愛宕神社(東京・港区)2026 ─ 出世の石段「馬」伝説と千日詣り、火の神様で読む午年の参拝ガイド

この記事でわかること
東京23区の自然山として最高峰、標高25.7メートルの愛宕山に鎮座する火の神様。1634年寛永十一年に丸亀藩士・曲垣平九郎が馬で駆け上がったという86段の出世の石段、6月23-24日の千日詣り、そして2026年は隔年偶数年で開催される9月22-24日の例大祭「出世の石段祭」。午年丙午の参拝ガイドを暦と一緒に旅する。
目次
東京メトロ日比谷線「神谷町」駅を出て、虎ノ門ヒルズと森ビルに挟まれた都会の谷間を5分ほど歩くと、突如としてその石段の前に立つ。
86段、傾斜40度。下から見上げると、石段は途中で空に消えているように見える。坂の上にあるはずの社殿は、石段に隠れて見えない。これが、東京23区の自然山としては最高峰、標高25.7メートルの愛宕山に鎮座する愛宕神社の正面参道、通称「出世の石段」だ。
ビル群の隙間に、ぽかりと残された江戸の聖域。ここを歩くたびに、土地の記憶が今も40度の角度を保って立っていることを思い知る。福カレンダーが2026年の午年丙午(ひのえうま)に訪ねたい東京のパワースポットとして、愛宕神社をどう読むか。旅と祈りの編集者・旅河楓が、暦とともに歩いた一日を綴る。
江戸の防火の聖地 ─ 1603年慶長八年、徳川家康の命で創建された火の神様
愛宕神社の創建は1603年(慶長八年)。江戸幕府を開いた徳川家康が、江戸の防火の守り神として桜田山(現在の愛宕山)に勧請したとされる。総本社は京都・嵯峨愛宕山の愛宕神社で、火伏せ・防火の神として全国に約900社の分社を持つ愛宕信仰の関東中核社にあたる。
主祭神は火産霊命(ほむすびのみこと)。日本神話で伊邪那美命(いざなみのみこと)が産み落とした火の神で、母神を焼き滅ぼしてしまったがゆえに、火そのものを司る存在となった。江戸の町は木造家屋が密集し、振袖火事(明暦の大火、1657年)をはじめ大火に何度も襲われた都市である。家康が「火の神様を江戸の中心に置く」という発想で愛宕を選んだのは、軍事都市から商都へと変わる江戸の都市計画の中で、火災こそが最大の経済的脅威だと見抜いていたからだろう。
配祀神は三柱。**罔象女命(みずはのめのみこと)**は水の神、**大山祇命(おおやまづみのみこと)**は山の神、**日本武尊(やまとたけるのみこと)**は武徳の神。火・水・山・武。土地の四つの相を一社に納めた構成で、防火祈願にとどまらず、勝運・商売繁盛・印刷出版業守護まで、現代の都心生活に必要な幅広い御神徳を持っている。
社殿の手前、丹塗りの門の左手には将軍梅が植えられている。これが次に語る出世の石段の伝説と、地続きでつながっている。
86段に「馬で」駆け上がった男 ─ 1634年寛永十一年、曲垣平九郎の出世石段伝説
時は1634年(寛永十一年)。三代将軍・徳川家光が、菩提寺の増上寺参拝の帰途に愛宕山の前を通りかかったとき、山上に紅白に咲き誇る梅を見つけた。家光は供の武士に向かって言った。「誰か、馬であの梅を取って参れ」。
86段、傾斜40度。下りるのも危うい急斜面である。供の者は誰一人として手を挙げられなかった。沈黙が続いた末、四国・讃岐丸亀藩の家臣**曲垣平九郎(まがき・へいくろう)**が一礼して馬を進めた。一気に石段を駆け上がり、山上の梅を一枝手折って、再び馬で駆け下りて家光に献上したという。
家光はこの離れ業に感嘆し、「日本一の馬術名人」と称した。以後、平九郎は丸亀藩内でも一目置かれる存在となり、四国の田舎武士にすぎなかった一人の侍が、将軍の目に留まって出世した──この一件から、愛宕山正面の石段は「出世の石段」と呼ばれるようになる。
平九郎が将軍に献上した梅の枝は、現在も社殿前の将軍梅として植え継がれている。境内に立つたびに、馬と梅と将軍の、たった一日の出来事が、390年後の東京の谷間で今も時間を縛っていることに気づく。
