七十二候 芹乃栄 2027 ─ 1月5日〜1月9日、小寒初候 寒の入りに芹が競り合って萌え立つ5日

この記事でわかること
小寒初候『芹乃栄(せりすなわちさかう)』は2027年1月5日〜1月9日。寒の入りとともに、水辺の芹が競り合うように群がり萌え立つ頃を読み解きます。『競り』が名の由来とされること、春の七草の筆頭・芹と1月7日の人日の節句の七草粥との縁、中国の宣明暦『雁北郷』を略本暦が水辺の芹へ書き換えた候の系譜、期間の半ばに迎える新月と寒の水の習わしにも触れます。
目次
雪のしたで麦がひそかに芽をのばした冬至のさいごの候(66候・雪下出麦)を承け、暦はいよいよ冬至を送り、寒さの本番を告げる節気――小寒(しょうかん)へと足を踏み入れます。**2027年1月5日(火)から1月9日(土)までの5日間が、七十二候の第六十七候「芹乃栄(せりすなわちさかう)」**です。「芹(せり)乃(すなわ)ち栄(さか)う」――凍てつく水辺に、芹が競り合うように群がって萌え立ち、盛んに茂りはじめる頃を指しています。
私(野分蓮)は福カレンダー編集部で二十四節気・七十二候を担当しています。芹乃栄は、小寒という節気の幕開けを告げる初候です。ここから暦は、一年でもっとも寒さのきわまる季節へと分け入ってゆきます。中国の宣明暦では、小寒の初候に「雁北郷(がんきたにむかう)」――雁が北へ帰る支度をはじめる候が据えられていました。渡り鳥の動きで季節の移ろいを言い表した、いかにも大陸の暦らしい候です。けれども日本の略本暦は、この候を「芹乃栄」へと書き換えています。空をわたる雁の影よりも、足もとの水辺にひそかに萌え立つ一束の若菜を、日本の暦は寒さのなかの季節のしるしに選び取りました。寒のきわみに、芽生えの便りを置く――この選びとりかたに、四季の移ろいを身近な草木でとらえてきた、この国の暦の感性がにじんでいます。
ひとつ、この候を味わううえで心にとめておきたいことがあります。芹は、春の七草の筆頭に数えられる若菜です。一年でもっとも寒いこの時季に、なぜ「栄う」――盛んに茂るのか。そこにこそ、芹という草の、そして芹乃栄という候の、静かな力強さが隠されています。
芹乃栄とは ─ 芹が競り合って萌え立つ、小寒の初候
芹乃栄は、太陽黄経が285度に達して小寒に入った、最初の候です。「小寒」とは、寒さがいよいよ厳しくなりはじめる節気のこと。初日にあたる節入りの日は「寒の入り(かんのいり)」と呼ばれ、この日から立春の前日――節分までの約30日間が、一年でもっとも寒さのきわまる「寒の内(かんのうち)」、すなわち「寒中(かんちゅう)」です。年が改まってまもなく、暦は寒さの正念場を迎えます。
その寒の入りに、冷えきった水辺で萌え立ちはじめるのが芹です。芹はセリ科の多年草で、田の畔(あぜ)や小川のほとり、湿地など、清らかな水のとどく場所に好んで生えます。多くの草が枯れ伏したこの時季に、芹は冷たい流れのなかから、こまやかに切れ込んだ若葉をのぞかせ、群がるように茂りはじめる――その一画だけが、凍てついた景色のなかでみずみずしい緑をたたえているのです。
候の名にこめられた「栄う」には、由来があるとされます。芹は一か所に競い合うように、たくさんの茎が密生して生える草で、その「競(せ)り合う」さまから「せり」という名がついたとも伝えられています。狭い水辺で、たがいに先を争うように背をのばし、群れて茂ってゆく――その勢いを、昔の人は「栄う」というめでたい言葉でとらえました。芹乃栄という三文字には、厳しい寒さに伏すのではなく、その寒ささえ糧として萌え立つ草の生命力が、たしかに写し取られているのです。
2027年の暦配置 ─ 寒の入りと、晦から朔へよみがえる月
2027年の芹乃栄(1月5日〜1月9日)は、初日が小寒の節入り――寒の入りにあたり、期間の終わりに新月(朔)を迎えて、月がふたたび細くよみがえってゆく5日間です。
