七十二候 霜始降 2026 ─ 10月23日〜27日、霜降初候 野に初霜が降り後の月を仰ぐ5日

この記事でわかること
霜降初候『霜始降(しもはじめてふる)』は2026年10月23日〜27日。よく晴れた風のない夜の放射冷却で、野に初めて霜が降りる頃を読み解きます。中国の宣明暦『豺乃祭獣』を略本暦が書き換えた候の系譜、初霜と紅葉が冴える仕組み、初日が旧暦九月十三日『後の月(十三夜)』にあたる名月の夜、片月見を忌む習わしにも触れます。
目次
きりぎりすが戸口で鳴きおさめた寒露(51候・蟋蟀在戸)を承け、暦はいよいよ秋のさいごの節気――霜降(そうこう)へと入ります。**2026年10月23日(金)から10月27日(火)までの5日間が、七十二候の第五十二候「霜始降(しもはじめてふる)」**です。「霜(しも)始(はじ)めて降(ふ)る」――野にはじめて霜が降り、露が凍りつくほどに冷えこむ頃を指しています。
私(野分蓮)は福カレンダー編集部で二十四節気・七十二候を担当しています。霜始降は、霜降という節気の幕開けを告げる初候であり、節気名そのものを冠する数少ない候のひとつです。寒露のあいだに草木へ宿っていた露が、いよいよ夜の冷えに耐えきれず、白い霜へと姿を変える――露から霜への、この静かな相転移こそが、暦が「霜降」と名づけた季節の核心です。中国の宣明暦では、霜降の初候に「豺乃祭獣(さいすなわちけものをまつる)」――山犬が捕らえた獣を供えものを並べるように置く候が据えられていました。けれども日本の略本暦は、この大陸由来の候を「霜始降」へと書き換えています。霜降の三候はいずれも日本独自に編み直された候で、獣の所作を語る漢土の暦に対し、日本の暦は、野に降りる白い霜という、より身近な自然のしるしを選び取りました。
2026年の霜始降は、初日の10月23日が、ちょうど旧暦九月十三日の「後の月(のちのつき)」――中秋の名月に次ぐ名月の夜にあたる、めずらしい巡り合わせの5日間です。冷えこむ朝には野に初霜が白く光り、夜には十三夜から満月へと月が満ちてゆく、秋の終わりと冬のきざはしが重なる頃合いです。
霜始降とは ─ 野に初めて霜が降りる、霜降の初候
霜始降は、太陽黄経が210度に達して霜降に入った最初の候です。「霜降」とは、露が冷えて霜となり、野山に初霜が降りはじめる頃を表す節気。寒露のあいだ草葉に結んでいた露の玉が、夜ごとに増す冷えのなかで、ついに凍りついて白い霜へと変わってゆきます。
では、霜はどのようにして降りるのでしょうか。霜は雨や雪のように空から降ってくるのではなく、地表近くで生まれます。よく晴れて風のない夜には、昼のあいだ地面にたくわえられた熱が、さえぎるものもなく宇宙へと逃げてゆきます。これを「放射冷却」と呼びます。雲は地表の熱に蓋をするはたらきをしますが、雲のない晴れた夜にはその蓋がなく、地表はぐんぐん冷えこんでいきます。やがて地面に近い空気の温度が氷点下まで下がると、空気中の水蒸気が、冷えた草や落ち葉の表面に直接、氷の結晶となってまといつく――これが霜です。つまり「霜が降りた朝はよく晴れる」という言い伝えは、まったく逆で、よく晴れて風のない夜だからこそ放射冷却がはたらき、霜が降りるのです。霜の朝が決まって澄みわたるのは、こうした道理によるものでした。
2026年の暦配置 ─ 後の月(十三夜)から満月へ満ちゆく夜空
2026年の霜始降(10月23日〜27日)は、初日が旧暦九月十三日の十三夜にあたり、月がそこから日ごとに満ちて、満月へと至る5日間です。
| 日付 | 六曜 | 月相 | 暦注・行事 |
|---|---|---|---|
| 10月23日(金) | 先負 | 十三夜月 | 霜降・後の月(十三夜)・一粒万倍日 |
| 10月24日(土) | 仏滅 | 小望月 | ─ |
| 10月25日(日) | 大安 | 十五夜月 | 大安 |
| 10月26日(月) | 赤口 | 満月 | 一粒万倍日 |
| 10月27日(火) | 先勝 | 立待月 | ─ |
初日10月23日(金)が霜降の節入りであり、この夜の月こそが、旧暦九月十三日の「後の月(十三夜)」です。十三夜の、まだ満ちきらぬ月は、そこから一夜ごとに丸みを増し、小望月(こもちづき)から十五夜の月へとふくらんで、やがて満月を迎えます。満月を過ぎれば、月の出が少しずつ遅れて、立って待つほどになる「立待月(たちまちづき)」へ。後の月の宵からまんまるの満月まで、月がいちばん華やぐ夜のかさなりが、この候の5日間です。期間中には始め事に縁起のよい吉日や、暦のうえでめでたい日も含まれますが、日ごとの六曜・吉日は、上の表をご覧ください。月のかたちと暦注を手がかりに、霜の朝と名月の夜を、一日ずつ味わってみてください。
初霜と「後の月」 ─ 冷えこむ朝と、名月の夜
霜始降の魅力は、ひとつの候のなかに、冷えこむ朝の初霜と、月さやかな夜の名月という、対照的なふたつの美しさが宿るところにあります。
放射冷却で初霜が降りるほどに冷えこむ朝は、同時に、空気がきわめて澄みわたる朝でもあります。塵や水気の少ない乾いた大気は光をよく透し、遠くの山並みまでがくっきりと見え、紅葉の色がいっそう冴えて目に映ります。じつは、楓や櫨(はぜ)の葉が鮮やかに紅へと染まるのも、この時季の冷えこみと深くかかわっています。葉のなかに残った糖が、昼の日ざしと夜の冷えこみという大きな寒暖差にさらされることで、紅い色素(アントシアニン)へと変わってゆくのです。よく冷えこんだ朝の翌日に、山の紅葉が一段と色づいて見えるのは、気のせいではありません。初霜の便りと紅葉の便りが、ほぼ時を同じくして北から南へ下りてくるのも、同じ冷えこみが二つの現象を同時に進めているからなのです。霜の白と紅葉の朱――霜始降の朝は、この国の秋がもっとも色を深める瞬間でもあります。
