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春日大社(奈良)2026 ─ 砂ずりの藤×神鹿×万葉植物園、世界遺産で読む五月の参拝

旅河 楓旅と祈りの編集者·2026.06.12 更新·約8分
春日大社(奈良)2026 ─ 砂ずりの藤×神鹿×万葉植物園、世界遺産で読む五月の参拝

この記事でわかること

近鉄奈良駅から東へ徒歩二十五分。神護景雲二年(七六八年)に創建された世界遺産・春日大社は、樹齢七百年とも伝わる砂ずりの藤、神の使いの鹿、万葉植物園と春日造の本殿が織りなす千二百五十八年の杜。藤の見頃の五月と、八月十四日からの中元万燈籠を、福カレンダーが暦から読み解く。

目次
  1. 1.砂ずりの藤と神鹿の杜 ─ 春日山の麓に降りる五月の風
  2. 2.神護景雲二年の創建と春日神四柱 ─ 鹿島から飛来した武甕槌命の神話
  3. 3.万葉植物園と式年造替 ─ 千二百五十八年を貫く「常若」の思想
  4. 4.二〇二六年五月の参拝適日 ─ 暦が選ぶ「藤×初夏の春日詣」三候補
  5. 5.中元万燈籠と節分の灯り ─ 三千の燈籠に灯る千年の祈り
  6. 6.旅河楓の取材メモ ─ 鹿の瞳に映る、奈良の時間

近鉄奈良駅を出て、東へ。一の鳥居を抜けると、参道の両側に石燈籠が並びはじめる。三千近いとも言われるその列は、行けども行けども尽きる気配がない。やがて二の鳥居が現れ、また石段。視界の片隅に、鹿が四、五頭、草を食んでいる。観光客が手を伸ばすと、ゆっくりと顔を上げ、また食み続ける。

ここは春日大社(かすがたいしゃ)。神護景雲二年(西暦七六八年)に春日神四柱を勧請したのが始まりとされる、世界遺産「古都奈良の文化財」の一社である。福カレンダーが二〇二六年・午年の特集で関西エリアを掘る取材を進めるなかで、最後に残っていた一社。実際に歩いてみて、その「最後」の意味が分かった気がした。これは速度のある社ではない。千年以上の時間を重ねてきた杜(もり)のなかで、ゆっくり立ち止まることでしか入れない場所だ。

砂ずりの藤と神鹿の杜 ─ 春日山の麓に降りる五月の風

春日大社の御本殿前に、ひと幅の幕のように垂れ下がる藤の花がある。樹齢七百年を超えるとも伝わる「砂ずりの藤」。花房の長さがおよそ一メートル半に達し、地面の砂をすって(ずって)伸びることから、その名がついた。見頃は例年五月上旬。緑の社叢に朱塗りの社殿が映え、淡い紫の房が静かに揺れる景色は、奈良の春の象徴のひとつとされている。

藤は、かつて藤原氏の家紋であり、春日大社にとっては社の歴史そのものを表す花でもある。福カレンダーの藤の花と暦2026でも触れられているとおり、藤は万葉集にも繰り返し詠まれてきた花であり、この社の万葉植物園にも数多くの品種が植えられている。

砂ずりの藤の前に立つ参拝者の足元には、必ずと言っていいほど鹿がいる。春日大社の神使である鹿は、奈良公園一帯で千頭以上が暮らし、国の天然記念物「奈良のシカ」として保護されている。藤と鹿、緑と朱、千年を超える杜の静けさ──この四つが揃って初めて、春日大社の景色は完成する。

神護景雲二年の創建と春日神四柱 ─ 鹿島から飛来した武甕槌命の神話

社伝によれば、藤原氏の氏神として、奈良時代の神護景雲二年(七六八年)に春日神四柱を勧請したのが始まりとされる。それ以前にも背後にそびえる御蓋山(みかさやま)は神奈備(かんなび)として信仰されており、現在もなお禁足地として人の足を踏み入れることが禁じられている。

御祭神は四柱。第一殿に武甕槌命(たけみかづちのみこと)、第二殿に経津主命(ふつぬしのみこと)、第三殿に天児屋根命(あめのこやねのみこと)、第四殿に比売神(ひめがみ)。武甕槌命は常陸国の鹿島神宮(東国三社詣2026で詳述)から、白い鹿に乗って春日の地に降り立ったと伝わる。鹿が神の使いとされるゆえんは、ここにある。

旅河楓(福カレンダー編集部)が全国の社寺を取材するなかで気づいたのは、春日大社のように「神話」と「土地の風景」が地続きにある場所はそう多くないということだ。鹿島から飛来した白鹿の伝承は、ただの物語ではない。境内のどこを歩いても、その物語の続きとして鹿が歩いている。社伝が今も生きている、と表現するほかない。

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万葉植物園と式年造替 ─ 千二百五十八年を貫く「常若」の思想

二の鳥居の手前に位置する萬葉植物園には、万葉集に詠まれたおよそ三百種の植物が四季を通じて咲き継がれている。五月初旬の藤の園では二十品種を超える藤が一斉に開き、淡い紫から濃い紫、さらに白や八重咲きまで、藤というひとつの花の奥行きを見せる。アヤメ、カキツバタ、ハナショウブが続いて咲く五月後半までは、植物園の表情がもっとも豊かな季節となる。