福カレンダー編集部の覚え書き:曲垣平九郎の伝説は、講談「寛永三馬術」の中核演目として江戸後期から大正期にかけて広く語られた。歴史上、この石段を実際に馬で上り下りした記録は他にも残っている。明治十五年(1882年)に石川清馬、大正十四年(1925年)に陸軍参謀本部の岩木利夫、昭和五十七年(1982年)にスタントマンの渡辺隆馬。3人とも「曲垣平九郎の偉業を再現した」と当時の新聞が報じた。伝説は史実と地続きに、今も挑まれ続けている。
午年丙午の2026年に愛宕神社を訪れる意味は、ここに集約される。馬と石段、そして「出世」という言葉。60年に一度の丙午は、本来は「強い火の年」とされ、女性の生まれ年として誤った迷信に縛られてきた歴史がある(参照:丙午(ひのえうま)の夏 2026|60年に一度の干支が教える開運の知恵)。だが、江戸の火の神様の社で、馬で駆け上がった侍を思い起こすとき、丙午の「火と馬」はむしろ突破力の象徴として読み直せる。福カレンダーの暦データと土地の記憶を重ねると、午年×火の神様×出世石段の三重文脈は、2026年の都心パワースポットとして突出している。
千日詣り 2026年6月23-24日 ─ ほおづき発祥の社、6月24日は一粒万倍日×己巳の日が重なる
愛宕神社の年間最大の参拝行事が、千日詣り(せんにちまいり)だ。毎年6月23日と24日の2日間、9:00から18:00にかけて開催される。この2日間に参拝すると、千日分の御利益があるとされる古来の信仰で、社殿前に設えられた茅の輪をくぐる。
そして愛宕神社が他の千日詣り神社と違うのは、ほおづき市発祥の地であることだ。江戸時代、近隣に住む女性が夢枕に「愛宕様」を見て、神社に自生していたほおづきを煎じて飲めば持病の癪(しゃく)や子どものかんの虫に効くと告げられた。試したところ症状が治まり、以来この社で「お祓い済みのほおづき」を授かる風習が始まったという。浅草寺のほおづき市(毎年7月9-10日)はあまりにも有名だが、その源流は港区愛宕の千日詣りにある。
2026年の暦を福カレンダーの暦データで開くと、千日詣りの2日間は次のような日並びになる。
| 日付 | 曜日 | 六曜 | 月相 | 吉日 | 日干支 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2026-06-23 | 火 | 先勝 | 上弦 | ─ | 戊辰 |
| 2026-06-24 | 水 | 友引 | 上弦 | 一粒万倍日・己巳の日 | 己巳 |
注目すべきは2日目、6月24日(水)だ。一粒万倍日と己巳の日が同日に重なる、2026年でも数えるほどしかない日である。一粒万倍日は「一粒の籾が万倍の稲穂になる」金運・事業運の吉日、己巳の日は60日に1度巡る弁財天の縁日で、特に金運・才能開花の最強日とされる(詳細は【2026年】己巳の日×弁財天の金運パワー|60日に1度巡る最上日を暦で読み解くを参照)。
つまり、6月24日に愛宕神社で千日詣りをすると、千日分の御利益+一粒万倍日+己巳の日の弁財天の力が一日に重なる構図になる。福カレンダー編集部としては、午年丙午の都心参拝で2026年に外せない一日として、この日を強く推したい。
参拝時間の目安として、6月23日(火曜・上弦)は午前中の参拝が縁起的に有利。6月24日(水曜・上弦)は朝夕を避け、昼前後(11時〜13時)が伝統的な吉刻とされる。
千日詣りの茅の輪は、左→右→左の順に8の字を描いてくぐる。これは伊弉諾尊の禊払の故事に由来する作法で、愛宕の境内では宮司の指示に従えば迷うことはない。お祓い済みのほおづきの初穂料は2,000円前後(年により改定あり)、雷除け・無病息災の御札として一年間家に祀る習わしだ。
例大祭「出世の石段祭」2026年9月22-24日 ─ 隔年偶数年に巡る輪島塗六角神輿
愛宕神社の例大祭は、別名出世の石段祭。毎年9月22日から24日にかけて開催されるが、神輿が出世の石段を上り下りする本祭は、西暦の偶数年のみ。つまり、2026年は本祭開催年にあたる。前回は2024年、次回は2028年。2027年は神輿渡御を伴わない通常祭になる。