後の月見と「片月見」の習わし
そして2026年の霜始降は、その初日が旧暦九月十三日――「後の月(のちのつき)」、すなわち「十三夜(じゅうさんや)」にあたります。旧暦八月十五日の中秋の名月(十五夜)に対して、約一か月のちのこの十三夜の月を賞でる習わしを「後の月見」といい、十五夜とならぶ二大名月として、古くから愛されてきました。十三夜は、この頃に実る栗や枝豆を供えることから「栗名月(くりめいげつ)」「豆名月(まめめいげつ)」とも呼ばれます。満ちきらぬ、わずかに欠けた月をこそ美しいとする後の月見には、完全をよしとせず、足りなさのうちに趣を見いだす、日本人ならではの美意識がにじんでいます。
古い習わしでは、十五夜と十三夜は、できれば同じ場所で対にして眺めるものとされ、片方だけしか月見をしないことを「片月見(かたつきみ)」と呼んで忌みました。せっかくの名月を片方だけで終えるのは縁起がよくないとして、両方の月を仰ぐことが尊ばれたのです。今年は霜降の初日がそのまま後の月の夜。中秋の名月をめでた方は、ぜひこの十三夜にも、もう一度静かに月を仰いでみてください。
霜始降5日間の歩き方
- 10月23日(金)霜降:露が霜へと変わる節気の始まり。この夜は旧暦九月十三日の後の月。栗や豆を供えて、満ちきらぬ十三夜の月を仰いでみてください。
- 10月24日(土)小望月:満月の一夜前、丸みを増した小望月が東の空に。よく晴れた朝には、野の枯れ草に初霜が光っていないか、足もとを探してみましょう。
- 10月25日(日)大安:六曜でもっともよいとされる日。日中は澄んだ空のもと色づきはじめた紅葉を訪ね、夜は十五夜のまるい月を見上げてみては。
- 10月26日(月)満月:月がまんまるに満ちる夜。一年でも空気の澄む頃の満月です。冷えこむ宵、窓辺で皓々と照る月の光を静かに浴びてみてください。
- 10月27日(火)先勝:満月を一夜過ぎ、月の出がやや遅れる立待月へ。立って待つほどの月を縁側に迎えながら、深まりゆく秋を惜しんで。
福カレンダー編集部の霜始降ノート ─ 三つのおすすめ
- 初霜を探す:よく晴れて風のない朝こそ霜の降りる朝。早起きして、野の枯れ草や落ち葉のふちに白く結んだ霜の結晶を探してみてください。放射冷却が生んだ、その朝だけの白い造形がそこにあります。
- 後の月を仰ぐ:初日の23日は旧暦九月十三日の後の月。栗名月・豆名月とも呼ばれるこの夜、満ちきらぬ十三夜の月を、栗や枝豆を供えて愛でてみましょう。中秋の名月を見た方は、片月見を避けてもう一度の月見を。
- 紅葉の色づきを味わう:冷えこむ朝の翌日は、紅葉が一段と冴えるとき。霜の朝の澄んだ空のもと、寒暖差が深めてゆく楓や櫨の朱に、秋の色の極まりを見つけてみてください。
野に初霜が降り、後の月から満月へと夜空が満ちてゆく5日間。次の候は、霜降の次候「霎時施(こさめときどきふる)」。さっと降ってはやむ通り雨が時雨(しぐれ)となり、山を染め上げ、やがて木の葉を散らしてゆく――冬のきざはしへと、秋はいよいよ最後の道のりをたどっていきます。
参考
- 国立天文台 暦計算室「暦象年表」(霜降=太陽黄経210度の定義および2026年10月の節気日・月相・満月の時刻)
- 略本暦(明治7年改暦)における霜降初候「霜始降」、中国・宣明暦の初候「豺乃祭獣」との対照
- 初霜と放射冷却の仕組み、寒暖差と紅葉(アントシアニン)の関係、後の月(十三夜・栗名月・豆名月)と「片月見」を忌む風習
- 福カレンダー暦マスターデータ(2026年10月の六曜・月相・一粒万倍日・旧暦)
参考文献・出典
- 暦計算室— 国立天文台 暦計算室(参照: 2026-06-03)
- 七十二候 (Wikipedia 日本語版)— Wikipedia(参照: 2026-06-03)
- 日本の暦 -国立国会図書館-— 国立国会図書館(参照: 2026-06-03)
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野分 蓮干支と暦の研究家
- 十干十二支
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十干十二支・二十四節気・自然と暦の関わりを、歴史と科学の両面から掘り下げる研究家肌の編集者。古文書の記述と現代の気象データを突き合わせるような、知的好奇心を刺激する考察記事を得意とする。
この編集者の記事を見る →この記事について
本記事は一般的な暦の知識や伝統的な解釈に基づいています。 占いの結果を保証するものではありません。最終的な判断はご自身でお願いします。
免責事項を読む →福カレンダーでは、暦に関するコンテンツを正確かつ分かりやすくお届けするよう努めています。
編集方針について →参考情報:暦注・民俗資料、公的機関の暦情報を参考に編集部が整理しています。
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