
江戸中期の俳人・山口素堂が詠んだ「目に青葉 山ほととぎす 初鰹」は、日本人の季節感を凝縮した名句です。青葉が萌え、ほととぎすが鳴き、初鰹が出回る──すべてが立夏(5月5日頃)から小満(5月21日頃)にかけての風景です。
カツオは黒潮に乗って太平洋を北上する回遊魚。春から初夏にかけて九州沖から房総沖へと上る「初鰹(上り鰹)」と、秋に南下する脂ののった「戻り鰹」の二つの旬を持ちます。江戸時代には「初鰹は女房を質に入れても食え」と言われたほど、その年最初の鰹は珍重されました。
| 旬の区分 | 時期 | 二十四節気 | 味わいの特徴 |
|---|---|---|---|
| 初鰹(上り鰹) | 4月〜6月 | 穀雨〜芒種 | 赤身がさっぱり、爽やかな旨味 |
| 戻り鰹 | 9月〜11月 | 白露〜立冬 | 脂がのり、とろけるような食感 |
暦の節気とカツオの回遊は見事に連動しており、旬の食材を味わうことは、自然のリズムに身体を合わせる知恵でもあります。
高知県はカツオの消費量日本一。なかでも「カツオのたたき」は土佐を代表する郷土料理です。
たたきの起源には諸説あります。最も知られるのは、土佐藩主・山内一豊が食中毒を恐れて庶民にカツオの生食を禁じたため、表面だけ焼いて「焼き魚」として食べたという説。また、漁師が浜辺で藁を燃やして獲れたての鰹をあぶったのが始まりという説もあります。
高知の本場のたたきは「藁焼き(わらやき)」で仕上げます。稲藁は一瞬で800度以上に達し、表面を香ばしく焼き上げながら中は生のまま。この強火で一気にあぶる技法が、独特の燻香と食感を生みます。にんにくスライス、みょうが、大葉、万能ねぎをたっぷりとのせ、柑橘を搾った「たれ」または天然塩でいただくのが土佐流です。
高知では「たたき」を「お客(おきゃく)」と呼ばれる宴席で振る舞う文化があります。「お客」とは高知独自の宴会文化で、大皿にたたきを盛り、大勢で取り分けていただきます。暦の祝い事や節句のたびに開かれるこの宴席は、土佐の人々の暮らしと暦を結ぶ大切な場です。
カツオは生食だけでなく、鰹節として日本の食文化の根幹を支えています。鰹節の製造には「煮る→燻す→カビ付け→天日干し」の工程があり、完成まで約半年を要します。
この製造サイクルもまた暦と結びついています。春に水揚げされた初鰹を加工し、処暑の頃にカビ付けを始め、秋の乾燥した空気のなかで天日に干します。気温と湿度の変化を見極める鰹節づくりは、暦を読む力そのものです。
鰹節は縁起物としても重宝されます。「勝男武士(かつおぶし)」の語呂合わせから、結婚式の引出物や七五三の祝い膳に欠かせません。大安や天赦日などの吉日に贈る鰹節には、勝負運や長寿への願いが込められています。
カツオの北上を知らせるのは、海の暦ともいえる黒潮です。黒潮は日本列島の南岸を流れる暖流で、その流路や水温の変化が漁期を左右します。
高知の漁師たちは、黒潮の蛇行パターンや海水温の変化を経験的に読み取り、漁に出る日を決めてきました。現代でも高知県内の漁港では、穀雨を過ぎると「初鰹シーズン」として活気づきます。中土佐町の久礼大正町市場や黒潮町では、この時期に鰹祭りが開催され、藁焼きたたきの実演や一本釣り体験が行われます。
海の暦を読み、最良の一匹を追い求める土佐の漁師文化は、自然と人の暮らしが暦を通じて結ばれている証です。
初鰹と暦を日々の暮らしに取り入れる、実践的な開運アクションをご紹介します。
立夏(5月5日頃)から小満にかけてが初鰹の最盛期。「鰹=勝つ魚」の縁起にあやかり、新しい挑戦や仕事始めのタイミングに初鰹をいただきましょう。たたきでも刺身でも、旬の力をいただくことで気力が高まります。
結婚祝い・出産祝い・引越し祝いなどのお祝い事に、一粒万倍日や大安を選んで鰹節を贈りましょう。「勝男武士」の縁起に加え、鰹節は「夫婦節(めおとぶし)」とも呼ばれ、雄節と雌節の対で良縁・円満を象徴します。
秋分を過ぎたら脂ののった戻り鰹の季節。秋は気温差が大きく体力を消耗しやすい時期です。良質なタンパク質とDHA・EPAを豊富に含む戻り鰹で、冬に向けた身体づくりを始めましょう。
カツオの旬は暦が教えてくれます。福カレンダーで二十四節気や吉日をチェックし、初鰹・戻り鰹の旬を逃さず味わいましょう。今日の暦を毎日確認する習慣が、旬の食材との出会いを運んでくれます。
本記事は一般的な暦の知識や伝統的な解釈に基づいています。 占いの結果を保証するものではありません。最終的な判断はご自身でお願いします。
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