七十二候 禾乃登 2026 ─ 9月2日〜6日、処暑末候 稲穂が実り頭を垂れる収穫前の5日

この記事でわかること
処暑末候『禾乃登(こくものすなわちみのる)』は2026年9月2日〜6日。田の稲穂が黄金色に実り、重く頭を垂れる頃を読み解きます。『禾(のぎ)』の字が稲を表すいわれ、実りへの感謝と台風への警戒が交差する農の暦、月が欠けて白露へと向かう暦配置にも触れ、処暑の三候を締めくくります。
目次
天地の暑さが鎮まった処暑(41候)も、いよいよ末候を迎えます。**2026年9月2日(水)から9月6日(日)までの5日間が、七十二候の第四十二候「禾乃登(こくものすなわちみのる)」**です。「禾(こくもの)乃(すなわ)ち登(みの)る」――田の稲が黄金色に実り、穂が重く頭を垂れる、収穫を間近に控えた頃を指しています。
私(野分蓮)は福カレンダー編集部で二十四節気・七十二候を担当しています。この候の「禾」という字は、「のぎ」とも読み、稲や粟(あわ)など穂の出る穀物を表します。よく見ると、稲が穂を垂れた姿をかたどった象形文字。その「禾」が「登る(実る)」――一年の農の営みが、ついに実りという形に結ばれる、その喜びを告げる候です。禾乃登は、温風至や鷹乃学習と同じく、中国の宣明暦から受け継がれた候。米を主食とする東アジアにとって、稲の実りは何にもまさる関心事でした。
2026年の禾乃登は、月が欠けていく5日間。やがて**翌9月7日には、暦は次の節気・白露(はくろ)**へと移り、秋がいよいよ深まっていきます。
禾乃登とは ─ 穀物が実り、収穫を迎える処暑の末候
禾乃登は、太陽黄経が処暑の終盤(160〜165度)にある末候です。暑さがやみ(綿柎開)、天地の気がひきしまり(天地始粛)、そしてこの末候で、いよいよ穀物が実ります。田は一面の黄金色に染まり、ふっくらと実った稲穂が、その重みで深く頭を垂れる――「実るほど頭を垂れる稲穂かな」という名高い句のとおり、たわわな実りは謙虚さの象徴ともされてきました。
とはいえ、収穫はまだこれから。台風の多いこの時期、実った稲を無事に刈り取るまでは気が抜けません。二百十日(天地始粛のころ)に続き、9月中旬には「二百二十日(にひゃくはつか)」という、もう一つの台風の厄日も控えています。実りへの喜びと、それを守りきるまでの緊張――禾乃登は、その両方が交差する、農にとって最も心のはやる候なのです。
2026年の暦配置 ─ 欠けゆく月とともに、白露へ
2026年の禾乃登(9月2日〜6日)は、月が下弦へと欠けていく5日間です。
| 日付 | 六曜 | 月相 | 暦注・行事 |
|---|---|---|---|
| 9月2日(水) | 先負 | 居待月 | ─ |
| 9月3日(木) | 仏滅 | 下弦の月 | ─ |
| 9月4日(金) | 大安 | 下弦の月 | 大安 |
| 9月5日(土) | 赤口 | 下弦の月 | ─ |
| 9月6日(日) | 先勝 | 下弦の月 | 一粒万倍日 |
満月を過ぎた月が、居待月から下弦へと欠けていきます。この5日間にも、改まった事や始め事に縁起のよい吉日が巡ります(日ごとの六曜・吉日は上の表をご覧ください)。そして翌9月7日(月)からは、暦は白露へ。草に降りる露が白く輝き始める、本格的な秋の節気へと入っていきます。禾乃登は、夏の暦の最後を実りで締めくくり、秋へと橋を渡す候でもあります。
実りへの感謝 ─ 稲とともにある日本の暦
日本の暦と稲作は、切っても切れない関係にあります。二十四節気や七十二候の多くが、種まき・田植え・草取り・実り・収穫という稲の一年に寄り添って読まれてきました。禾乃登は、その一年の歩みがついに「実り」へと到達する、いわば物語のクライマックスにあたる候です。
やがて稲が刈り取られると、その新穀は神に捧げられます。10月の神嘗祭(かんなめさい)、11月の新嘗祭(にいなめさい)――宮中でも民間でも、最初の実りはまず神と祖先に供えられ、感謝が捧げられてきました。当たり前のように食卓にのぼる一杯のご飯の背後に、一年の労苦と、自然への祈りと感謝の積み重ねがある――禾乃登の候は、その「いただきます」の原点を、そっと思い起こさせてくれます。
