柏餅と暦2026 ─ 5月5日端午の節句、「葉が落ちぬまで子は絶えぬ」家督継承の縁起菓子と関東関西の柏文化

目次
新緑の風が吹き抜ける和菓子屋の店先に、青々とした葉でくるまれた白い餅が並びはじめる季節 ── 五月の顔をいちばん早く知らせてくれる和菓子は、やはり柏餅でしょうか。葉を一枚はがすと、ふわりと立ちのぼる薫風そっくりの香り。手のひらに包んだ餅のひんやりとしたやわらかさ。福カレンダー編集部の旬野椿(しゅんの・つばき)は、毎年この瞬間を待っている節があります。
柏餅は、ただの「五月の和菓子」ではありません。新芽が出るまで古葉が一枚も落ちないカシワの木に、「家系が絶えない」という千年規模の願いを託した、れっきとした縁起菓子です。江戸時代の武家社会から広がり、関東はカシワ、関西はサルトリイバラという二つの葉文化を育て、餡の種類で葉の向きを変える江戸の粋まで生み出してきました。
2026年の端午の節句は5月5日(火)。立夏と一粒万倍日が重なる、暦的にも力の集まる一日です。今回は柏餅にまつわる文化と暦を、福カレンダー編集部の暦データとともにひもといていきます。
「家系が絶えない」── カシワの葉が背負う千年の願い
カシワ(槲)はブナ科コナラ属の落葉樹で、日本の山野に広く自生します。和菓子の世界で柏餅の葉として尊ばれるようになった理由は、ひとえにその「葉が落ちない」性質にあります。
普通の落葉樹は晩秋に葉を落とし、冬を裸枝で過ごします。ところがカシワは違う。秋になっても葉を落とさず、翌春に新芽が展開するまで、茶色く枯れた葉を枝にしがみつかせたままにします。新しい命が確かに芽生えたのを見届けてから、ようやく古い葉は静かに散っていく ── そんな振る舞いを毎年律儀にくり返す木です。
江戸時代の人々は、ここに親と子の姿を重ねました。新芽は子、古葉は親。子が育つまで親は決して退場しない。ゆえにカシワの木の下では「家系が絶えない」「子孫繁栄」と読み解いたわけです。
この縁起を端午の節句の餅に結びつけたのは、江戸時代中期 ── 徳川九代将軍家重から十代家治の頃と伝わります。武家社会では男子の成長と家督の継承が一族の存亡を左右しましたから、跡継ぎを祝う五月五日に「家系継続」を象徴する葉でくるんだ餅を供えるのは、極めて自然な選択でした。江戸の風習はやがて参勤交代の往復によって全国の城下町へと伝わり、明治・大正を経て庶民の節句菓子として定着していきます。
旬野椿が和菓子の歴史資料を読み返していて改めて驚いたのは、1930年代頃まで「カシワの葉でくるんだ柏餅」は関東を中心とした文化だった、という事実です。私たちが今日「柏餅といえばカシワの葉」と感じるのは、戦後に流通網が整い、後に韓国や中国から葉が輸入されるようになって、関東流のスタイルが全国の和菓子屋に行き渡った結果でもあります。「伝統」と感じているものが、実は百年に満たない新しい風景であることは、歳時記を読むときに何度も出会う発見ですね。
関東のカシワ vs 関西のサルトリイバラ ── 葉が描く東西文化の地図
では関西や西日本では、江戸時代から戦前までどんな葉で柏餅を包んでいたのか。答えは「サルトリイバラ」── 別名サンキライ、山帰来(さんきらい)と呼ばれるユリ科の蔓性植物の葉です。
西日本にはカシワがほとんど自生しません。植物の分布が違えば、人々が手にする葉も自ずと変わります。サルトリイバラは関西から西、四国・九州の里山に普通に生え、葉は丸みを帯びた楕円形で先がやや尖り、手のひらにそっと収まるサイズ感。地域によっては「いばら餅」「しばもち」「かからん団子」など、葉の名前そのものが菓子名になっているところさえあります。
カシワとサルトリイバラの違いは、ただの植物学的差異にとどまりません。葉の使い方そのものが異なります。
| 葉 | 主な地域 | 形状 | 包み方 | 食べる? |
|---|---|---|---|---|
| カシワ | 関東以北 | 兜のような切れ込み・厚手 | 「くるむ」 | 食べない(防腐目的) |
| サルトリイバラ(山帰来) | 関西以西 | 丸い楕円・薄手 | 「はさむ」 | 食べることもある |
カシワの葉は厚く破れにくく、防腐性が高いため、餅をしっかり「くるんで」保存に活かす使い方が定着しました。一方サルトリイバラの葉は丸く小ぶりで柔らかく、餅をぺたんと「はさむ」ように添えます。柔らかさゆえに葉ごと食べてしまう習慣が残る地域もあり、京都の老舗の中には「葉も召し上がれます」と書き添えるお店もあります。
