七十二候 菊花開 2026 ─ 10月13日〜17日、寒露次候 菊が咲きそろい長寿を祝う5日

この記事でわかること
寒露次候『菊花開(きくのはなひらく)』は2026年10月13日〜17日。重陽に長寿を願った菊が、いまや盛りを迎える頃を読み解きます。皇室の菊花紋章や観菊・菊人形の文化、厚物・管物といった品種と食用菊、被綿に込めた重陽との縁、新月から三日月へと細く育つ秋の月の暦配置にも静かに触れます。
目次
雁(49候・鴻雁来)が北の空から渡ってきた寒露を承け、暦は秋のいよいよ深まる頃へと進みます。**2026年10月13日(火)から10月17日(土)までの5日間が、七十二候の第五十候「菊花開(きくのはなひらく)」**です。「菊(きく)の花(はな)開(ひら)く」――野にも庭にも菊の花が咲き、いよいよ見頃を迎える、そんな華やかな頃を指しています。
私(野分蓮)は福カレンダー編集部で二十四節気・七十二候を担当しています。菊花開は、ひと月あまり前の白露初候「草露白」で触れた「菊の節句」――重陽(ちょうよう)の節句と、深く糸を結んでいる候です。旧暦九月九日の重陽に長寿を願った菊が、いまや暦のうえで盛りを迎える。願いを込めた花が、季節を追ってまさに開いていくのです。この候は、日本独自に書き換えられた秋の候が多いなかで、中国の宣明暦から受け継いだ古い候のひとつ。菊を「秋を代表する花」「長寿と高貴の象徴」とした大陸の自然観と美意識が、そのまま暦の言葉として日本に根づいています。寒露という、露が冷たく感じられはじめる節気のただなかで、霜を前にしてなお凜と咲く菊は、移ろう季節にひときわ気高い彩りを添えます。
2026年の菊花開は、月がいったん新月に沈み、そこから細い三日月へと新たに育っていく5日間。空の月もまた、菊が咲きそろうこの候とともに、ひとつの始まりを迎えます。
菊花開とは ─ 菊が咲きそろう、寒露の次候
菊花開は、太陽黄経が195度を過ぎ、寒露に入って二番目に巡る候です。寒露という節気は、太陽黄経が195度に達し、草木に降りる露が冷たく感じられるほど秋が深まった頃を指します。その初候では北から雁が渡ってきて秋の到来を告げ、続くこの次候で、地上では菊が花を開いていく――空の渡り鳥と地の花とで、深まる秋を語り分けているのです。
菊は、日が短くなると花芽をつくる「短日植物」です。夏のあいだはつぼみを結ばず、秋分を過ぎて昼が夜より短くなると、ようやく花芽を育てはじめます。菊花開の候に菊がいっせいに咲きそろうのは、まさにこの性質ゆえ。秋の夜の長さそのものが、菊を咲かせる引き金なのです。多くの花が春から夏に咲き、秋には実を結んで終わる季節の流れのなかで、あえて秋の深まりとともに開く菊は、「百花のしんがり」とも呼ばれてきました。ほかの花が散ったあとに、霜をものともせず咲くその姿に、古人は移ろいに動じない気高さを見たのです。
2026年の暦配置 ─ 新月から三日月へ、月が新たに育つ5日間
2026年の菊花開(10月13日〜17日)は、月が新月に沈んでから、細い三日月へと育ちはじめる5日間です。
| 日付 | 六曜 | 月相 | 暦注・行事 |
|---|---|---|---|
| 10月13日(火) | 大安 | 三日月 | 大明日 |
| 10月14日(水) | 赤口 | 四日月 | 一粒万倍日・大明日 |
| 10月15日(木) | 先勝 | 五日月 | ─ |
| 10月16日(金) | 友引 | 六日月 | ─ |
| 10月17日(土) | 先負 | 七日月 | ─ |
初日10月13日(火)には、生まれたばかりの三日月が夕空に細くかかります。月はそこから日ごとに光を増し、17日(土)の七日月まで、宵の西空でゆっくりとふくらんでいきます。菊が地上で咲きそろう候に、空の月もまた新たに生まれ、育ちはじめる――地と天の、ふたつの「ひらく」が重なる暦の配置です。期間中には始め事の種まきに縁起のよい吉日も含まれますが、日ごとの六曜・吉日は、上の表をご覧ください。細い三日月の宵から、なかば張ってくる七日月の夜へと移ろう空のもとで、咲きそろう菊を眺める。秋の夜長の、しみじみとした趣のある5日間です。
菊と日本 ─ 高貴と長寿を象徴する秋の花
菊ほど、日本人の暮らしと精神に深く根を下ろした花も少ないでしょう。奈良時代から平安時代にかけて中国から薬草・観賞用としてもたらされた菊は、やがて「高貴」と「長寿」を象徴する花として、日本の文化のもっとも中枢にまで迎え入れられました。その象徴が、皇室の紋章「菊花紋章」です。花弁を十六枚あしらった「十六弁八重表菊(じゅうろくべんやえおもてぎく)」は、鎌倉時代の後鳥羽上皇が菊を好んで用いたことに始まるとされ、いまも皇室を表す格式高い紋として、パスポートの表紙や在外公館などに用いられています。秋に咲くひとつの花が、国を象徴する紋にまで昇華した――その背景には、菊に「気高さ」と「永続」を見た、長い歳月の美意識の積み重ねがあります。