2026年9月の暦を見ると、本祭の3日間は驚くほど整った日並びだ。
| 日付 | 曜日 | 六曜 | 祝日 | 吉日 | 月相 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2026-09-22 | 火 | 先勝 | 国民の休日 | ─ | 十三夜 |
| 2026-09-23 | 水 | 友引 | 秋分の日 | ─ | 十三夜 |
| 2026-09-24 | 木 | 先負 | ─ | ─ | 十三夜 |
目を引くのは祝日の並びだ。中日となる9月23日は秋分の日で、その前日の22日は国民の休日(祝日と祝日に挟まれた平日)として法的にも休日扱いとなる。21日の敬老の日から数えれば祝日が3日連なり、本祭の初日と中日がそのまま連休に乗る。祭礼の日程と祝日の並びがここまで噛み合う年は10年に1〜2度の希少年だ(祝日と本宮が重なる希少年という読み方は天神祭2026 ─ 7月24-25日、1075年目の本宮が祝日と週末に重なる希少年の暦解説と同じ枠組みで読める)。
神輿は石川県輪島で漆塗りされた六角形の神輿で、東京都内では珍しい形状。地元の篤志家が奉納したもので、傾斜40度の出世の石段を担ぎ上げ、山上の本殿で神事を執り行ったあと、再び石段を下る。担ぎ手は地元の氏子だけでなく、虎ノ門・新橋・愛宕の周辺事業者からも集まる。「出世の願いを神輿に乗せて石段を上る」という構図そのものが、江戸の火の神様と曲垣平九郎の馬術伝説を400年越しに引き継ぐ祭礼になっている。
福カレンダーの暦夢診断ではないけれど、もし2026年の本祭の前夜(9月21日・敬老の日)に「石段を上る馬の夢」や「燃える梅の夢」を見たなら、それは丙午×秋分×出世の石段祭の三重文脈と通底するシグナルとして読める。神輿の渡御は例年9月23日(秋分の日)の本宮祭と24日の還御祭が見どころで、出世の石段を六角神輿が上下する瞬間は、22日と24日の昼前後に集中する。
季節の表情 ─ 桜・将軍梅・新緑、火の神様の境内に重なる江戸の四季
愛宕神社は祭礼の社であると同時に、四季の表情が濃い。3月下旬から4月上旬の桜は山全体を覆い、「都心とは思えない」と評される。境内には東京タワーが石段の隙間越しに見える唯一のアングルもあり、桜・東京タワー・出世の石段の3点セットは、近年SNSで急速に拡散している構図だ。
将軍梅は前述のとおり、曲垣平九郎の伝説に由来する梅の系譜。例年2月下旬から3月上旬に開花し、丹塗り門の朱色に紅白の梅花が映える。
そして4月下旬から5月上旬。総本社である京都の愛宕神社ではツツジの名所として知られ、関東の港区愛宕でも同じ季節に新緑とツツジが境内を染める。福カレンダーの暦データでこの時期を見ると、立夏(5月5日)前後はちょうど「強い陽の気が満ちる」期間で、火の神様への参拝には季節の理にもかなっている。2026年5月4日はみどりの日×友引×天赦日×寅の日という四重吉日(参照:2026年5月4日は天赦日×寅の日×友引 ─ GW結婚式・両家顔合わせに最強の祝日)。GW中に都心で過ごす方は、出世の石段とこの日付の組み合わせを覚えておくと、1日で年間トップクラスの開運参拝を組める。
夏は緑陰、秋は紅葉、冬は雪化粧。愛宕山は標高25.7メートルの低山だが、坂の上に上がりきると不思議と都心の音が遠くなる。森ビルの群れが見えるのに、境内の蝉の声や落ち葉を踏む音が、耳の方を主張する。これが23区最高峰の自然山がいまも持っている感覚だ。
旅河楓が選ぶ午年丙午2026の出世参拝3コース
福カレンダー編集部の旅河楓が、2026年の暦データと愛宕神社の年中行事を突き合わせて選んだ参拝コースを3つ提案したい。福カレンダーの吉日カレンダーで日付を確定してから訪れるのがおすすめだ。