春日大社のもうひとつの特徴は、二十年ごとに社殿を修造する「式年造替」という制度である。最近では二〇一五年から二〇一六年にかけて第六十次が執り行われ、本殿の檜皮葺の屋根の葺き替えと装飾金具の修復が完了した。次回は二〇三六年に予定されている。社殿そのものを古びさせず、常に若々しく保つ──伊勢神宮の式年遷宮とも通じるこの思想は「常若(とこわか)」と呼ばれる。創建から千二百五十八年を数える杜が、今もなお新しい木の香りを失わない理由は、ここにある。

二〇二六年五月の参拝適日 ─ 暦が選ぶ「藤×初夏の春日詣」三候補

砂ずりの藤の見頃に合わせて参拝するなら、福カレンダー独自の暦データから三日を挙げたい。いずれも二〇二六年五月、奈良の藤の盛りと重なる。

◆ 五月四日(月・祝)友引/みどりの日/天赦日・寅の日/十六夜

二〇二六年で最強級の開運日。年に六度しかない天赦日が、寅の日(金運を呼び込む十二支日)と重なる稀有な一日である。福カレンダーの2026年5月4日 天赦日×寅の日に詳しいが、要するに「年に一度しかない決断・参拝・新調にこの上ない日」。砂ずりの藤の見頃のピークとも重なるため混雑は覚悟したい。早朝の開門と同時に参道に立つのが、福カレンダー編集部の推奨だ。

◆ 五月五日(火・祝)先負/こどもの日/一粒万倍日/立夏

立夏(りっか)の節入り日。福カレンダーの立夏2026が解くとおり、暦の上では夏の始まりに当たる。一粒万倍日と重なるため、新しい挑戦の宣誓を春日神に届けるなら好機。こどもの日のため家族連れが多く、奈良公園全体が祝祭ムードに包まれる。

◆ 五月七日(木)大安/巳の日/十六夜

GW明けの最初の平日。大安に巳の日(弁財天と縁深い財運の日)が重なる、五月で随一の静かな吉日。混雑を避け、砂ずりの藤の前で時間を取りたい人にはこの日がもっとも向く。本殿前の砂ずりの藤と、萬葉植物園の藤の園、両方をゆっくり巡れるのは平日の余裕があってこそだ。

中元万燈籠と節分の灯り ─ 三千の燈籠に灯る千年の祈り

春日大社が「灯りの社」と呼ばれるのは、参道と回廊に並ぶおよそ三千の燈籠ゆえだ。年に二度、その全燈籠に火が灯される神事がある。八月十四日・十五日の「中元万燈籠」と、二月節分の日の「節分万燈籠」である。

二〇二六年の中元万燈籠は八月十四日(金)友引、十五日(土)先負。盆の入りを過ぎた静かな二夜、奈良盆地に三千の灯りが揺れる。十四日の月は新月、十五日は繊月(せんげつ)と、いずれも月齢が浅く、空が暗いほどに燈籠の光が際立つタイミングである。福カレンダー編集部が暦から推すなら、満月の参拝も美しいが、新月直後の闇のなかに灯る燈籠こそが、この社の本来の祈りの姿に近い。

夜の境内に立てば、足元の石燈籠から、屋根を支える吊燈籠まで、視界のすべてに点灯の波が広がっていく。観光客の話し声もいつしか低くなり、聞こえるのは木々を抜ける風の音と、灯油の燃える微かな音だけ。福カレンダーの取材の夜、参道の途中で立ち尽くしてしまったのは、私だけではなかったはずだ。

旅河楓の取材メモ ─ 鹿の瞳に映る、奈良の時間

二の鳥居から本殿へ向かう途中、参道の脇で寝そべっていた小鹿と目が合った。口元には食べ残しの草が一筋。瞳のなかに、自分の姿と、参道の石燈籠と、五月の薄曇りの空が、すべて映って見えた。

千二百五十八年。神護景雲の御代から、藤も鹿も燈籠も、姿を変えずにここにいる。式年造替で社殿は若返りつつ、藤と鹿は時間の流れのなかで連綿と続いている。福カレンダーが午年・二〇二六年に関西の社寺をめぐる旅で、最後に春日大社を取り上げた理由はそこにある。これは速度を捨てて、時間そのものに身を預ける場所だ。

二〇二六年の五月、もし奈良に行く予定があるならば、福カレンダーの午年に巡りたい神社・パワースポットガイド、京都「馬ゆかり」3社めぐり2026とあわせて、一日だけでも春日山の麓に時間を空けてほしい。鹿の瞳に映る奈良の時間は、暦のページを繰っているだけでは決して見えてこない。


参拝メモ

  • 鎮座地:奈良県奈良市春日野町160
  • アクセス:近鉄奈良駅から奈良交通バスで「春日大社本殿」下車すぐ/徒歩約二十五分
  • 御祭神:武甕槌命・経津主命・天児屋根命・比売神(春日神四柱)
  • 式年造替:二十年に一度(次回 第六十一次は二〇三六年予定)
  • 主な祭典:春日祭(三月十三日)/中元万燈籠(八月十四・十五日)/節分万燈籠(節分の夜)
  • 公式:kasugataisha.or.jp

📚参考文献・出典

  1. 春日大社 公式サイト— 春日大社(参照: 2026-05-02)
  2. 神社のいろは— 神社本庁(参照: 2026-05-02)

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