入梅 2026 ─ 暦が告げる梅雨入りの日と季節の養生
目次
2026年の入梅は6月11日(木曜・大安・大明日)。太陽黄経が80°に達する日が、暦の上の「梅雨入り」です。江戸の農民が田植えの刻限を計るために生まれたこの雑節は、気象庁が発表する実際の「梅雨入り」とは別の存在。なぜ二つの梅雨入りが併存するのか、その答えは貞享暦から天保暦へと進化した日本の暦法史の中にあります。
入梅とは ─ 江戸の田植え暦から生まれた雑節
入梅(にゅうばい)は、二十四節気でも五節句でもない「雑節」の一つです。雑節とは、二十四節気が中国から伝わった枠組みであるのに対し、日本の風土と農事に根ざして独自に編み出された季節の目安のこと。節分・八十八夜・土用・半夏生などと並び、入梅もまた日本人の暮らしの中から生まれました。
太陽黄経80°という天文定義
現在の入梅は、太陽が黄道上で80°に達した日と定義されています。春分点を0°として計算する黄経の数値は、二十四節気の芒種(黄経75°、2026年は6月6日)の直後にあたります。黄経差は5°、日数にしておよそ5日。つまり入梅は芒種から5日ほど後に巡ってくる暦日、ということになります。
2026年の入梅は6月11日(木)。この日の暦を福カレンダーのマスターデータで確認すると、六曜は「大安」、暦注下段には「大明日」、月相は月齢25.29の「晦(つごもり)」、日干支は「丙辰」となっています。大安と大明日が重なる好日に入梅が到来するのは、例年の中でも縁起の良い配置と言えるでしょう。
貞享暦から天保暦へ──定義の歴史的変遷
興味深いのは、入梅の定義が歴史の中で一度書き換えられていることです。
- 貞享暦(1685年施行) … 入梅は「芒種のあとに来る最初の壬(みずのえ)の日」と定められた
- 天保暦(1844年施行) … 太陽黄経80°と、天文学的な定義に改められた
貞享暦は、渋川春海が日本で初めて編纂した独自暦。それまで800年以上使われていた宣明暦の誤差が蓄積し、夏至と冬至が実際の天象とずれてしまっていた状況を、観測に基づいて補正したものでした。そして天保暦は、太陰太陽暦としては最後の暦で、現在の二十四節気の計算方法の基礎ともなっています。
なぜ定義が変わったのか。壬(みずのえ)は十干の第九で、水の陽を意味します。「水気の壬の日に梅雨に入る」という漢字占い的な発想は風流ですが、年によっては芒種から13日以上離れる場合もあり、農事の目安としては振れ幅が大きすぎたのです。天文計算に切り替えたことで、入梅は毎年ほぼ同じ日付(6月10〜12日)に固定され、実用的な農事暦として機能するようになりました。
田植えの合図としての入梅
では、なぜ江戸の人々はわざわざ「梅雨に入る日」を暦に書き込んだのでしょうか。
答えは、田植えの時期を逃さないためです。稲作において、田植えは梅雨の雨量を味方につけてこそ成功します。早すぎれば霜害、遅すぎれば穂が出揃う前に秋が来る。気象観測も天気予報もなかった時代、農民は「暦の上での梅雨入り」という目印を頼りに作業の段取りを組みました。
2026年6月の暦 ─ 入梅を挟む節目の布陣
2026年の6月は、暦の節目が多く配置された月です。入梅を中心に前後の動きを追ってみましょう。
6月の二十四節気と雑節
| 日付 | 節目 | 分類 | 意味 |
|---|---|---|---|
| 6月6日(土) | 芒種 | 二十四節気 | 稲の種をまく頃。梅雨入り前の準備期 |
| 6月11日(木) | 入梅 | 雑節 | 暦の上の梅雨入り。田植えの本格化 |
| 6月21日(日) | 夏至 | 二十四節気 | 昼が最も長い日。太陽の極み |
| 6月30日(火) | 夏越の大祓 | 神事 | 上半期の穢れを祓う神社行事 |
| 7月2日頃 | 半夏生 | 雑節 | 田植えを終える目安 |
入梅(6月11日)から半夏生(7月2日頃)までの約3週間が、暦の上での梅雨本番です。この期間は田植えを終えるべき期限として農家に認識されてきました。「半夏生までに田植えを終えねば、秋の実りが半分になる」という言い伝えが、東北から九州まで広く残っています。
6月の吉日配置(福カレンダー・暦マスター調べ)
入梅を含む6月の吉日を、福カレンダーの暦マスターデータから拾うと次の通りです。
2026年の暦カレンダー

野分 蓮干支と暦の研究家
十干十二支・二十四節気・自然と暦の関わりを、歴史と科学の両面から掘り下げる研究家肌の編集者。古文書の記述と現代の気象データを突き合わせるような、知的好奇心を刺激する考察記事を得意とする。
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