| 日付 | 六曜 | 月相 | 暦注・行事 |
|---|---|---|---|
| 1月5日(火) | 友引 | 暁の月 | 小寒(寒の入り) |
| 1月6日(水) | 先負 | 晦に近い月 | ― |
| 1月7日(木) | 仏滅 | 晦(つごもり) | 人日の節句・七草粥 |
| 1月8日(金) | 赤口 | 新月(朔・旧暦十二月一日) | ― |
| 1月9日(土) | 先勝 | 二日月 | 一粒万倍日 |
初日1月5日(火)が小寒の節入り、すなわち寒の入りであり、この日から一年でもっとも寒い「寒の内」がはじまります。月は、夜明け前の東の空にうっすらと残る暁の月から、いよいよ細りきって、1月7日(木)の人日の節句の頃には、すっかり欠けた晦(つごもり)の月となります。そして1月8日(金)には新月――旧暦でいう朔(さく)を迎えます。朔とは、月が太陽と同じ方角に重なって、夜空からその姿を消す瞬間。この日が旧暦十二月一日、旧暦の師走の朔日にあたり、暦のうえで新しい月がはじまります。姿を消した月は、翌1月9日(土)からふたたび西の夕空に、糸のように細い二日月となって生まれかわってゆきます。寒さの底へと向かう数日間に、月もまた静かに生まれなおす――暦のめぐりが重なるこの5日間です。期間中には、ものごとを始めるのに縁起のよいとされる吉日も巡ってきますが、日ごとの六曜・吉日は、上の表をご覧ください。張りつめた冬の朝、水辺に萌える芹の緑と、細りゆきまた生まれる月のかたちを、一日ずつ目で追ってみてください。
春の七草の筆頭 ─ 芹と、人日の節句の七草粥
芹乃栄の候を語るうえで、欠かすことのできない縁があります。それは、この候の半ば――1月7日が「人日(じんじつ)の節句」にあたり、芹を筆頭とする春の七草を炊きこんだ「七草粥(ななくさがゆ)」をいただく日であることです。一年でもっとも寒いこの時季に芹が萌え立つこと、そしてその芹を粥にして無病息災を願うことが、暦の上でみごとに重なり合っているのです。
人日とは、文字どおり「人の日」という意味です。その由来は古代中国にさかのぼると伝えられます。年のはじめの数日に、それぞれの日を鶏・狗(いぬ)・羊・猪(いのしし)・牛・馬といった獣畜にあて、七日目を「人の日」として、それぞれの日に占いを立てて新年の吉凶をみたとされます。やがてこの人日に、七種の若菜を入れた羹(あつもの)――「七種菜羹(しちしゅさいのかん)」をいただいて、無病息災を願う習わしが生まれました。これが日本に伝わり、年のはじめに野山で若菜を摘む古来の「若菜摘み」のならわしと結びついて、やがて七草粥の行事へと育っていったと考えられています。
春の七草とは、芹(せり)・薺(なずな)・御形(ごぎょう)・繁縷(はこべら)・仏の座(ほとけのざ)・菘(すずな=蕪・かぶ)・蘿蔔(すずしろ=大根)の七種。その筆頭に置かれているのが、ほかならぬ芹です。寒の入りの水辺で競り合って萌え立つ芹は、まさにこの七草粥の主役にふさわしい若菜でした。正月のごちそうに疲れた胃をやさしくいたわり、青菜の乏しい冬に不足しがちな滋養をおぎなう――七草粥には、暮らしの知恵がそのまま生きています。芹乃栄の候が告げる芽生えと、人日の七草粥がねがう息災とが、ひとつの水辺の若菜のうえで結ばれている。この縁を知ると、1月7日の一椀の粥が、いっそう味わい深く思えてきます。
芹の香りと、寒の水
七草粥に芹を入れて、はじめてその真価に気づくのが、独特の清々しい香りです。すずやかで、わずかに苦味をふくんだその香りは、冷たい流れのなかで育った芹ならではのもの。湯気の立つ白い粥に刻んだ芹を散らすと、ひと匙ごとに早春のような香りがふわりと立ちのぼります。寒のきわみにあって、ひと足早く春の気配を運んでくる――芹は、そんな若菜なのです。
