名月につづき、まんまるの月を見上げる二夜目の月見を。
- 9月27日(日)赤口:火に注意する日。穏やかに過ごし、すっかり秋めいた朝晩の涼しさを楽しんで。
福カレンダー編集部の雷乃収声ノート ─ 三つのおすすめ
- 空の音の移ろいを聴く:夏の雷鳴に代わって、野からは虫の音が響きます。空の沈黙と地の音色――秋の入れ替わりに耳を澄ませてみてください。
- 名月を二夜たのしむ:9月25日の中秋の名月と、月がもっとも丸く見える翌26日の夜。天文上の満月(望)は27日午前1時49分で、名月と二日ずれる年です。二夜つづけて月を見上げ、暦の妙を味わって。
- 彼岸に手を合わせる:秋分の日は、ご先祖を偲ぶ日。おはぎを供え、墓前に額づき、いのちの巡りに静かに思いをはせる時間を持ってみてください。
雷が声をおさめ、名月が空に昇る5日間。次の候は、虫たちが土にこもって戸をふさぐ「蟄虫坏戸(むしかくれてとをふさぐ)」。地中へと隠れゆく小さな生き物とともに、秋がいっそう深まる次候へと続きます。
参考
参考文献・出典
- 暦計算室— 国立天文台 暦計算室(参照: 2026-06-03)
- 七十二候 (Wikipedia 日本語版)— Wikipedia(参照: 2026-06-03)
- 日本の暦 -国立国会図書館-— 国立国会図書館(参照: 2026-06-03)
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野分 蓮干支と暦の研究家
- 十干十二支
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十干十二支・二十四節気・自然と暦の関わりを、歴史と科学の両面から掘り下げる研究家肌の編集者。古文書の記述と現代の気象データを突き合わせるような、知的好奇心を刺激する考察記事を得意とする。
この編集者の記事を見る →この記事について
本記事は一般的な暦の知識や伝統的な解釈に基づいています。 占いの結果を保証するものではありません。最終的な判断はご自身でお願いします。
免責事項を読む →福カレンダーでは、暦に関するコンテンツを正確かつ分かりやすくお届けするよう努めています。
編集方針について →参考情報:暦注・民俗資料、公的機関の暦情報を参考に編集部が整理しています。
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