コース①:GW天赦日参拝(2026年5月4日・月曜・みどりの日) みどりの日×友引×天赦日×寅の日の四重吉日。出世の石段を上り、社殿で参拝後、将軍梅の前で「今年中に挑みたい一歩」を心の中で誓う。みどりの日のため境内の新緑が最も濃く、写真にも映える。所要時間は1時間。GWの混雑を避けたい方は朝7時の開門と同時に石段を上ると、都心の朝の静けさに包まれる。
コース②:千日詣り×己巳の日(2026年6月24日・水曜) 一粒万倍日×己巳の日×友引の三重吉日に、千日詣りの茅の輪をくぐる。御祓済みのほおづきを授かり、雷除け・無病息災・金運の三願を一日で重ねる。火の神様+弁財天の縁日という、本来は別系統の御神徳が一日に交わる希少日。所要時間は雨天時の混雑を含めて2時間程度。会社員の方は午後半休を取る価値が十分にある日付だ。
コース③:例大祭出世の石段祭(2026年9月22-24日) 中日の23日は秋分の日、22日は国民の休日で、敬老の日からの連休に本祭の前半がそのまま乗る。本祭は隔年偶数年のみで、神輿が出世の石段を実際に担ぎ上げ・降ろす瞬間に立ち会えるのは、人生で限られた回数しかない。22日(先勝・国民の休日)の昼前、または24日(先負)の昼前後に訪れると、神輿渡御のクライマックスに重なる確率が高い。2027年は神輿なし、2028年が次回である点も覚えておきたい。
参拝後は、虎ノ門ヒルズや愛宕グリーンヒルズのカフェで、自分が誓った「出世の一歩」を手帳に書き出すと記憶に定着しやすい。福カレンダーの暦カレンダーで、その日付の干支・六曜・月相を一緒にメモすると、後日振り返ったときに「あの誓いはあの日の暦の力に乗っていた」と腑に落ちる。
午年の参拝先として、京都の貴船神社(絵馬発祥の社)、下鴨神社(流鏑馬と糺の森)、三重の多度大社(白馬伝説)、岩手の駒形神社(東北の駒の聖地)を巡る方も多い。総覧は午年2026 馬ゆかりのパワースポット|明治神宮・貴船神社・多度大社ほかに整理しているが、東京で1社だけ選ぶなら愛宕神社──これが、2026年の本サイトの結論だ。86段の急こう配は今も誰かの「出世の一歩」を待っている。
福カレンダー編集部・旅河楓の取材メモ:愛宕神社へのアクセスは東京メトロ日比谷線「神谷町駅」3番出口から徒歩5分、または銀座線「虎ノ門駅」1番出口から徒歩8分。出世の石段(男坂)の右手には女坂と呼ばれる緩やかな迂回路があり、足腰に不安がある方や雨天時は女坂を使うと安全だ。神輿渡御や千日詣りの混雑を避けたい場合は、平日朝7時から9時の参拝が静かでおすすめ。御朱印は社務所で9:00〜16:00受付(大祭時は時間延長あり)。
参考文献・出典
- 文化財オンライン (文化庁)— 文化庁(参照: 2026-05-16)
- 神社本庁 公式サイト— 神社本庁(参照: 2026-05-16)
- 観光庁— 国土交通省 観光庁(参照: 2026-05-16)
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旅河 楓旅と祈りの編集者
- パワースポット
- 神社仏閣
- 地域の祭事
全国の神社仏閣・パワースポットを自分の足で歩き、土地の歴史と信仰を紐解く旅する編集者。地元の方への取材を大切にし、ガイドブックには載らない「祈りの風景」を伝える記事が読者に支持されている。
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本記事は一般的な暦の知識や伝統的な解釈に基づいています。 占いの結果を保証するものではありません。最終的な判断はご自身でお願いします。
免責事項を読む →福カレンダーでは、暦に関するコンテンツを正確かつ分かりやすくお届けするよう努めています。
編集方針について →参考情報:暦注・民俗資料、公的機関の暦情報を参考に編集部が整理しています。
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