旬野椿が四国・愛媛の市場を歩いていたとき、五月初旬の台所で「明日サンキライの柏餅を作るから葉を取ってきたよ」と、近所のおばあちゃまが里山から摘んできた葉を見せてくれたことがありました。葉の裏側にうっすらと白い粉が乗っていて、それが指に触れるとさらりと落ちる ── あの感触は、お店で買うカシワ葉ではなかなか出会えない、土地の手仕事の感触でした。
関東のカシワは「武家文化と参勤交代が運んだ江戸の縁起」、関西のサルトリイバラは「土地の植生がそのまま暦の食卓に立ち現れた里の知恵」。同じ「柏餅」という言葉のなかに、二つの異なる文化が共存しているのが、この菓子の奥深さです。
表か裏か ── 餡が決める「葉の向き」と江戸の粋
柏餅の餡は、大きく分けて三種類が知られています。
- 小豆こし餡 ── もっとも一般的。透明感のある上品な甘さ
- 小豆つぶ餡 ── 関東で人気。豆の存在感がしっかり
- 味噌餡 ── 白あんに白味噌を練り込んだ、塩気とコクのある餡。東日本に多く、ピンクや黄色の生地で包まれることが多い
東日本では小豆餡(こし・つぶ)と味噌餡の両方が和菓子屋の店頭に並びますが、西日本では「柏餅といえば小豆餡」が圧倒的に主流とされます。京都の老舗には例外的に味噌餡を扱うお店もありますが、それも近年の選択肢として登場した印象が強い。日本あんこ協会の都道府県別調査でも、味噌餡のシェアは関東甲信越と東北の一部に集中していると報告されています。
そしてここからが、江戸の和菓子屋の粋なところです。
古い和菓子屋には「葉の向きで餡を見分ける」しきたりが残っています。葉の表(つるつるした側)を内側にしてくるんでいたら小豆餡、外側にしてくるんでいたら味噌餡 ── そんな目印があれば、お客は包みを開く前に中身を選べる、という符牒です。
| 餡 | 葉の表(つるつる) | 巻き方 |
|---|---|---|
| 小豆餡(こし・つぶ) | 内側 | 外表(葉の表が見える) |
| 味噌餡 | 外側 | 中表(葉の裏が見える) |
逆を採用するお店もあり、ルールは地域や老舗ごとに違うのが実情ですが、共通しているのは「言葉ではなく葉の向きで伝える」という日本らしい所作。和菓子屋の店主が一個ずつ手で巻きながら、無言のうちに餡を伝えていた ── そんな景色が浮かんできます。福カレンダー編集部の旬野椿は、和菓子屋に入ったらまず柏餅の葉の向きをそっと見比べてみることをおすすめしています。お店ごとの「葉の文法」が読めると、節句の朝の和菓子選びがぐっと楽しくなりますね。
塩瀬総本家のように葉の色そのもので餡を区別するお店もあり(こし餡には茶色、味噌餡には緑の柏葉)、地域や店ごとの工夫が今も続いているのが柏餅の世界の面白さです。
2026年・暦が選ぶ「柏餅を買う・食べる」吉日カレンダー
ここからは福カレンダー編集部の暦データを開いて、2026年5月の柏餅日和をご案内します。日付は新暦、暦注は福カレンダーの暦マスター(NAOJ公式値準拠)に基づきます。
◎ 5月2日(土)赤口・一粒万倍日・満月
GW初日の土曜。赤口は正午前後だけが吉とされる日ですが、一粒万倍日と満月(フラワームーン)が重なる、五月でも屈指の力の集まる一日です。八十八夜の翌日でもあり、立春から数えて新茶が出回る時期 ── 連休前の準備として、和菓子屋の柏餅と新茶を一緒に買い揃えるのに向いた土曜日です。「種まき」の意味を持つ一粒万倍日は、家族の節句の準備を始めるにぴったりの暦と言えるでしょう。
◎ 5月3日(日)先勝・大明日(憲法記念日)
公開日でもあるこの日は、先勝で午前中が吉。大明日(だいみょうにち)は「太陽の光が万物を明るく照らす」吉日とされ、家族で過ごすGW前半の準備行動に向きます。和菓子屋を午前中に覗いて、節句当日の予約をしておく ── そんな段取りに合う一日です。
◎ 5月4日(月祝)友引・天赦日・寅の日・大明日(みどりの日)
2026年でいちばんの「最強開運日」が、ここに鎮座しています。年に数日しかない天赦日(てんしゃにち)に、金運の寅の日と大明日が重なる三重吉日。詳しくはGW最強開運日2026年5月4日の暦解説で深掘りしていますが、柏餅の文脈で言えば、この日の和菓子屋には味噌餡の柏餅をぜひ選んでみてほしい。塩気を含む味噌餡の重みは、天赦日の「すべてを赦す」鷹揚な空気とよく似合います。
◎ 5月5日(火)先負・一粒万倍日・立夏(端午の節句・こどもの日)