菊花開の候は、各地で観菊(かんぎく)の催しがにぎわう季節でもあります。神社や公園で開かれる菊花展では、丹精込めて育てられた大輪が競うように並び、菊で人形をかたどった「菊人形」の展示も、秋の風物詩として親しまれてきました。菊の品種は驚くほど多彩で、花弁がふっくらと球状に盛り上がる「厚物(あつもの)」、糸のように細い花弁が放射状に伸びる「管物(くだもの)」など、栽培菊だけで数千種におよぶといわれます。咲かせ手が一年がかりで形を整え、寒露の頃の見頃に合わせて満開を迎えさせる――菊づくりは、暦と季節を読む技そのものなのです。
重陽の菊と被綿(きせわた)
菊花開を語るうえで欠かせないのが、ひと月前の重陽の節句との結びつきです。旧暦九月九日の重陽は「菊の節句」とも呼ばれ、奇数(陽の数)の極みである「九」が重なるこの日に、菊を愛で、菊酒を酌み交わして長寿を願いました。なかでも雅やかなのが「被綿(きせわた)」の風習です。重陽の前夜、菊の花にそっと真綿をかぶせて夜露と香りを移し、翌朝その綿で体を拭うと、若返り、長寿を保てると信じられました。露を含んだ菊で身を清める――草に置く露の候であった草露白から、菊が盛りに開く菊花開へと、菊をめぐる季節の物語はひと続きに流れています。重陽に長寿を願った菊が、ひと月の時を経て、いまや盛りに咲きそろう。願いと開花とが暦のなかで呼び合う、この上なく美しい候の重なりです。
食用菊 ─ 暮らしを彩る秋の味
菊は、眺めるだけの花ではありません。古くから「食べる菊」――食用菊として、日本の食卓を彩ってきました。東北地方の黄色い「もってのほか」、各地で親しまれる小ぶりの黄菊など、苦みのなかにほのかな甘みと独特の香りを持つ食用菊は、おひたしや酢の物、彩りの添え物として秋の膳を華やがせます。刺身に添えられる小さな黄菊の花も、ただの飾りではなく、口直しと邪気払いの意味を込めた、菊ならではのもてなしです。眺めて長寿を願い、食して季節を味わう――菊は、暮らしのすみずみにまで秋の高貴を運んでくれる花なのです。
菊花開5日間の歩き方
- 10月13日(火)三日月:細い月が夕空に生まれる日。日暮れの西空を見上げてから、咲きはじめた庭の菊や、近所の花壇の菊を静かに眺めてみては。
- 10月14日(水)一粒万倍日:始め事の種まきに縁起のよい一日。菊花展や観菊の予定を立てたり、秋の新しい習慣を始めるのにふさわしい日です。
- 10月15日(木):夕空に細い五日月がかかる宵。家族や友と連れだって菊人形展や菊花展に足を運び、丹精の大輪を味わって。
- 10月16日(金):実りの秋を味わう一日。食用菊のおひたしや酢の物を一品、秋の食卓に加えてみてはいかがでしょう。
- 10月17日(土):菊花開の締めくくりの一日。夕空にかかる七日月のもと、秋の夜長に菊の香りをたのしむ穏やかな一日に。
福カレンダー編集部の菊花開ノート ─ 三つのおすすめ
- 菊を一輪、暮らしに迎える:菊花展まで足を運べなくても、玄関や食卓に菊を一輪飾るだけで、季節の高貴が暮らしに添います。咲きそろう候だからこそ、花屋にも色とりどりの菊が並びます。
- 食用菊で秋を味わう:もってのほかや黄菊のおひたしは、苦みと香りに秋が凝縮した一品。眺める菊だけでなく、食す菊で、長寿を願う重陽の心を食卓に。
- 重陽からの物語を思う:草に露を置いた草露白、菊に願いを込めた重陽、そして菊が盛りに開くこの菊花開。ひと続きの暦の物語に思いをはせながら、咲く花を見上げてみてください。
菊が咲きそろい、長寿の願いが花ひらく5日間。次の候は、戸口でこおろぎが鳴く「蟋蟀在戸(きりぎりすとにあり)」。深まる秋の夜、家のそばまで近づいた虫の声に耳を澄ます、寒露の末候へと続きます。
参考
- 国立天文台 暦計算室「暦象年表」(寒露=太陽黄経195度の定義および2026年の節気日・新月・月相の時刻)
- 略本暦(明治7年改暦)における寒露次候「菊花開」、中国宣明暦から受け継いだ候としての系譜
- 皇室の菊花紋章「十六弁八重表菊」、観菊・菊花展・菊人形の文化、厚物・管物などの品種、食用菊と被綿(きせわた)の風習、重陽の節句と菊・長寿信仰
- 福カレンダー暦マスターデータ(2026年10月の六曜・月相・一粒万倍日・旧暦)
参考文献・出典
- 暦計算室— 国立天文台 暦計算室(参照: 2026-06-03)
- 七十二候 (Wikipedia 日本語版)— Wikipedia(参照: 2026-06-03)
- 日本の暦 -国立国会図書館-— 国立国会図書館(参照: 2026-06-03)
2026年の暦カレンダー
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野分 蓮干支と暦の研究家
- 十干十二支
- 二十四節気
- 自然暦
十干十二支・二十四節気・自然と暦の関わりを、歴史と科学の両面から掘り下げる研究家肌の編集者。古文書の記述と現代の気象データを突き合わせるような、知的好奇心を刺激する考察記事を得意とする。
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