この時季の水のことを、昔の人は「寒の水(かんのみず)」と呼んで、特別なものとしてきました。寒中の水は冷たく澄んで、雑菌が少なく腐りにくいと考えられ、酒や味噌、寒天や凍み豆腐といった、仕込みに長い時を要するものをこしらえるのに、もっとも尊ばれたのです。冷たさのきわみだからこそ、清らかさもまたきわまる――その寒の水のなかでこそ、芹はあの澄んだ香りをたくわえます。次の候が「水泉動(しみずあたたかをふくむ)」であることを思えば、この芹乃栄は、寒さの底にありながら、水のなかにすでに春のきざしがひそんでいることを告げる候でもあるのです。
芹乃栄5日間の歩き方
- 1月5日(火)寒の入り:暦のうえで寒さの本番がはじまる、小寒の節入りの日。年が改まってまもないこの日、川辺や田の畔を歩いて、冷たい水のなかに萌え立つ芹の緑を探してみてください。
- 1月6日(水)晦に近い月:月がいよいよ細りきっていく頃。乏しい青菜の季節、寒の入りに芽吹く若菜のたくましさに、あらためて目をとめてみたい一日です。
- 1月7日(木)人日の節句・七草粥:芹を筆頭とする春の七草を炊きこんだ七草粥をいただく日。正月のごちそうに疲れた胃をやすめ、一年の無病息災を静かに願いましょう。一椀の粥に立ちのぼる芹の香りを、ゆっくりと味わってみてください。
- 1月8日(金)新月(朔):月が夜空から姿を消す朔の日。旧暦十二月一日、新しい月のはじまりです。月のない夜には、かえって冬の星々が、凍てついた空にくっきりと冴えわたります。
- 1月9日(土)二日月:西の夕空に、よみがえったばかりの細い二日月が。寒中の澄んだ宵の空に、糸のような月の光を見つけながら、深まりゆく寒さのなかの一日を味わって。
福カレンダー編集部の芹乃栄ノート ─ 三つのおすすめ
- 水辺の芹を訪ねる:芹乃栄は、芹が競り合って萌え立つ候。近くの小川や田の畔、湿った水辺をのぞいてみてください。こまやかに切れ込んだ若葉が、群がるように生えていたら、それが芹です。凍てつく水のなかに点る緑の生命力を、その目で確かめてみましょう。
- 七草粥で胃をいたわる:候の半ば、1月7日は人日の節句。芹を筆頭とする春の七草を炊きこんだ一椀の粥で、正月に疲れた体をやさしくいたわり、一年の無病息災を願ってみてください。芹の清々しい香りに、ひと足早い春を感じられます。
- 寒中見舞いを認める:寒の入りから立春の前日まで、約30日の「寒の内」は、相手の健やかさを気づかう寒中見舞いを出す時季。年賀状を出しそびれた方への返礼にも、この期間がふさわしいとされます。冷えきった季節だからこそ、便りに人のぬくもりを添えてみてはいかがでしょう。
芹が水辺に萌え立ち、月が晦から朔へとふたたび生まれかわる5日間。次の候は、小寒の次候「水泉動(しみずあたたかをふくむ)」。凍てついた地のしたで、泉の水がかすかにあたたかみをふくみ、ひそやかに動きはじめる頃へ――寒さはなおきわまりながらも、暦は水のなかに、確かな春のきざしを宿しはじめるのです。
参考
参考文献・出典
- 暦計算室— 国立天文台 暦計算室(参照: 2026-06-04)
- 七十二候 (Wikipedia 日本語版)— Wikipedia(参照: 2026-06-04)
- 日本の暦 -国立国会図書館-— 国立国会図書館(参照: 2026-06-04)
2026年の暦カレンダー
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野分 蓮干支と暦の研究家
- 十干十二支
- 二十四節気
- 自然暦
十干十二支・二十四節気・自然と暦の関わりを、歴史と科学の両面から掘り下げる研究家肌の編集者。古文書の記述と現代の気象データを突き合わせるような、知的好奇心を刺激する考察記事を得意とする。
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