ほうとうと冬至のかぼちゃ─甲州の薬膳鍋と暦の養生

目次
ほうとう──武田信玄が愛した甲州の味
山梨県(甲州)を代表する郷土料理「ほうとう」は、幅広の平打ち麺をかぼちゃや根菜とともに味噌仕立てで煮込む素朴な鍋料理です。その歴史は古く、戦国時代に武田信玄が陣中食として自ら刀で麺を切ったという伝承から「宝刀(ほうとう)」の名がついたとも言われます。
実際にはほうとうの起源はさらに古く、奈良時代に中国から伝わった「餺飥(はくたく)」という小麦粉料理がルーツとされています。山梨は山間部で米作りが難しかったため、小麦や雑穀を使った食文化が発達し、ほうとうは日常の主食として県民の暮らしに根づきました。
寒さの厳しい甲府盆地の冬に、具だくさんの熱い鍋で身体を温めるほうとうは、暦の「冬至」と自然に結びつく養生食でもあるのです。
冬至にかぼちゃを食べる風習──「運盛り」の知恵
冬至は二十四節気のひとつで、一年で最も昼が短く夜が長い日です。2026年の冬至は12月22日。この日を境に再び日が長くなり始めることから、古来「一陽来復(いちようらいふく)」──陰が極まって陽に転じる日として、運気が上昇に転じるめでたい日とされてきました。
冬至にかぼちゃを食べる風習は、「ん」のつく食べ物を食べると運が呼び込める「運盛り(うんもり)」の考え方に基づいています。
| 食材 | 別名(「ん」がつく読み) | 期待される運 |
|---|---|---|
| かぼちゃ | 南瓜(なんきん) | 金運上昇 |
| にんじん | にんじん | 健康運 |
| れんこん | れんこん | 先見の明(穴が開いて先が見える) |
| ぎんなん | ぎんなん | 金運(銀に通じる) |
| きんかん | きんかん | 金運(金に通じる) |
| かんてん | かんてん | 健康運 |
| うんどん(うどん) | うんどん | 運を呼ぶ |
特にかぼちゃ(南瓜=なんきん)は「ん」が2つ入る最強の運盛り食材。しかも夏に収穫されたかぼちゃは長期保存が効き、ビタミンA・C・Eが豊富で冬の栄養補給に最適です。冷蔵庫のない時代、冬至まで保存できるかぼちゃは貴重な冬の栄養源でした。
ほうとうにはかぼちゃが欠かせない具材として入るため、山梨では冬至にほうとうを食べることが「運盛り」の実践そのものとなっています。
一陽来復と冬至の暦
冬至の「一陽来復」は、易経の「地雷復(ちらいふく)」の卦に由来します。陰の気が極まった冬至に、一本の陽の爻(こう)が現れ、ここから陽が盛り返していく──この宇宙的なリズムを、昔の人は暦を通じて実感していました。
冬至を中心とした暦の養生観を整理すると、次のようになります。
| 節気 | 時期 | 養生のポイント |
|---|---|---|
| 大雪 | 12月上旬 | 身体を冷やさない。根菜を摂る |
| 冬至 | 12月下旬 | 一陽来復。かぼちゃ・柚子湯で運気上昇 |
| 小寒 | 1月上旬 | 寒の入り。温かい鍋物で体力維持 |
| 大寒 | 1月下旬 | 一年で最も寒い時期。保温と栄養を最優先 |
冬至を養生の中心に据え、前後の節気でも温かい食事で身体を守る──ほうとうはまさにこの暦の養生観を体現する料理なのです。
柚子湯との黄金コンビネーション
冬至のもうひとつの風習が「柚子湯」です。柚子の強い香りが邪気を祓い、柚子=「融通」が利くようにとの語呂合わせもあります。柚子湯に浸かって身体を温めてからほうとうを食べる──これが冬至の理想的な過ごし方です。
柚子に含まれるリモネン(精油成分)やビタミンCには血行促進効果があり、柚子湯で温まった身体にほうとうの温かい味噌汁が染み渡れば、冷え性対策としても理にかなっています。昔の人が経験則で確立した養生法は、現代の科学でもその効果が裏づけられているのです。
ほうとうの薬膳的な効能
ほうとうの具材を薬膳の視点で見ると、冬の身体を養う食材が見事にそろっています。
| 具材 | 薬膳的性質 | 効能 |
|---|---|---|
| かぼちゃ | 温性・甘味 | 胃腸を温め、気を補う |
| 大根 | 涼性・辛甘味 | 消化促進、痰を切る |
| 里芋 | 平性・甘味 | 胃腸を整え、滋養強壮 |
| ごぼう | 涼性・苦甘味 | 解毒、腸内環境改善 |
| きのこ類 | 平性・甘味 | 免疫力向上、気を補う |
| 味噌 |
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六曜

旅河 楓旅と祈りの編集者
全国の神社仏閣・パワースポットを自分の足で歩き、土地の歴史と信仰を紐解く旅する編集者。地元の方への取材を大切にし、ガイドブックには載らない「祈りの風景」を伝える記事が読者に支持されている。
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