端午の節句当日にして立夏。二十四節気で夏が始まる節目に、一粒万倍日が寄り添うという、年に一度しかない希少な配置です。先負は午後が吉ですから、午後三時のおやつ時に家族で柏餅を ── という暦の流れがそのまま伝わってきます。素直なこしあんの柏餅で、暦の節目を祝うのにふさわしい日付です。立夏の細かい意味については立夏2026 5月5日こどもの日×立夏×一粒万倍日の開運三重デーで詳述しています。
◎ 5月6日(水)仏滅・一粒万倍日・大明日(振替休日)
仏滅と一粒万倍日が重なる珍しい一日。仏滅は六曜の凶日ですが、「物が滅して新たに生まれる」と読み替える伝統もあり、一粒万倍日と組み合わさるとリセット+種まきの暦になります。GW最終日の余韻として、残り物の柏餅をお茶と一緒にゆっくり味わうのに向く一日です。
◎ 5月7日(木)大安・巳の日・大明日
巳の日は弁財天の遣いとされる蛇にちなんだ吉日で、財運・芸事・縁結びに御利益があると伝わります。大安・巳の日・大明日と三つ揃う木曜日は、GW明けの仕事始めにあえて和菓子と新茶でひと息つく ── そんな選択もまた、暦と暮らしを結びつける一つの作法です。
◎ 5月30日(土)大安・一粒万倍日
5月最後の土曜日に大安と一粒万倍日が重なります。柏餅は基本的に節句前後の和菓子ですが、味噌餡の柏餅は江戸では六月初旬まで店頭に並んでいた記録もあり、五月の締めくくりに「節句のお礼参り」のつもりで一個求めるのも、暦に寄り添う食べ方の一つでしょう。
5月の暦全体を見渡したい方は、福カレンダーの5月の暦と開運カレンダー2026もあわせてご覧ください。
旬野椿の柏餅メモ ── 葉を香る、餡を選ぶ、暦を味わう
柏餅を求めて和菓子屋に入ったら、まず葉の向きと色を一通り眺めてみてください。葉の表が外を向いていたら味噌餡かもしれない。葉の色が茶色めだったら、別の餡を区別している老舗かもしれない。お店の暦に従って手を動かしているお菓子の表情を、目で読む時間そのものが、節句の「儀式」の前半部分です。
家に帰って手のひらに乗せたら、葉を一枚はがす前に、まず鼻先に近づけて香りを確かめてみてほしい。カシワの葉特有の、青さと甘さが混じった独特の薫りがふわりと立ちのぼります。サルトリイバラなら、もう少し穏やかで土の匂いが残る、里山の香り。それから一口かじって、餅の柔らかさと餡の甘さ、そして葉の香りが舌に残る順番をゆっくり楽しんでみてください。
翌日まで残す場合は、葉ごとラップで包んで常温保存。冷蔵庫に入れると餅が固くなりやすいので、二十四時間以内であれば室温の風通しのよい場所が向きます。葉自体に防腐効果があるからこそ、江戸の人々はこの菓子を端午の節句のごちそうに選んだのですね。
旬の食材ガイドとしては立夏の旬|そら豆・新茶・初鰹で夏の恵みを味わうで、柏餅と相性のよい新茶や初夏の食材を紹介しています。端午の節句全体の準備については端午の節句2026年 準備ガイド|吉日・鯉のぼり・兜・柏餅もご参考ください。
千年前のカシワの木が、新芽が出るまで頑として古葉を落とさなかった律儀さ。江戸の和菓子屋が、餡の種類を葉の向きでそっと伝えた粋。関西のおばあちゃまが、里山のサルトリイバラを今年も摘んできた手仕事。柏餅という小さな白い餅のなかには、こうした細かな営みが何重にも層をなして潜んでいます。
2026年5月5日(火)、立夏と一粒万倍日が重なる端午の節句。福カレンダーの吉日カレンダーで前後の暦を確かめながら、葉の向きを一度確かめて、どうぞ柏餅をひとつ手に取ってみてください。今日の食卓に乗せた一個の餅が、千年続いた家系継承の願いと、江戸の和菓子屋の粋と、五月の薫風のすべてを、確かに運んできてくれます。
— 旬野椿(旬と食の歳時記)
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旬野 椿旬と食の歳時記
旬の食材と暦の関わりを、五感に訴える文章で届ける食の歳時記編集者。二十四節気に寄り添った食卓の提案から、旬の素材の選び方・保存法まで、暦を「食べる」楽しさを伝えている。
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本記事は一般的な暦の知識や伝統的な解釈に基づいています。 占いの結果を保証するものではありません。最終的な判断はご自身でお願いします。
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編集方針について →参考情報:暦注・民俗資料、公的機関の暦情報を参考に編集部が整理しています。
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