入梅2026は6月11日(木・大安)─ 雑節「黄経80度」の正体と、日本気象協会の最新予想・梅仕事の暦

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入梅2026は6月11日(木・大安)─ 雑節「黄経80度」の正体と、梅仕事・田植えの暦
2026年の入梅は 6月11日(木・大安・大明日)。「梅雨入り」と似ているようで、実は天文計算で決まる暦の節目です。貞享暦の「壬(みずのえ)の日」から天保暦の「太陽黄経80度」へ ── 定義が書き換えられた背景には、農事と気象の難しい折り合いがありました。福カレンダー編集部で二十四節気・雑節を担当する野分 蓮が、入梅という言葉の深層を、歴史と現代の視点から丁寧に紐解きます。
2026年の入梅 ── 6月11日(木・大安)に何が起きるか
まず、暦のほうから。
2026年の入梅は 6月11日(木曜日)。この日の六曜は 大安、暦注下段では 大明日(万事に善しとされる吉日)が重なります。旧暦では四月二十六日にあたり、月齢は25.29、月相は下弦を過ぎた 晦(つごもり) の細い月。日干支は 丙辰(ひのえ・たつ)。
- 六曜: 大安
- 吉日: 大明日
- 月相: 晦(下弦から新月へ向かう細い月)
- 日干支: 丙辰
- 旧暦: 四月二十六日
入梅の2日後である6月13日(土曜日)には 一粒万倍日 が重なり、翌週の6月21日(日曜日)には 夏至 を迎えます。つまり2026年の6月は、芒種(6月6日) → 入梅(6月11日) → 一粒万倍日(6月12・13日) → 夏至(6月21日) と、暦の節目が立て続けにやってくる稠密な月となります。
ここで一つ立ち止まっておきたいのは、「入梅」という言葉の正体です。テレビの天気予報で耳にする「関東甲信地方が梅雨入りしました」というアナウンスと、暦の「入梅」は、似て非なるもの。前者は気象庁が発表する 気象の梅雨入り、後者は 暦の節目 です。日付もしばしば一致しません。
入梅は「雑節」── 二十四節気の外側にある日本独自の暦
入梅は、雑節(ざっせつ) と呼ばれる暦日のひとつです。二十四節気が古代中国から伝わった暦であるのに対し、雑節は 日本の気候風土と農事に合わせて日本で独自に定められた暦日 と考えられています。国立天文台暦計算室も「雑節は日本の風土にあわせて考えられた季節の目安」と説明しています。
雑節に含まれるのは、以下のような日付です。
入梅の由来 ── 貞享暦の「壬の日」から天保暦の「黄経80度」へ
入梅の来歴を追うと、日本の暦改訂の歴史に触れることになります。
暦日としての「入梅」が初めて暦に登場したのは、貞享二年(1685年)に渋川春海が編纂した貞享暦 から。貞享暦は、日本人の手で初めてつくられた独自の暦として知られています。当時の入梅の定義は、興味深いことに 「芒種のあとにやってくる最初の壬(みずのえ)の日」 でした。
ここで膝を打ちたいのは、「壬」という十干が選ばれた理由 です。十干十二支の「壬」は五行では 水の気 を司ります。つまり、「芒種を過ぎたあとの最初の"水の日"を梅雨入りの目安とする」── 陰陽五行の思想に基づいた、極めて理屈の通った選び方だったのです。
ところが、この定義は永く続きませんでした。「壬の日」で決めると、年によって入梅の日付が大きくブレることがあり、農事の目安としては使いづらかったのです。暦日は最大10日ほど動きうるため、田植えや梅仕事の段取りを組むには不安定でした。
そこで 天保十五年(1844年)に施行された天保暦 からは、定義が 「太陽黄経80度」 に変更されました。黄経80度は太陽の黄道上の位置を角度で示したもので、毎年ほぼ同じ日付(6月10日〜12日ごろ)に訪れます。
この改訂によって入梅は、
- 年ごとに日付が大きくブレない安定した暦日 になり、
- 芒種(黄経75度)と夏至(黄経90度)の中間という幾何学的な位置 に固定された
わけです。陰陽五行の思想から天文学の計算へ ── 入梅ひとつの中に、江戸時代の暦学が 経験則から精密科学へ 脱皮した足跡が刻まれているのです。
貞享暦(1685年)── 芒種後の最初の壬の日(陰陽五行由来) 天保暦(1844年)── 太陽黄経80度(天文計算由来) 現在 ── 天保暦の定義をそのまま継承
気象庁の「梅雨入り」と暦の「入梅」は、なぜずれるのか
ここからが、現代の私たちに一番関わる話です。
気象庁が発表する 「梅雨入りしたとみられる」 という情報と、暦の 「入梅」 は、同じ意味ではありません。両者の違いを整理すると以下のようになります。
| 項目 | 気象の梅雨入り | 暦の入梅 |
|---|---|---|
| 決め方 | 気象庁が日々の気象データを解析して発表 | 太陽黄経が80度に達した日 |
| 日付の確定 | その年の天候次第(速報→確定) | 毎年ほぼ同じ日(6月10〜12日ごろ) |
| 地域差 | あり(沖縄〜東北でそれぞれ発表) | なし(全国共通) |
| 目的 | 現実の天候の記録と予報 | 農事・暮らしの予定を立てる目安 |
たとえば2026年の気象庁の梅雨入り平年値は、関東甲信で6月7日ごろ、北陸・東北南部では6月12日ごろ。暦の入梅である6月11日は、ちょうどその間に収まる日付です。つまり 入梅は、日本列島を北上する梅雨前線の「おおよその中心位置」 を、天文計算であらかじめ示してくれている日だと捉えることができます。
「毎年同じ日付で、地域差もない」という暦の入梅の性質は、一見すると実用性が薄いように見えます。しかし農事暦の視点では、この でした。梅雨がいつ来るか正確にはわからなくても、 があれば、田植え・梅仕事・衣替え・家屋の補修といった段取りを前もって組めるのです。
2026年の暦カレンダー

野分 蓮干支と暦の研究家
十干十二支・二十四節気・自然と暦の関わりを、歴史と科学の両面から掘り下げる研究家肌の編集者。古文書の記述と現代の気象データを突き合わせるような、知的好奇心を刺激する考察記事を得意とする。
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本記事は一般的な暦の知識や伝統的な解釈に基づいています。 占いの結果を保証するものではありません。最終的な判断はご自身でお願いします。
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