七十二候 竹笋生 2026 ─ 5月15〜20日、立夏末候に並ぶ寅の日・新月×一粒万倍日・天赦日「大地を裂く」6日間

目次
立夏のひかりが日ごとに強さを増す五月中旬、暦は立夏の最後の段──「末候」へと足を進めます。2026年5月15日(金)から20日(水)までの6日間が、七十二候の第二十一候「竹笋生(たけのこしょうず)」です。冬の間、地中に眠っていた竹の地下茎から、ようやく筍(たけのこ)が地表を割って伸び始める頃。立夏の「下から上へ」立ち上がる生命の三段活用 ── 蛙が田で鳴き、ミミズが土を耕し、最後に筍が大地を裂く ── その締めくくりにあたります。
そして2026年のこの6日間は、暦の上で異例の吉日密度を見せます。5月16日の寅の日に始まり、5月17〜18日の連続「新月×一粒万倍日」、5月19日の「巳の日×大明日」、そして5月20日の「天赦日×大明日×甲午」── 6日のうち5日が吉日重なりという稀な配置です。私(野分蓮)は福カレンダー編集部で二十四節気・七十二候を担当しながら、この6日間こそ「立夏が最も活動的になる助走路」だと感じています。今回は竹の植物科学と、5月後半の暦配置の両面から、竹笋生という三文字を読み解いていきます。
竹笋生 ─ 「たけのこ・しょうず」と読む立夏の締めくくり
「竹笋生」は たけのこしょうず と読みます。「たけ・の・こ」を一語として読み、続けて「しょうず」(生ず)と接続するのがこの候の正しい読み方です。「笋」は本来「筍」と同字で、若い竹の芽を指す漢字。漢音では「シュン」、訓では「たけのこ」と読みます。
七十二候とは、二十四節気をさらに3つに分けた約5日ごとの暦区分で、季節の微細な移ろいを動植物・気象現象の名で記したもの。立夏の三候は、いずれも地中から地上へ立ち上がる生命の動きを主題にしています。蛙が水辺で声を上げ、ミミズが土を耕し、最後に筍が大地を裂く ── 古人は「下から上へ」というベクトルで立夏の生命誌を記録しました。
| 候 | 読み | 期間 | 主題 |
|---|---|---|---|
| 立夏初候・第十九候 蛙始鳴 | かわずはじめてなく | 5/5〜5/9 | 田のカエルが鳴き始める |
| 立夏次候・第二十候 蚯蚓出 | みみずいずる | 5/10〜5/14 | ミミズが地表に這い出る |
| 立夏末候・第二十一候 竹笋生 | たけのこしょうず | 5/15〜5/20 | 筍が地面を裂いて伸びる |
蛙が「鳴く」、ミミズが「出る」、そして筍が「生ず」── 立夏の三候を貫くキーワードは、「地中から地上へ」の動詞群です。三段の最後に置かれた「生ず」は、地中での準備期間が長い分、地表に現れた瞬間の勢いが最も強い候とされています。前候・蛙始鳴(立夏初候)についてはで田の畔の声から読み解いています。
竹はなぜ「1日1メートル」伸びるのか ─ 末候を支える植物科学
民俗的解釈だけでは、この候の本当の凄みは見えてきません。なぜ立夏の末頃に筍が地表を割って伸びるのかを、植物学の側から整理しておきましょう。
竹(イネ科タケ亜科 Bambusoideae)は、地下に張り巡らせた地下茎(根茎・走り茎)から年に一度、新たな芽として筍を出します。日本で最も身近なモウソウチク(孟宗竹、Phyllostachys edulis)の場合、筍は地表に出る前から内部に節(ふし)の数を完成させた状態で地中に存在しています。地表に出てから「節を作る」のではなく、既にある節を一気に伸長させる方式で成長するのです。
この特殊な構造のおかげで、竹は植物界でもまれに見る成長速度を達成します。
- モウソウチクの最大成長記録: 1日に 約1メートル前後(戦後の植物学的観察に複数の報告例。実用書・教育書でしばしば「世界最速の植物」のひとつとして引かれる)
- 一般的な平均成長: 1日 30〜60 cm
- 親竹の高さ(最大15〜20m)に達するまで: わずか 30〜60 日
筍が地表を割るタイミングは、地温と土壌水分の二つで決まります。地下茎周辺の地温が15℃を超え、土壌水分が一定以上に達すると、筍の生長点が一気に動き出す。日本列島では、これがちょうど立夏の終わりから小満にかけての時期に重なります。
| 月 | モウソウチクの動き | 暦上の対応 |
|---|---|---|
| 4月上旬 | 地下で筍が肥大開始 | 清明〜穀雨 |
| 4月下旬〜5月上旬 | 地表に出る前段階 | 立夏初候・蛙始鳴 |
| 5月中旬〜下旬 | 地表を割って一斉に伸長 | 立夏末候・竹笋生 |
| 6月以降 | 親竹サイズに到達、皮が剥げる | 小満〜芒種 |
竹の生長は植物界の例外である。一年生草本のように一夏で発育を終えるが、本体は多年生の木質化した茎を残し、地下茎を介して長く生き続ける。
─ 竹研究の通史的記述より(京都大学農学部における竹生長観察の趣旨を要約)
筍が「地面を裂く」という日本語の表現は、植物学的にも事実です。地下茎の末端で形成された筍は、内部に蓄えた糖分とアミノ酸を急速に節間細胞へ送り込み、わずか数日で硬い土塊やときにアスファルトをも持ち上げる。竹笋生という三文字は、観察に基づく植物現象の暦的記述だったわけです。
中国版「王瓜生」と日本版「竹笋生」 ─ 暦の翻案史
もう一つ触れておきたいのが、この候の暦史上の特殊性です。
現在の日本の七十二候は、1874年(明治7年)に頒布された『略本暦』に掲載された七十二候を基にしています。それ以前、平安〜江戸時代まで使われてきた『宣明暦(せんみょうれき)』は、唐代の中国暦をそのまま輸入したもので、七十二候の名称も中国版が用いられていました。
しかし中国の七十二候には、日本の風土と合わない名前が多数含まれていました。立夏末候の中国版は「王瓜生(おうかしょうず)」── 王瓜とはカラスウリの一種で、中国華北の野山に自生する蔓性植物の若芽が伸び始める頃を指します。日本ではカラスウリは観察対象として一般的ではなく、立夏末候の主役にはなりにくい植物でした。
2026年の暦カレンダー

野分 蓮干支と暦の研究家
- 十干十二支
- 二十四節気
- 自然暦
十干十二支・二十四節気・自然と暦の関わりを、歴史と科学の両面から掘り下げる研究家肌の編集者。古文書の記述と現代の気象データを突き合わせるような、知的好奇心を刺激する考察記事を得意とする。
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