「米」という字は「八十八」を組み合わせた形だとも言われ、米づくりには八十八もの手間がかかる、という昔の人の実感がこめられているといいます。種もみを選び、苗を育て、田を起こし、水を引き、草を取り、虫を払い、ようやく実った稲を刈り、干し、脱穀する――その一つひとつの労を思えば、茶碗の一粒もおろそかにはできません。禾乃登は、その「八十八の手間」が実りという形に報われる、農の喜びの候でもあります。
実りの秋の味覚
稲だけでなく、この頃からは秋の味覚が次々と出そろい始めます。新米はもちろん、走りの新そば、ぶどうや梨や無花果(いちじく)、さんま――夏の名残と秋の実りが入りまじる食卓は、季節の移ろいそのものです。残暑のなかにも、舌で秋を感じられるのが、この禾乃登の頃です。
黄金の波 ─ 実りの風景と稲架掛け
禾乃登の頃、田は一面の黄金色に染まります。風が吹くたび、たわわな稲穂が波のようにうねる――その景色は、日本の秋を代表する原風景のひとつです。やがて稲が刈り取られると、地域によっては「稲架(はさ/はざ)掛け」が始まります。刈った稲束を横木に掛けて天日で干すこの方法は、稲をゆっくり乾かし、茎に残る養分を米へと送って、味わいを深めるといわれます。
田んぼに点々と並ぶ稲架の列もまた、秋の風物詩でした。機械乾燥が主流になった今では見かける機会が減りましたが、天日干しの米のふっくらとした甘みを慕う声は、いまも絶えません。黄金の波と、稲架の影――禾乃登の候は、実りの豊かさを目に焼きつける、一年でいちばん満ち足りた田の景色を見せてくれます。
禾乃登5日間の歩き方
- 9月2日(水)先負:午後の行動が吉。九月の始まり、無理なく仕事や用事を進めて。
- 9月3日(木)仏滅:静かに整える日。実りの秋に向けて、暮らしの支度を見直すのに向きます。
- 9月4日(金)大安:5日間で最も吉日らしい一日。改まった事やお祝いごとに好適です。
- 9月5日(土)赤口:火に注意する日。穏やかに過ごし、夏の疲れをいたわって。
- 9月6日(日)先勝:午前の行動が吉。始め事の種まきに縁起のよい日。翌日からは白露、秋本番です。
福カレンダー編集部の禾乃登ノート ─ 三つのおすすめ
- 実りに感謝する:たわわに実る稲穂は、一年の労苦と自然の恵みの結晶。新米の季節を前に、食への感謝をあらためて思い出したい候です。
- 台風に備える:実りの一方で、二百二十日が控える台風シーズン。空模様に気を配り、備えを怠らないようにしましょう。
- 走りの秋を味わう:新米や新そば、秋の果実が出回り始める頃。季節の先取りの味で、舌から秋を迎えてみてください。
稲穂が黄金色に実り、頭を垂れる5日間。これで処暑の三候は締めくくり、暦は次の節気・白露へと進みます。露が白く輝き、秋がいよいよ深まっていく季節の入り口です。
参考
参考文献・出典
- 暦計算室— 国立天文台 暦計算室(参照: 2026-06-03)
- 七十二候 (Wikipedia 日本語版)— Wikipedia(参照: 2026-06-03)
- 日本の暦 -国立国会図書館-— 国立国会図書館(参照: 2026-06-03)
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野分 蓮干支と暦の研究家
- 十干十二支
- 二十四節気
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十干十二支・二十四節気・自然と暦の関わりを、歴史と科学の両面から掘り下げる研究家肌の編集者。古文書の記述と現代の気象データを突き合わせるような、知的好奇心を刺激する考察記事を得意とする。
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